【ANN55周年連載Vol.1】Creepy Nuts&金子D鼎談(前編) 「数え切れないほどの絆を与えてくれた」ラジオがブレイクの原動力に

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 1967年10月2日の深夜1時。「君が踊り僕が歌うとき、新しい時代の夜が生まれる。太陽のかわりに音楽を、青空のかわりに夢を。フレッシュな夜をリードするオールナイトニッポン!」という糸居五郎の第一声で、ニッポン放送“深夜ラジオの代名詞”『オールナイトニッポン(ANN)』が幕開けした。現在にいたるまで、才能豊かな数々のパーソナリティーを見出し、リスナーに寄り添い、常に時代の最先端を見つめ、話題や文化を発信してきた『ANN』が、この4月から55周年YEARを迎えた。

『オールナイトニッポン』55周年連載Vol.1 Creepy Nuts&金子司ディレクターの鼎談 撮影/池本史彦 (C)ORICON NewS inc.

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 ORICON NEWSでは、毎月1組のパーソナリティーにスポットを当てて『ANN』の“今”を紹介する連載企画をスタート。トップバッターは、4年間にわたって『ANN0』(深3:00)の火曜パーソナリティーを務め、4月から『ANN』月曜を担当するCreepy Nuts。全3回にわたる初回と第2回は、番組を手がける金子司ディレクターとの鼎談を届ける。

■R指定「曲紹介は、お互いに聞かせている感じ」 DJ松永「ライブに来てくれる方の層も変わってきた」

 2016年11月を皮切りに4度の単発特番を経て、18年4月から『ANN0』がスタート。その当時、R-指定は「ラジオ経由で日本語ラップ好きを増やしていきたい」、DJ松永は「おこがましいですが、深夜ラジオリスナーにHIPHOPを普及させるつもりでやります!」との意気込みを寄せていた。番組では楽曲紹介やコーナーなどを通して、ヒップホップの世界を伝えてきたが、4年の月日が経ち、その言葉はかなり実現に近づいている。

【DJ松永】当時の言葉を今聞くと、ただ自分がやりたいだけなのに、大義名分をつけているんじゃねーよと(笑)。本人がやりたいだけだろと、自分に対して思いました(笑)。

【R-指定】ただ「ラジオやりたかったっす」だけじゃなくて、一応自分たちがやる上で何か言わないと、と思ったんでしょうね(笑)。でも、ホンマに自分たちでラジオをやるとしたら、松永さんと昔からやっていた「これ聞いた?」みたいなことをやりたくて。いまだに、松永さんの曲紹介でも「これ聞いた?」みたいな感じで話しているので、お互いに聞かせている感じがあって。

【松永】その人たちが持っている特性というか、面白さがどれだけラジオに反映できるかが大事だと思っていて。好きなパーソナリティーが、自分の知らない世界のことをしゃべっていても、ラジオリスナーとして「興味深いな」と感じることもあって。そう考えた時に、自分たちの特性はヒップホップで、ヒップホップの話をするラジオっていうのが一番自然だし、一番やるべきラジオだなと。芸人さんみたいな内容を目指すのではなく、我々の生業や個性で勝負しないといけない。

【R-指定】ヒップホップの人たちが各々の土俵でかましまくっているから、曲紹介のコーナーで「この曲は…」と話した時に、リスナーの皆さんも名前だけを聞いて「あっ、この人の名前を聞いたことある」とか「曲聞いたことある」って、ピンときているようになっている感じがあります。そもそも、ヒップホップ自体が、前よりも聞いている人が増えた印象です。

【松永】自分たちのライブに来てくれる方の層も変わってきている印象があって。変な言い方かもしれないですけど「一般の方」という感じがしますね。ファッションや見た目に年齢層も何か特別に偏っているわけじゃなく、パッと見、本当に色んな方たちが来てくださっているなと。それはすごくありがたいことで。その人たちに、オレらがやっていることが広く届いているんだなと感じることができています。

『オールナイトニッポン』55周年連載Vol.1 Creepy Nuts&金子司ディレクターの鼎談 撮影/池本史彦 (C)ORICON NewS inc.

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■松永「もはやラジオがライフワーク」 金子D「『ANN0』の今の土壌ができたのは、お2人のおかげ」

 Creepy Nutsが広い層に届くようになった大きな要因のひとつにはあるのは、『ANN0』の存在だ。松永は「最初の頃は、オレらよりもラジオの存在の方が圧倒的に強かったから、ここで知ってもらっていたっていう気持ちもありました。今は、オレらの普段の活動をラジオで補完しているという部分がありますし、もはやラジオがライフワークになっているところもあって。やっていて、楽しくてやっているなっていう実感もあります」と言葉に力を込める。

【松永】ブログ、SNS、ツイッター等だけでは、話しきれない自分の大切な話とか、たまに『ANN0』でもやっていた、ちゃんと自分の言葉で話して誤解を解きたい時とか、ああいう時に本当にラジオをやっていてよかったなって思います。文章では伝わらない空気感もありますし、深夜ラジオって、その番組にたどり着くまでにハードルがある分、ちゃんと向き合ってくれる人たちが集ってくれます。その人たちの前でしゃべることができるっていうのがすごくありがたいです。自分の間(ま)や空気に温度感のまま、完パケでお届けして、理解のある人たちの前で伝えられる媒体として、やはりラジオは貴重です。

【金子司】そういう意味では、ラジオ自体の環境も変わってきた気もします。お2人が『ANN0』を始めた時は、割とこれから人気になるような方々が横並びでやっていたんですけど、そこから4年が経って、SNSとか動画配信とかもあって、聴いてくれている人も増えて、気づいたら、横並びがエグいことになっていたっていう(笑)。

【松永】実質、今の『ANN0』の並びは実質一部(『ANN』)ですし(笑)、深夜0時からの『ANNX』も国民的な方々がやっていますから。

【金子】お2人が今の『ANN0』の土壌を作ってくれたということでもあります。2年目3年目くらいから、『ANN0』を引っ張っていく番組という立ち位置だったなと。

【松永】単発時代の『ANNR』も金子さんが担当してくれていたんですけど、本当にその時のオレたちなんて「誰?」でしたから(笑)。そんな状態で単発をやって、まさかそんなに売れないまま『ANN0』をやらせてもらえるなんて…。

【金子】正直な話をすると、当時のお2人くらいのポジションで『ANN0』をやって、残念ながら1年で終わってしまうようなパーソナリティーはたくさんいたと思うんです。でも、やっぱり番組が面白くて、続いていったことで、『ANN0』は長くやると、これだけ聴いてくれる人がいるというモデルになったという印象があります。それ以前から三四郎さんがやってきましたが、佐久間宣行さんが入ってきたり、霜降り明星さんやマヂカルラブリーさんが来たり、『ANN0』の今の土壌ができたのは、お2人のおかげでもあります。

Creepy Nuts 撮影/池本史彦 (C)ORICON NewS inc.

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■ターニングポイントは1回目の改編突破 ラジオがなかったら「マジでちゃんと売れてなかったと思います」

 番組のターニングポイントを聞いてみると、そろって1年目の『ANN0』を突破したタイミングだという答えが返ってきた。

【松永】1年目を突破した辺りで『ANN0』の中で、リスナーさんがちゃんとついてくださっていて。「『ANN0』聴いています」みたいな人たちが各媒体にいて、それでブッキングしてもらうことがめちゃくちゃ多くなりました。オレら、牛歩ながら進んでいく様(さま)を全部リアルタイムでやっているじゃん。

それこそ、Rが『フリースタイルダンジョン』の2代目ラスボスになった話とか、オレが世界大会(「DMC WORLD DJ CHAMPIONSHIPS 2019」)で優勝した時とかも、全部ラジオで話すことができましたし。テレビの露出も増えてきた時、現場で「ラジオ聴いてます」って言ってくださることが本当に多くて。あとは「オレもリトルトゥース(『オードリーANN』リスナーの愛称)です」というテレビのスタッフさんが本当に多い(笑)。そこの絆みたいなものがすごくて…。

本当にラジオが与えてくれた絆、人間関係とか仕事だったり、人と人とのつながりみたいなものが数え切れないほどあります。オレらの活動って、良くも悪くも全部ひっくるめて、人間性を楽しんでもらうっていうもので、曲作りもそうじゃないですか。そうしたアーティスト性とラジオとの親和性がすごくあって。オレらのいいところ、悪いところ全部出して、そこで好きになってくれて、曲もそことの親和性があるから。

【R-指定】ラジオがあることで、書ける曲の幅が広がっています。ソロで最初に作ったアルバムの時は、やっぱりMCバトルのイメージがあったから、「ゴリゴリのラッパーと自分の人間性は違うんです」という説明にアルバム1枚を費やさないといけなかった。Creepy Nutsで『たりないふたり』を出した時も、いい作品ができたんですけど、その説明に費やす部分もあって…。それが、ラジオがあったことで全部しゃべることができて、自分たちの人間性の部分が織り込み済みになったからこそ、その先のことが表現できるし、そういう2人がヒップホップのカッコつけ方をするっていうのも、クッションを何個も入れることなくできるようになりました。

【松永】Rが言ったみたいに、逆にめちゃくちゃカッコつけに全振りした作品を作りやすくなりました。ラジオが続いていなかったら、もしかしたら、もう少しファニーになっていたかもしれないです。自分たちが持っている、その部分を知ってもらわないといけないので。

【R-指定】どうしても、素直に出てしまう部分をラジオで出せているよね。そこがなかったら、ステージの上だけで全部をわかってほしいから、説明しないといけないし。そういう部分をすっ飛ばして、普段ああいうことを言っている人間がカッコつけるというのができる。昔は、30分から40分くらいのステージでも、人となりから説明して、フリースタイルもやったりして、曲をやるみたいな。今はすべてすっ飛ばして、オレらの見せたい曲だけで終わることができています。

【松永】逆に、ラジオであれだけふざけていた人がこれを書く…みたいな文脈も生まれています。本当にたまに考えるんですよ。ラジオをやれなかった世界線を想像すると、マジでゾッとします。マジでちゃんと売れてなかったと思います(笑)。本当に売れずにひぃひぃー言っていたと思います。多分今もバイトしてたかもしれない。

R-指定 撮影/池本史彦 (C)ORICON NewS inc.

R-指定 撮影/池本史彦 (C)ORICON NewS inc.

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■念願の1部昇格も… DJ松永が2週間休演 ゲストの「田中樹さんに助けられました」

 4月からは、菅田将暉のバトンを引き継ぐ形で『ANN』月曜を担当。両者のつながりは深く、以前『菅田ANN』に、Creepy Nutsがゲスト出演した際、DJ松永が、菅田に楽曲提供したいとアピール。菅田は、小沢健二スチャダラパーによる「今夜はブギー・バック」のような曲に挑戦したいと応じ、番組内で“本当にコラボする”と明言していたが、その後にコラボ楽曲「サントラ」を完成させた。まさに、映画みたいな展開となったが、開始早々、DJ松永が新型コロナウイルスに感染し、2週間休演を余儀なくされた。

【DJ松永】番組に2週間も出られないっていうことは初めてでした。

【金子司】1週目は、放送当日に松永さんがお休みされることが決まったんでしたね。

【R-指定】ちょうど、SixTONESの田中樹さんがゲストで来てくれる回だったので、僕は、それを聞いて「おっ」ていう感じでした。基本的にはゲストが来た時は、スムーズな話とかは松永さんがやってくれて、自分はインタビューしたりっていうのがあまり得意じゃなくて…。どうしようという気持ちだったのですが、樹さんが楽しくしてくれて、助けられました。ひとりは焦りましたけど、金子さん、福田さん(放送作家の福田卓也氏)、リスナーさん、みんなに支えてもらいました。その翌週は完全ひとりで、しかも2時間だったので…。

【金子】『ANN0』は1時間半だったので、いまだに2時間のタイム感が慣れないですよね。

【松永】まぁ、オレは知らない話題ですけど(笑)。

 来週配信の後編では、番組チームのカラー、放送当日のルーティーン、今後の番組について3人がディープにトークを繰り広げていく。

【Creepy Nuts】
MCバトル日本3連覇のラッパー「R-指定」と、DJバトル世界一のDJであり、トラックメイカーとして活躍する「DJ松永」による1MC1DJのHIPHOPユニット。業界屈指のスキルを持つこの2人だからこそ実現できる唯一無二のライブパフォーマンスは必見。2018年4月から「オールナイトニッポン0(ZERO)」火曜日を担当し、22年4月から『オールナイトニッポン』月曜日を担当している。

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