「今後のためにも、東京電力福島第一原発から放出が予定される『ALPS処理水（以後『処理水』と略）には、…」PAGANINI_Nicoloのスレッド
今後のためにも、東京電力福島第一原発から放出が予定される『ALPS処理水（以後『処理水』と略）には、譲った表現で環境や健康への影響を与えるとは考えられないとする理由をここで一旦まとめておこうと思います。その狙いと目的については恐らく最後に書き記す事になるでしょう。
放出が予定される処理水には『告示濃度限度』という基準が設定されています。放射性物質は放射性物質そのものと言うよりは、不安定なそれ（放射性物質）が壊れ安定した別の物質に変わる時に放つ放射線が問題となります。
なので影響は最終的には放射線の強さで見ますが、その放射線の強さを調べるために処理水に含まれる放射性物質の量を見る事になります。
正確には処理水1L（リットル）に含まれる放射性物質の量（単位：Bq。Bq→ベクレル。1秒間に壊れる原子核の数であり、放射線の強さを表す。）、つまりは濃度（Bq/L）であり、環境や健康に影響を与えないとする濃度の上限、これが『告示濃度限度』です。
ではこの告示濃度限度は何を根拠として決められているかですが、これは日本が独自の根拠に基づき言ってみれば『勝手に』決めているといった感じで、恐らく結構誤解されているところなのだろうと思います。
そうではないんですね。ICRP（国際放射線防護委員会）という国際機関の勧告を元にして決められています。
まあ日本はそのICRPの勧告を根拠に、更に「いやそんな状況は普通考えられないし、条件の設定が厳し過ぎて逆に有り得ないでしょそれって。」と言う程、安全側に寄せた厳しい状況を想定して基準を決めているのでそういう意味では独自と言えば独自なんですが、それはまた別の話なので話を戻します。
ICRPは、ではどの様な勧告をしているかなのですが、それはこの様なものです。 「1年間当たりの追加被曝が1mSv（ミリシーベルト。後述）未満となる様に。」 （単位：Sv。Sv→シーベルト。人が受ける被曝線量、正確にはそれによる影響の度合いを表す。1000mSv=1Sv）
人間は自然からも常に放射線を浴びている、被曝しているので、この分を除いて考えた時に被曝する線量の合計が1年間で1mSvを下回る様にして下さいねとICRPは勧告している、くらいの理解で十分です。
ではそのICRPの勧告を踏まえた上で、それに加えて日本はどの様な状況を想定して告示濃度限度を定めているかです。処理水は海に放出されるので放出された瞬間から海水と混じり希釈されて行くのですが、その海に放出され希釈される前で考えています。
「希釈される前の処理水を1日当たり2L、生まれてから70歳になるまで毎日飲み続けた場合。」 です。一体どんな状況だ！気が遠くなる程厳しい条件を設定して基準を設けているかがもうこれだけで窺い知れてしまう程、厳し過ぎる条件です。
ここまでで参照したウェブサイトのリンクは下です。 https://t.co/uvpfvf0rx9 https://t.co/aS8AXu5nIX https://t.co/EzHAKmn3Rz
そして放射性物質は除去する事が難しいトリチウム（三重水素と呼ばれる、一種の水素。あるいはこの三重水素を含む『水』でこの水は『トリチウム水』とも呼ばれる。）を除くと63種類の放射性物質、核種が考えられており、
この63種全ての核種による合計での被曝線量が1mSv/年とならない様に、63種の核種それぞれについて告示濃度限度が定められています。
もっと細かく申すとこれも少し違っており、正確には63種の核種それぞれについての告示濃度限度は「もし処理水に含まれる核種がその一つだけだったら。」という想定で計算され決められたものであり、
それに加えていざ放出するという段階では上に書いた状況（「1日当たり2L、生まれてから70歳になるまで毎日飲み続けた場合。」）で考えなければならないので、その場合でも被曝線量が1mSv/年以上とならない様にしなければならない、と決められています。
1つの核種だけではなく63種全ての核種を考えた時でも被曝線量が1mSv/年以上とならない様にしなければならないと決められている、と言い換えると理解し易いでしょうか。
このトリチウムを除く63種の核種の除去は、多核種除去設備（通称『ALPS』。以後『ALPS』と略）と呼ばれる設備により行われます。
問題となるのは海に放出される前、海水で希釈される直前での濃度（『出口濃度』と呼ばれる。）であり、この時に上に書いた状況（1日当たり2L、生まれてから70歳になるまで毎日飲み続けた場合。）を考えても問題とならない（追加被曝が1mSv/年以上とならない。）様になっていなくてはなりません。
そしてこれが達成出来ているかは既に検証が行われています。結論を先に書くと、63種の核種それぞれについて見た時に告示濃度限度を下回っているのは当然の事として、 「希釈される前の処理水を1日当たり2L、生まれてから70歳になるまで毎日飲み続けた場合。」 でも
「1年間当たりの追加被曝が1mSv未満となる様に。」 というICRPの勧告を満たす程、十分にトリチウム以外の核種を除去出来る程の性能をALPSは有している事が既に確かめられています。
（しばしば「告示濃度比総和1未満である/を達成している。」という言い方をされる。詳細はリンク先のサイト<https://t.co/MeYTidCZ5t>を参照されたい。）
このデータは東京電力が『処理水ポータルサイト』と名付けたウェブサイトにおいて公開しています。また、このALPSにより処理された処理水のサンプルは第三者機関もチェックしており「東京電力が公開したデータとほぼ一致する。」という結論が得られています。
ここまでで参照したウェブサイトのリンクは下です。 https://t.co/SIJSS4snLv https://t.co/1G5B57iGGj https://t.co/WuUwk4BEDh
更にトリチウムについて述べると、トリチウムは紙一枚で遮る事が出来てしまうという程の極めて弱い放射線（β線です。）しか放つ事は出来ません。
また仮に水の形で体内に取り込んだとしても人間の体内の水は常に代謝で入れ替わっており、最も長くても半分に減るまでには約1年間程度の時間が掛かるのに対し、トリチウムが壊れて放射線を放ち半分に減るまでには約12.3年間程の時間を必要とします。
つまり同じ半分に減るまでの時間で比べると、体内に取り込んでから放射線を放つまでの時間より、体内に取り込んでからトリチウムのまま体外に出るまでの時間の方が圧倒的に短い、体内に取り込んだトリチウムは殆どが放射線を放つ前にトリチウムのまま体外に出るという事です。
これに加え、トリチウムについてもトリチウムだけで告示濃度限度が設定されておりこれは具体的には60,000Bq/L未満なのですが、放出する段階で更にその1/40となるまで希釈してから放出すると決められています。つまりトリチウムの濃度は1,500Bq/L未満で放出されるという事です。
また地球上にトリチウムは総量で約100～130京Bqあり、宇宙線の影響により1年間当たりで約7京Bqのトリチウムが新たに発生していますが、これに対して放出される処理水に含まれるトリチウムは1年間当たりで22兆Bqまでとすると上限が定められています。
トリチウムについて述べた事を総合するとつまり、処理水の放出による環境や健康への影響は極めて軽微であり無視出来る程に小さいという事です。
これはここまで書いた事を全て踏まえた上で、実際に放出が行われた際にどの様な影響が現れるかを検証するために行われてた試算と、その試算の結果に基づき行われた評価が示しています。
ここまでで参照したウェブサイトのリンクは下です。 https://t.co/Gdrd0rL4Lq https://t.co/33S4EKpz32 https://t.co/tXgKIYgxqS https://t.co/Lu44JCaWuo https://t.co/XDgHwZF1Mv
以上からの結論として、東京電力福島第一原発から放出が予定される処理水の放出による環境や健康への影響は考えられません。
ちなみに「1年間当たりの追加被曝が1mSv未満となる様に。」というICRPの勧告は「生涯における追加被曝の合計が100mSvとなる様に。」という考え方を元にしている事を追記します。
これは追加被曝の合計が100mSvであればその影響は他の影響に埋もれてしまう程に小さく、調べたり確かめたりする事が難しいという考え方に立っているという事を申し添え、処理水の放出における安全性についてはこれにて終わりと致します。
終わりに。 以上に書いた事は何を狙い、目的としたかです。結論を先に書くと、処理水やその放出に関してまだ十分に情報をお持ちでなくご存知でない、従って処理水の放出に対して賛成とも反対とも態度を決めかねていらっしゃる方へ向け、どうか処理水の放出や処理水そのものについて理解して頂きたい、
願わくば賛成して頂きたいという狙い、目的を持って書きまとめました。 東京電力福島第一原発の事故が起きその概ね四年程経った頃から私は事故やそれに関連する事柄について積極的に色々と調べ考えるという事を始めています。
ですから概ね七年間程は調べ、色々な情報を収集し、考えるという事を続けているという事になるのでしょうか。その過程で特にここ最近の三年間程は処理水の放出に反対なさる方と議論を戦わせた事もあります。
そこで分かったのは、処理水の放出に反対していらっしゃる方は残念ながら「処理水放出には反対。」という結論ありきであり、データを含む諸々の科学的根拠を提示しても翻意なさらない、という事でした。
表現を変えれば、処理水放出反対から賛成へと翻意して頂こうと説得しても時間と労力の無駄だと気付いた、とも申せるでしょう。
そうであるにも拘らず私は特に処理水の放出に関して「科学的見地に立った時、処理水の放出による環境や健康への影響は考えられない。」という発信と主張を重ねて来たのですが、それは何故か。
ごく大まかにまとめて述べると「これ以上の風評を防ぎ、払拭するため。」です。東京電力福島第一原発のある福島県では今なお残る、放射性物質や放射線に対する誤解から生まれる風評に苦しんでいらっしゃる方がいらっしゃいます。それが事実であり現実です。
（参考文献 ①『東電福島原発事故 自己調査報告』：細野豪志・著；開沼博・編：徳間書店 東電福島原発事故 自己調査報告 - 徳間書店 https://t.co/TWXr1tDpiE ②『「正しさ」の商人』：林智裕・著：徳間書店 「正しさ」の商人 - 徳間書店 https://t.co/GJoKdX2X0v）
風評は誤解から生まれます。一人でも多くの方からその誤解を取り去る事が出来れば、僅かかも知れませんが新たに生まれる風評を防ぎ、既にある風評も払拭出来ます。そのためにはデータと科学に基づき発信し主張するに勝る手段はありません。
仮に、万が一私が提示したデータを初めとする科学的な根拠の理解が難しかったとしても、根拠を提示出来るし実際にしているという事実やその姿勢を示す事そのものが生み出す説得力もあるでしょう。
その見据える先には処理水を保管するタンクが並ぶ、大熊町、双葉町やそこにお住まいの方々が抱えていらっしゃる負担の軽減があります。 （了）
自覚症状のあるやや重度の厨二病患者です。
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