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「アマチュア無線を業務使用している」 ずさんな安全管理 安価なアマチュア無線を通信手段に?
2022年05月17日(火) 21時16分 更新
「アマチュア無線」から事故の背景が見えてきます。
本間 吏成アナウンサー(5月2日)
「海上保安庁の職員3名が知床遊覧船の事務所へ段ボールを抱えて入っていきます」
観光船の運航会社に捜査のメスが入って2週間。国の関係機関が次々と調査に入りずさんな安全管理の実態が明らかになっています。
特に問題視されているのが…
北海道総合通信局 山田誠哉 無線通信部長(5月12日)
「電波法違反という部分で言うとアマチュア無線を業務用として使っていたという話は確認できた。滝を通過しとか報告のポイント(定点連絡)があるそうなので」
運航会社 知床遊覧船は会社のルール「安全管理規程」で船の通信手段として「衛星電話」「携帯電話」「業務用無線」と定めていたものの、実際には業務での使用が禁止されている「アマチュア無線」をメインに使っていた疑いがもたれています。
事故をめぐって急浮上したワード「アマチュア無線」とはそもそも何なのか。見えてくる事故の背景をもうひとホリします。
ハムセンター札幌 佐藤 順之店長
「これはアマチュア無線機になりまして、北海道と沖縄で話をしたり周波数にもよりますけれども海外と通信できたりします」
札幌にあるアマチュア無線機の専門店です。アマチュア無線は専用の無線機を使って、国内外の人との交信を楽しむ「趣味」の技術です。趣味とはいえ、公共の電波を使うため、国家資格の免許が必要で、国がアマチュア無線専用に割り当てた周波数以外は使えないなど厳密なルールがあります。
ハムセンター札幌(札幌市北区)佐藤 順之店長
「このタイプだと3万円くらいで買えるので、こちらでしたら(札幌市内から)札幌圏、石狩空知がちょっといけるかなって感じ。誰しもが買いやすいような価格帯でやっているものがアマチュア無線は多いです」
値段が手ごろでも、許可されたパワーの範囲内であれば50キロ以上も遠く離れた相手とも交信することができます。携帯電話のような通話料はかかりません。一方で、公共交通機関や工事車両などが営業用に無線を使う場合は「業務用無線」を使わなくてはなりません。
「業務用無線」は、国が会社に対して周波数を与えます。プロ用の無線なので混信がなく安定した交信ができますが…
ハムセンター札幌 佐藤 順之店長
「こういうハンディ機ですと(アマチュア無線なら)ひと桁万円の前半で済むもののが、業務系になると2桁(10万円以上)になってくる」
海の上は「携帯電話」の通話エリア外が多く 不安定なため観光船や漁船には「船舶無線」や「衛星電話」が使われます。しかし…
知床遊覧船 桂田 精一社長の記者会見(4月27日)
「私は(衛星電話を)積んでいたと認識していたが、実際には修理に出して故障中だったと言うことです」
知床遊覧船は事故の3日前、国の船舶検査に対し「衛星電話」は修理中として「携帯電話」への変更を申請していました。
しかし、事故が起きた先月23日「KAZUⅠ(カズワン)」の 豊田徳幸船長が持っていた携帯電話では運航コースのほとんどが通話エリア外となっていて、午後1時すぎ、最初に救助を求める声は「アマチュア無線」からの発信だったことが分かっています。
北海道総合通信局 山田誠哉 無線通信部長(5月12日)
「アマチュア無線機と思われる無線機器が2台ありました」
電波法違反を取り締まる北海道総合通信局が事故後に行った調査では、もう1隻の観光船「KAZUⅢ(カズスリー)」にもアマチュア無線機が積まれていましたが、事務所や船内で「衛星電話」はこれまでに確認できていません。
複数の関係者はHBCの取材に対し「知床遊覧船は日常の交信にアマチュア無線を使っていた」と証言していて、会社は通信料や維持費が高い「衛星電話」を使わず費用がかからない「アマチュア無線」を選んでいた可能性が推測されます。
業務に使うことが禁止されている「アマチュア無線」には「趣味」として楽しむ以外に大切な役割があります。
札幌市無線赤十字奉仕団 吉岡 裕之さん
「災害の(中継)ポイントに行って救護の手配をする。電話とか他の通信手段がないときにアマチュア無線は非常通信に使えますので」
日本赤十字社には「アマチュア無線」を利用して、救助の要請や現場の状況を自治体や地元の日赤に中継するボランティア団体があります。北海道南西沖地震や東日本大震災では停電で被災地との通信が途絶えたときに「アマチュア無線」が活躍しました。本来は人の命を救う手助けをする「アマチュア無線」が知床の事故以来、イメージが悪くなっていることに憤っています。
札幌市無線赤十字奉仕団 吉岡 裕之さん
「腹立たしいのひと言ですね。遭難したとき、必要なときに交信する分には「非常通信」ですから良いんですけど、普段からやっていることは
普通のアマチュア無線を邪魔しているわけですから、それは良くないと思います」
釧路に住む 鈴木 一樹さんはアマチュア無線家で作る団体に所属し、趣味として楽しむ傍ら、知床を含む道東でルール違反が疑われる交信を監視・指導しています。これまでに何度も監督官庁に通報してきましたが…
日本アマチュア無線連盟 釧路根室支部 監査指導委員長 鈴木 一樹さん
「総合通信局の方は動いてくれなかったという事実を無視できないのかなと思います。おそらく甘いというよりも(アマチュア無線を)『遊びの無線』だからという感じだったのかな(行政の姿勢も)変わってほしいなというところはあります」
5月17日(火)「今日ドキッ!」午後6時台
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