『プロセカ』ネタバレ全開シナリオチームインタビュー! 苦しくなる展開もあるけれど、不安になりすぎずに見守ってほしい

『プロセカ』ネタバレ全開シナリオチームインタビュー! 苦しくなる展開もあるけれど、不安になりすぎずに見守ってほしい

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 2021年9月30日で1周年を迎えた『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』(以下、プロセカ)。

 初音ミク鏡音リン・レン巡音ルカMEIKOKAITOといったバーチャル・シンガーと出会ったオリジナルキャラクターたちが、音楽を通して繫がり成長していく物語も、この1年で大きく進展している。

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 電ファミニコゲーマーでは、本作が配信される前のタイミングでシナリオに焦点を当てたインタビュー記事をお届けしているが、今回は1周年ということで、ネタバレ全開の開発者インタビューをお届けする。なお、ネタバレの範囲は、メインストーリー及び2021年8月に開催された「ふたり、月うさぎ」までのイベントストーリーまでとなる。

 話を伺ったのは本作のプロデューサー・ディレクターを務め、シナリオにも関わっているColorful Palette近藤裕一郎氏、シナリオチームでメインストーリー・イベントストーリーを執筆する桝井愛氏、同じくシナリオチームでイベントストーリーの執筆・シナリオ全体のディレクションを担当する山下あづさ氏の3名だ。

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左から桝井愛氏、山下あづさ氏、近藤裕一郎

 これまでに紡いできた物語に込めた想いや裏話、今後の展望など、『プロセカ』のプレイヤーならばその魅力を再発見できるようなお話をいろいろと伺ってきた。今回は完全に“プレイヤー向け”の記事となっているが、そのぶん、濃い話が展開されているので、ご一読いただければ幸いだ。

 なお、電ファミニコゲーマーでは『プロセカ』1周年を記念し、近藤裕一郎氏とセガ側のプロデューサーである小菅慎吾氏のインタビュー記事も掲載している。そちらもぜひご覧いただきたい。

取材・文/小林白菜
編集/クリモトコウダイ
カメラマン/佐々木秀二

※取材に際し、写真撮影時以外はマスク着用、換気とパーテーションの設置等、感染症対策を徹底したうえで実施しています。

一歌と寧々、まふゆとえむ──キャラクターの関係性で“想定外”だったこと

──リリースから1年、各ユニットのストーリーは大きく進みましたが、ユーザーさんの反応はいかがでしょうか?

近藤氏:
 シナリオに関しては、やれることはやったかなと思います。もともと予定していたことも、予定していなかったことも含め、キャラクターの成長に関してはうまく描けたのではないかと。

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左から桝井氏山下氏近藤氏

桝井氏:
 メインストーリーが受け入れられるか、というのがまず最初にドキドキしていたところだったのですが、こちらの伝えたい部分はユーザーさんにちゃんと受け取っていただけたので、嬉しかったです。

山下氏:
 ひとつひとつのイベントをチーム全体で試行錯誤しながら作っているのですが、良い反応を多くいただけています。ただ、今後フォローが必要だなと感じる、課題になった部分もあるので、よりよいシナリオを書いていければと思います。

──最初は5つのユニットの物語はそれぞれ独立していましたが、もともと他人だったキャラクターがいまは友達になっていたりと、ユニットを越えた繋がりが増えていったと思います。こういった展開はどの程度、当初から想定していたのでしょうか?

近藤氏:
 もちろんユニットを越えた繫がり自体は最初から想定していました。閉鎖的なコミュニティだけでは、キャラクターたちが得られる気づきがどうしても限定的になってしまうので。いろいろな人と出会って、いろいろなことを知って、変わっていくことが大切だと思っています。

 ただ、どういった出会いがあるかという部分については、もともと考えていたものもあれば、あとから「これはやらねば」と感じて描いた出会いもあります。

──「やらねば」というのはシナリオを書いていく中でですか? それともユーザーさんの反応を受けてでしょうか?

近藤氏:
 大半はシナリオを作っていく中で必要と感じたものですが、僕たちの想像以上に多くの人に受け入れてもらえたと思えた部分などは参考にしています

──印象的なものだと、一歌寧々に歌を教えてもらうことになったのが意外な繫がりで驚きました。

山下氏:
 「響くトワイライトパレード」で一歌が寧々に歌を教えてもらうことになったのは当初、想定していなかった部分ですね。

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近藤氏:
 ユニットごとにストーリーのおおまかな流れは最初から考えられているんですけど、過程の細かいところはリアルタイムで詰めていっていますね。一歌と寧々のところは当時「Leo/need」(以下、レオニ)が置かれていた状況を考えたとき、一歌自身に気づきが必要という、当初のプロットとは別に必要性を感じた部分でした。

山下氏:
 まふゆは裏表のギャップが大きいので、誰かと絡ませるとおもしろくなりますよね。日野森姉妹がメインのイベント「ふたり、月うさぎ」 でもまふゆとの会話があるんですけど、普段はされないような質問をされて、一瞬だけ素の部分が出るという場面も印象的になったかなと思います。

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桝井氏:
 思っていたよりキャラクターが動いて、おもしろい関係になったのはまふゆえむです。最初は「出会ったら面白いだろう」という軽い気持ちで「よいしょ」って引き合わせたんですけど(笑)、予想以上に受け入れていただいて。

──日野森姉妹といえば、天馬兄妹東雲姉弟、日野森姉妹のイベントがすべて終了しましたが、こちらの反響は大きかったのではないでしょうか?

山下氏:
 この3組のイベントは予想以上の反響でした(笑)。どのイベントも「祭り」という共通点があったのですが、各々違った「祭り」の様子を描けたかなと思います。きょうだい関係については、まだまだ掘り下げていきたいと思っていますので、今後もお楽しみにしていただければ幸いです。

──本当に3組とも関係性が全然違うのがおもしろいところですが、とくに(日野森)志歩 や東雲姉弟は普段、あまり素直な愛情表現をしないからこそ「本当は姉(弟)のことをどう思っているの?」というところが気になっているユーザーさんが多かったんだと思います。

桝井氏:
 それぞれどういう気持ちでお互いと接していたのかというのをちゃんと描けるイベントにしようね、という話はしていたので、それがユーザーさんに届いたのは良かったなと思います。

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 東雲姉弟は互いに「こいつぅ~!」と思いながらも「ここは尊敬できるな」という気持ちも口にせずとも持っているのが良いですよね。天馬家のふたりはストレートに「愛っ!」って感じで(笑)。

山下氏:
 日野森姉妹はこれまでイベストであまり関係が語られていなかったこともあり、より丁寧に掘り下げようと意識して描きました。雫はいつもどおりだったんですけど、特に志歩は「プロを目指そう」と決めた後の話だったので、いつもくっついてくるだけだと思っていた雫に対して、そうじゃないと大人な考え方をできるようになっていたり。

 他のきょうだいイベントでも言えることですが、もう少し早い段階でイベントが開催されていたら、もっと違う内容になっていたかなと思ってます。少しそのイベントも見てみたいなと自分でも思うのですが(笑)今後もそのタイミングでしか描けないそれぞれのきょうだいらしいストーリーを描いていければなと思います。

──レオニのイベントに登場したイオリや、ビビバスのイベントに登場した遠野新、あとワンダショのイベントの青龍院櫻子なども人気キャラクターだと思います。これからの登場に期待しているユーザーさんは多いと思いますが。

近藤氏:
 どのキャラクターも丁寧に描きたいと思っているので、彼らも継続して魅力的に描いていけたらと考えています。

「純白の貴方へ、誓いの歌を!」はシナリオチームの悲願? 反対されたが絶対にやりたかった

──もう少し、各イベントでのユニットやキャラクターたちの変化について掘り下げたいと思います。ハーフアニバーサリーのタイミングで開催されたイベント「君と歌う、桜舞う世界で」はラストで一歌とこはねみのりが一緒に歌うという展開がありましたが、節目のイベントでこれを描いた意図があれば教えてください。

桝井氏:
 ハーフアニバーサリーで区切りがいいというのと、4月は出会いの季節ということでああいったお話になったんです。一歌自身がミクと出会ったことを切っ掛けに大きく変化したんだということを振り返りつつ、改めて歌と向き合うというストーリーがまずあって。

 その中で同じようにミクと出会って変わっていった子たちが一緒に歌うことができている状況というのは、感慨深くてすごく素敵なんじゃないかなと。最後のほうでが出会うところも含めて、歌を通して繋がったんだ、そしてそれはミクがいたからなんだっていうことを改めて感じていただけたら嬉しいなと思って書きました。

近藤氏:
 奏は「出会った」カウントなんだ。

桝井氏:
 これからまだまだ繫がりが広がっていくいうのを想起させつつ、優しい物語になればいいなという願いも込めました。

──レオニは「Resonate with you」でプロのバンドを目指すことが決まりましたが、この先はどのような展開になっていくのでしょうか?

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山下氏:
 いまのレオニはもともとプロ意識を持って活動していた志歩についていくような形になっているんですけど、ここから個人個人が「プロになるにはどうしたらいいか」を意識して、新しい壁にぶつかっていく。その中で乗り越えていけるのか、どうか? というお話になっていくかなと思います。

近藤氏:
 レオニはレオニらしくというか、等身大な空気があるユニットなので、プロを目指すからといってその空気感が壊れることはありません。彼女たちの歩幅で夢に向かっていくことになると思います。

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山下氏:
 個人的に「Resonate with you」は思い出深いイベントなんです。志歩が脱退を考えていたとき、レオニの面々が改めて向き合うシーンの心情表現なんかはこだわって書かせていただいた部分なので。

 あと、イベントのストーリーをつくるときってシナリオチームで最初から最後まで流れを決めたあと、近藤さんとディスカッションをするんですけど、そこであまりNGが出なかったのもすごく印象に残っています。

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近藤氏:
 (笑)。

山下氏:
 1週間くらい揉んで決定稿が仕上がることがほとんどなんですけど、1~2回のやりとりで書き上がったので、「やった!」って(笑)

桝井氏:
 「Resonate with you」のときは「これは完全に絵が見えているんだな」というパターンでしたね。

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──「MORE MORE JUMP !」(以下、モモジャン)はいかがでしょうか?

桝井氏:
 直近の愛莉のイベント「ハッピー・ラブリー・エブリデイ!」 彼女の魅力が出て良かったなぁと(笑)。もともとバラエティアイドルとしてどんなことをしていたかっていう設定もある程度決めていたんですけど。

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 仕事とかをしているときに「私なにしてるんだろう?」とふと考えてしまうことって大人でもあると思うんですよ。

 これが本当にやりたいことなのか? いまのままでいいのか? これを続けていればこの先やりたかったことが見えてくるのか?そういうふうに葛藤することってあると思うんですけど、自分のやりたいことに対して真摯な愛莉の姿を書くことができたので、良かったなぁと思います。

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桃井愛莉

近藤氏:
 愛莉は『プロセカ』の中でも精神的に大人なキャラクターなので、成長を描くのは難しかったりするんですけど。彼女は過去と向き合った上で、自分の良さに気づきながら次に進めたっていう、そういう意味で良いイベントだったかなと僕も思います。

──「届け!HOPEFUL STAGE♪」ではみのりの変化が描かれますが、彼女だからこそ勇気を与えられる人がいるという結末が感動的でした。このストーリーで大切にしたことがあれば教えてください。

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山下氏:
 このイベントはみのりにとって、とても大切な一歩になったなと思っています。みのりはめちゃくちゃ鋼メンタルなので一回ヘコんでもすぐに立ち直れますし、ファンやモモジャンのことを大事に思っているからこそ一生懸命に頑張っていたり。だけど一緒に活動するのが有名アイドル達の中で、自分だけが無名ということもあり頑張りを評価してもらいにくかったり、そもそも自分を見てもらえなかったりという現実もあり、みのりにとって初めての大きな壁であり、そこをどう乗り越えていくのかという点に私達も一緒に悩み、向き合いました。

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桐谷遥

 作中で出てきたファン、そしてみのりのように、自分は頑張っているのに評価されにくい環境ってどうしても出てくるんじゃないかなと思います。その時に未完成なみのりだからこそ「わたしと一緒にがんばろう!」と背中を押せるような物語になれたらなと思っています。

──ビビバスのストーリーは「Awakening Beat」の終盤で、こはねの才能の片鱗が見えつつ、ちょっと不穏な空気が流れました。

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白石杏

近藤氏:
 が何を思ったのかというところは推測していただきつつ、杏自身のイベントもいつかまた来ると思うので、楽しみにしていただければという感じですね。

──あとビビバスのキャラクターがメインのイベントだと「純白の貴方へ、誓いの歌を!」がおもしろかったです。

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山下氏:
 あのイベントは一度近藤さんに反対されたところがあって。

桝井氏:
 私たちは「絶対やりましょうよ」と言っていました。

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──えっ、そうなんですか?

近藤氏:
 女性キャラクターのほうが多いタイトルで、ジューンブライドの限定キャラクターがみんな男性になるのはどうなんだろう? という話はしました。

山下氏:
 このお話はシナリオチームとしては「絶対やりたいよね!」というくらいのテンションだったんです。物語としても良いものになりそうな予感はしていて。それで桝井さんが近藤さんに猛プッシュして(笑)

桝井氏:
 ほかのシナリオチームのメンバーとも「こういうところが見れたら絶対いい」、「確かに!」みたいな会話をしていたんです。
 結果的にどのキャラクターも持ち味を活かしながら、意外な面も垣間見えるお話になって良かったなと思います。冬弥はいろいろな気づきが得られましたし、結局巻き込まれる彰人というのも(笑)。

 はワンダショ以外のショーの演出を付けるというのをそれまでは避けていたところがあったんですけど、冬弥や彰人といった真正面から受け止めてくれる相手とのやりとりでそれが和らいでいったり。
 類と彰人は喧嘩みたいになったりしてましたけど、それぞれが良い作用を及ぼしつつ、おもしろいものになったかなと思っています。

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神代類

山下氏:
 最初はもう少しギャグ寄りになる予定だったんですよ。ギャグとシリアスの塩梅にはいつも悩まされています。

──余談ですけど、杏ちゃんのスーツ姿は僕の周囲の女性ユーザーさんに好評だった印象があります。

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桝井氏:
 やった! 「絶対杏はスーツだよ」と何度も言っていたので、好評というのは嬉しいです。

ワンダショとニーゴのイベントは難産? けれどいちばん苦労が絶えないのはビビバス

──ワンダショはいかがでしょうか? 最初のメインストーリーが司の成長に重きを置いたお話だったので、フェニックスワンダーランドを救うというのはそこから少し逸れた印象も個人的にはありました。このあたりはもともと決まっていた展開ですか?

近藤氏:
 そこはもとからですね。「こういう順序を踏んでこうなる」という計画に沿って考えていったのですが……結果、めちゃめちゃ大変でした(笑)。この1年間でいちばん大変だったイベントは「ワンダーマジカルショウタイム!」です。
 ここでワンダショの第1部が終わるというのは決まっていたんです。でも一度書き終わったあとで、キャラクターの心情を無視しているような印象になってしまっていると感じて。収録直前に全部書き直してということをしました。

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桝井氏:
 思わず遠い目をしてしまいます……。

山下氏:
 大変でしたね……。

桝井氏:
 劇中劇のショーの内容とか「どうしたらいいんだ!?」みたいな(笑)。自分の中で1度「こう」となってしまうとなかなか上手く離れられないところがあって。近藤さんや山下さんにかなり助けられました。

──結果的にすごく納得感のある着地点になっていましたし、良い意味で苦しみの跡は見えなかったです。えむのふたりの兄がいまでは愛されキャラっぽくなっているのもすごく好きです(笑)。

桝井氏:
 良かったです(笑)。楽しんでいただけるのがいちばん嬉しいので。

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山下氏:
 大筋の話の流れは今後のことまである程度決まっているんですけど、「ワンダーマジカルショウタイム!」での苦労を経て、最初の計画に囚われすぎるのはやめようという話になりました。
 もちろんここで決めた流れを目指して進んでいくことには変わりありません。ただ、寄り道とか、そのときそのときで彼らに必要なものは都度考えて行こうというように話し合って決まりましたね。

桝井氏:
 プロットを決めても本文を書いているうちに「この流れであそこにたどり着くのは難しいのでは?」と感じたら一度立ち止まって相談をして、「じゃあ今回はこっちの流れにしたほうがいいね」といったやりとりは増えました。
 キャラクターたちがリアルタイムにどう感じているかを気にするようにしています。「こう決めたんだからこうしなきゃ」となると駄目になっちゃうという学びを得たので。

──やはりキャラクターの実際の動きによって、もともと考えていた流れと変化した部分は大きいですか?

近藤氏:
 そうですね。我々としては「キャラクターを作っている」という感覚は一切ないんです。もちろん最初に設定を決めるときは別ですけど、それ以降はいかに生きている登場人物に対して想像力を働かせられるかという意識でいます。
 そうするとやっぱりあっちに行ったりこっちに行ったりするよなぁと。

──リリース前のインタビューではニーゴのお話を考えるのがいちばん大変だったとおっしゃっていましたが、これはいまも変わっていませんか?

桝井氏:
 しばらくはやはりニーゴが難しかったですね。まふゆのイベント「囚われのマリオネット」絵名のイベント「満たされないペイルカラー」 の辺りまでは難関コースだったんですけど、そのあとはもっと個別に掘り下げる方向で考えるようになって変わっていきました。

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東雲絵名

 ニーゴには「これを目指している」といった、ユニット全体の大目標みたいなものがないんです。それぞれが違う問題を抱えているので、そこを個別に深堀りしていくっていうのができるようになって、最近はそこまで苦労することはあまりなくなっています。

 乗り越えるべき壁が見えてくれば、この展開の中ではこういう動きをするよなっていうのは見え易くなりますね。逆にこの子たちはこれを目指していくから、その中でこういうことが起きていくだろうっていう、ユニット全体で考えすぎてしまうと「じゃあそのときこの子はどうするんだろう?」という個別の行動を考えるのが難しくなってしまいます。
 ニーゴはひとりひとりの悩みが深い分、それぞれの深堀りに集中できて、やや書きやすくなっていきました

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暁山瑞希

──では直近で特に苦労したユニットは、やはり先ほども挙がったワンダショでしょうか?

山下氏:
 いや、ビビバスですね……。ビビバスはなかなか近藤さんのOKが出にくいです(笑)。

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「Vivid BAD SQUAD」の1st Single『Ready Steady/Forward』

近藤氏:
 ビビバスって“音楽の凄さ”の表現であったり迫力が求められるユニットだと思うんですけど、このゲームの特性上、それをストーリーの中で描くのは難しいという課題があるんです。

 どういうことかといいますと、ビビバスってストーリー自体は王道の少年漫画なんですよ。これが漫画だったら、音は鳴らせなくとも音楽の凄さを伝える演出がいろいろ凝らされていますけど、『プロセカ』ではそうもいかなくて……

 『プロセカ』でそれを描くということは、王道の少年漫画的なおもしろさを、迫力あるバトルシーンに頼らず描く、ということなんです。

 なので、それ以外のおもしろさを出さなきゃいけないということになりまして。

──やはり少年漫画は漫画の特性を活かしているから読み応えがあるわけですもんね。

桝井氏:
 アニメーションチームと「迫力出ないかなぁ」「効果線とか出せない?」と話したり(笑)。

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近藤氏:
 仲間との関係の変化とか、新たなライバルの登場とか。そういう王道の展開を落とし込んでいったとき、ストーリー表現も含めてどうすればもっと良いものになるのか。試行錯誤が続いています

──これまで、イベント後にユニットが次のステップに進んだことを示す演出があったのは現時点ではレオニとワンダショだけですが、このあたりはユニット間で足並みを揃えるようなことはあまり重視していないのでしょうか?

近藤氏:
 それは最初から重視していません。それぞれそのユニットらしい物語を描くことが最優先なので、「ここまでに終わらせなければいけない」みたいな話になってしまうと無理が生じてしまいますから。
 次に「Next Step」へと進むユニットは決まっているんですけど、いちばん遅いユニットだと、もしかしたらほかのユニットがもう1度「Next Step」しているかも、くらいバラバラになるかもしれません。

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ライター
ゲームメディアでアニメの話をしたりしている人。ゲームライターと名乗ってよいものか分からず、かといってアニメライターではない気がする。いい感じの肩書き募集中。両ジャンル追いかけるには人生はあまりに短い。ゲームは和・洋・大作・インディーなんでも楽しみ、アニメはとりわけ『アイカツ!』シリーズや『プリキュア』シリーズなど、女児向けのものを好む。
Twitter:@Kusare_gamer
編集
新聞配達中にトラックに跳ね飛ばされたことがきっかけで編集者になる。過去に「ロックマンエグゼ 15周年特別スタッフ座談会」「マフィア梶田がフリーライターになるまでの軌跡」などを担当し、2017年4月より電ファミニコゲーマー編集部のメンバーに。ゲームと同じぐらいアニメや漫画も好き。
Twitter:@ed_koudai

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