衝撃の「ロシア敗北論」全文和訳…元駐ウクライナ中国大使は何を語ったのか

ロシアの最終的な敗北は時間の問題
近藤 大介 プロフィール

4.ロシア・ウクライナ戦争後の国際秩序の変化として起こりうるいくつかの要点

1)ロシアは政治・経済・外交などの面で、目に見えて弱体化と孤立、懲罰を余儀なくされる。ロシアの国力はさらに衰退していくだろう。おそらく一部の重要な国際組織から放逐され、国際的な地位は明確に低下するに違いない。

2)ウクライナは、ロシアの軌道と勢力範囲(ロシアにもしも勢力範囲というものがあればの話だが)から離脱し、ヨーロッパの大家族のメンバーとなる。すなわち西側諸国の一員となるだろう。

3)その他の旧ソ連圏の国々は、おそらく程度の違いこそあれ、ロシアから遠ざかっていく。そのような新たな趨勢が出現するだろう。一部の国は、より積極的に西側諸国に寄りかかろうとするに違いない。

4)日本とドイツは、完全に第二次世界大戦の敗戦国としての約束に別れを告げる。軍備拡張を加速化させ、より積極的に政治大国としての地位を掴もうとする。ただし、(日独が)西側陣営から離脱することはない。また、完全に平和的発展の方針に背くわけでもない。

5)アメリカとその他の西側諸国は、国連とその他の重要な国際組織の実質的な改革を、本気になって進めるだろう。たとえ改革が暗礁に乗り上げようとも、別な手段を模索していく。アメリカと西側諸国は、いわゆる自由民主のイデオロギーで線引きをし、ロシアなど一部の国を排斥するだろう 〉

ウクライナ戦争がもたらす「地殻変動」

以上である。高玉生元駐ウクライナ大使は、極めてまっとうな発言をしていることが、お分かりいただけただろう。外交官として長年、旧ソ連及びロシアと対峙してきた経験に基づいているわけで、もしかしたら中国外交部の現役外交官たちのホンネを代弁しているのかもしれない。

だが、重ねて言うが、「プーチン政権ベッタリ」で、この9年余り押し通してきた習近平政権としては、看過できない発言だったのだろう。今年後半には、習近平総書記の3選を賭けた第20回中国共産党大会を控えており、どんな「不穏の芽」も摘み取っておきたいだろうからだ。

 

特に、「ゼロコロナ政策批判」と「プーチン政権批判」は現在、それぞれ内政と外交のタブーとなっている。毎日当局が、「不穏な発言」に目を光らせているのだ。

その点、高玉生元駐ウクライナ大使は、「ロシアのことはいくらでも話すが、中国の対ロシア外交については言及しない」という態度を貫いている。そのため、発言の最後で、「アメリカと西側諸国は、いわゆる自由民主のイデオロギーで線引きをし、ロシアなど一部の国を排斥するだろう」と述べているが、「一部の国」の国名は挙げていない。

中国が含まれることは一目瞭然なのだが、そこは「寸止め」したのだろう。だが、「プーチン政権批判」も御法度なので、結局、発言は消されてしまった。

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