2020年春、コロナ禍の初期に店頭からトイレットペーパーが消えたのは、SNS上のデマが原因というより、デマを知り注意を呼び掛ける投稿が主な原因になったとする研究結果を東京大学大学院の鳥海不二夫教授(システム創成学)らの研究チームが発表した。450万件のTwitter投稿を分析した。
2020年の2月にネット上で「トイレットペーパーが品切れする」という 誤った情報 が流れ、3月にかけて全国各地でトイレットペーパーが品薄になった。研究チームは同年2月から3月にかけてTwitterに投稿された「トイレットペーパー」を含むツイートやリツイートを分析。誤った情報を含むデマのツイート、それを訂正しようとするツイート、実際に店頭で売り切れていたと報告するツイートなど5つに分類した。
するとデマのツイート数が582回だったのに対し、注意を呼び掛けるツイートは35万6944回と桁違いの数で、リツイートなど他人へ与えた影響も大きかった。
研究チームは「自分は信じないが、他の人はデマを信じるかもしれない」と危惧した人々が買いだめに走り品薄になったと指摘。社会心理学でいう「多元的無知」(pluralistic ignorance)の状況が生じていたと見ている。
「日本のメディアではデマがトイレットペーパーの買い占めにつながったとする報道が多かったが、原因は本来のデマではなく、その後の訂正情報であることが明らかになった」(論文より)
総務省の「新型コロナウイルス感染症に関する情報流通調査 報告書」(20年6月公開)によると、当時のアンケート調査でトイレットペーパーが不足するというデマを「信じた」人は6.2%に過ぎなかった。しかし15%の人はトイレットペーパーなどの買いだめを「した」と回答していた。
研究論文はPublic Library of Science社の科学雑誌「PLOS ONE」に4月4日付で掲載された。
【追記:2022年5月18日12時00分更新 ※出典に関する情報を追記しました】
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