「今、何をしたい?」との質問に対し……
19年4月にはジュニア時代のコーチから「今、何をしたい?」と尋ねられ、「体操をやめることです」と口走ったこともあるというが、頂点を知る選手だからこそ、人には言えない苦悩があったのだろう。
早熟の天才だったが驕ることは一切なかった。日本代表に入った当初からハキハキした挨拶が評判。多くの体操関係者が「金メダリストのあの子が一番挨拶をする」と目を細めていた。物おじしない性格で、代表合宿時には集中モードに入っている“キング”こと内村航平に「航平さん!」と無邪気に話しかけ、技談義を始めて周りをひやひやさせることも。「トランポリンで何回ひねれるか勝負をしましょう」と挑戦状を突き付けるなど、天真爛漫さが際立っていた。内村はそんな白井に一目置き、いつもにこやかに応じていた。
自他ともに認める頑固者で、嫌いなことには目を向けない性格だった。本人が「小中学生の頃は練習嫌いだった」と認めているように、周りも「苦手な種目の練習をしない子だな」と見ていた。スペシャリストとして生きる道も選べたが、オールラウンダーとして勝負する覚悟を決め、最後まで貫いた。それは内村の薫陶を受けてのことだった。
引退会見では終始笑顔。「恵まれた体操人生だった」と清々しかった。