気付けば翔は巨大な船の上。

荒波に揺られ、大きく上下する甲板に立ち、大海原に糸を垂らして釣りをしていた。

大きくしなる竿を捌き、釣り上げたものは、昆布のような海藻をまとった巨大なモンスター。

船長に緊急事態を知らせ、全速前進!!!

すると目の前に現れた大きなゲート。

その下をくぐると、眩いフラッシュ!!!

オービスッ………?

スピード違反だ!!!

連帯責任で乗組員全員が裁きを受ける……。




!!!

……………………。

翔は夢から醒めた………。

釣りの事を考えて寝て、枕元に置いたスマホからは通知LEDが点滅していた……。

翔…………どんだけ単純よ………。

そ…………そうだ!!!!

ヒラメ釣りだ!!!!

外は………明るくない!!

何時よ………?

1時40分!!!!

おしっ!!!

アラームの5分前に起床ッ!!

第一関門突破!!!

今回は寝過ごさなかった。

ひと安心した翔は身支度を整えて出発。

先日より娘からヒラメが食べたいとせがまれ、更にはヒラメ食べるの楽しみだという妻のひとこと。

プレッシャーに押しつぶされそうでいっぱいいっぱいの翔は、天気予報アプリを毎日毎日1時間置きくらいに確認し、どこへ行こうかと悩んでいた。

そして仕事の合間に釣具センターで装備を過剰に整えたりと、完全に血眼状態。

んで、行き先も出発する車に乗るまで悩んで悩んで悩んだ挙げ句、当初から予定していた浜益へ向けて車を走らせた。

なんでそんなに悩んだかって言うと、風………。

浜益方面、風がモノすごく強い予報なんだよ……。

一応追い風になるから良いかと言うことで決定したんだけど、なんとなくやっぱり気になって、出発から20分経った頃、もう一度天気予報を………と、車を路肩に停めた。

思考…………

思考…………

思考…………

直感!!!!

最終的に判断したのは直感。

当初からも全く予定に入っていなかった、古平漁港に行くことにした。

なぜ古平かというと、風が穏やかな予報が出ていたことと、強いて言えば去年の実績があったから。

ただ、実績と言っても秋のサケ釣りシーズンでの実績で、今の時期とはワケが違う……。

って事でほぼ直感だね。

そして時間も無いので超特急で積丹方面に向かった。

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モンスターエナジーを片手に。

しかし、浜益方面から引き返したロスは大きく、余市を通過する頃にはもう空は明るくなってきていたため、イイ場所はもう無いだろうと覚悟はしていた。

4時丁度……。

古平漁港に到着した翔は目を疑った。

え…………人全然居ない……。

ってか、ここってヒラメスポットとして有名ではないのかな………。

翔のお気に入りの場所にも誰も居ないどころか、防波堤独り占め状態。

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ココね!!!

向いにある、一番沖側の防波堤には投げ釣りの人がちらほら見えるけど、この場所が色々とポイントを探りやすくてね!!!

港を出入りする船の通り道、船道に対して色々な角度で探れるからいいんだよこの場所!!

先端より左側がこんな感じ。

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右側がこんな感じで、足元にはテトラポットが敷き詰められている。
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まず初めは、左側のこの赤丸のポイントを中心に探っていくことにした。

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最初の3投はメタルジグを装着して探ってみたんだけど、なんかしっくり来なくてジグヘッド+ワームの組み合わせでいくことにした。

使うのはMegabass ボトムスラッシュ ピンク 
の30gに、エコギア パワーダートミノー。

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最近ずっとロックフィッシュやってたからね………。

ソフトルアーの方がしっくりくるというか…。

で…………こいつをキャスト!!!

結構飛ぶ!!!

飛行姿勢が安定していてあまり回ったりしないね!!!

着水……………。

着底……………。

まずはリフトさせて底から持ち上げる。

感覚的に2mくらい持ち上がってるかな。

そしたら少しゆっくり目にワンピッチジャークを5回、それからのテンションフォール。

コレを段々と繰り返す。

ヒラメのバイトはフォール中に発生することが多いので、フォール中の変化を見逃してはならない。

底から離す…グイーーーーーーっ……

泳がす…スィースィースィースィースィー……

フォール……………………コツンと着底。


底から離す…グイーーーーーーっ……

泳がす…スィースィースィースィースィー……

フォール……………………コッッッフッ……!

!?  

!?

………………。

違和感…………。

テンションフォールから着底するときって、テンションで軽くしなった竿先がぴょこんと跳ねるけど、今回はちょっと違ってピクッと先が戻ってビタッとまたテンションが戻った。

変だ…………。

確証はないけど取り敢えずの鬼フーーーーーーーーックッ!!!!

ドッッッッッッ!!!


根掛かりに対してのフッキングみたいに、ロッドはしなったが、先は定位置から動いていない。

しかしその直後……………。

ドッギュッ!!!!

ジャワワワワワワワワワワワワワワワワ!!!

ジャーーーーッジャッジャッ!!!

ドラグ出まくり!!!!!

ヤバイ!!!!

危機感さえ感じた。

バットエンドを脇に抱え、目一杯ロッドを立てて応戦するも、ドラグが負けている……。

スキを見て増し締めするも、既に結構締まっていた。

この命のやり取りが2分程続いただろうか、離れたり寄せたりを繰り返し、薄暗い海の中からやっと魚体が見え隠れ………。

…………………カ………イ…。

姿を見た瞬間、腹の底から震えが湧き上がり、胸………肩………腕………手へと伝達していく。

そして極度の緊張が襲い、脚がコワばる…。

海面にでてきたのは、目測60後半のヒラメ。

坊さんが座る立派な座布団みたいなのが、足元に居るんだよ。

圧倒されたね……。

そしてそのスキを突かれたような形で一気に真下への潜り!!!!!

足元の底にはテトラポットが積まれている!!

そこに潜られれば絶望的。

慌ててドラグを手で抑え…………

しようとした。

…………。

完全に慌ててたんだね…。




指で…………


ベールを…………


弾いちゃった…………。

………。



スッコーーーーーンとラインテンションが抜け、急いでベール戻して巻き直すも、もうそこにヒラメは付いていなかった。

ンッだぁーッ!!!!!!

声にならない叫び声をあげ、ドンと強く足を地面に押し付けた……………。

…………。

興奮と悔しさと絶望ですぐは立ち直れない。

開こうとした手も余韻でうまく動かない。

これだけの大物を逃したあとは、こんな滅多にないチャンスを無駄にしたという事が受け入れられず、次のことなど考えられなかった。

思い起こせば、このファイトはワームに換えて5投目の出来事。

まだまだ時間はある。

それに、ヒラメの時合は瞬間的に湧き上がり、あっという間に過ぎる。

チャンスはもう来ないかもしれない。

わかってはいるが、もう脳が諦めかけてる。

もう無理だと…………。

でも釣りに来たんだから取りあえずはやる。

力なく立ち上がり、取りあえず投げる。

飛距離も全然で、通常の70%くらいしか飛んでない。

ダメだよね………。

ちゃんと集中してないと……。

そんな翔の心境を知ってなのか、一投目の着底からテキトーに掛けたロングジャークの初動で挑発するかのように食いついてきた!!

ドカッ!!!

しかし、突然過ぎてフッキングも甘かったのか、3度程強い引きを見せてフックアウト。

うーーーーわ……………。

またとないチャンスをまたまた逃した………。

最悪だ。

翔の士気は更に低下…………となるところだけど、翔…………アマノジャクな性格でして………。
 
なんかここまでヤラれたら吹っ切れちゃいましてwww

それならとことんやってやりましょうかと!!!

2度も喰ってくるくらいなら、どうせそこらへんヒラメだらけなんでしょ?……と。

火が着いた。

やってることなんて、いつものロックフィッシュゲームに似てる事。

いつも通ってる根掛かりの激しい小樽南防波堤を攻めるより、ずっとラクだろ!!!

根掛かりなんか滅多にしない砂地をシラミ潰しに探るだけだぜっ!!!………と!!

なんだかよくわからないけど、集中力が倍増した。

いつも使ってる5gのジグヘッドが大きくなっただけ。

ワームもデカイだけ。

よしっ!!!

やってやる!!!

フルキャストッ!!!



それから30分後………。



翔は速度と水深に、重点を置いて泳がせてた。

水深は感覚的に2mくらい。

泳がせる速度はワームのバイブレーションを1番感じられる速度を意識する。

そしてフォール時はカウントを取る。

コレはちゃんと一定のレンジを取れているか確認するためと、予想しているカウントよりも早く竿先に変化があった場合、それをアタリとして判断するため。

このときの場合は大体5〜6カウントでコツンと着底していた。

リフト……

ジャーク……

フォールカウント……1.2.3.4.5…コツン。

リフト……

ジャーク……

フォールカウント…1.2.3…コツッ!!

!!!?

アワセてみよう。

ラインを巻き取って、ストロークを確保して…………ギュォッッッッ!!

ガグンッ!!!!

グッグッグッグッグィィィ………

ギュッギュギュッ!!

ジジジジジジッ!!

楽しいっ………!!

戦っている感が半端ないぜ!!

だけど今回は焦りが無い!!

しっかりと確実に寄せて浮かせていく!!

そしてタモを伸ばしコントロール!!!

………。


………。


………。


キャッチッ!!!!

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よしっ!!!

やーーーーったぁーーーーーっ!!!!

嬉しくて感覚が遠のいた手でサイズを計測。

いいサイズっ!!!

52cmだった。

いやー!!

やっときてくれた……。

2回バラして3回目があるかどうかなんて、ホントは不安だったけどさ!!

信じてロッドを振り続けた甲斐があった。

おっと………。

ヒラメは鮮度が命!!

すぐに締めて血抜きをし、タイラップをエラ蓋から入れて口から出し、そして一周させれば、即席ストリンガー。

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便利でしょ!!!

このまま海にドボンしておく。

ここまでで5時ちょっと。

もうさ、内容が濃い濃い!!

今日この1時間でどれだけ悔しい思いをしたか!!

それを考えるとさ、なんかコイツが愛おしく思えてくるわ……。

良かった良かった………。

これで家族のお望み通り、旨いヒラメを食わせてやれる!!

でもやっぱ…………最初に逃したあの1匹………惜しいな………。

あいつをあげれていれば…………。

ま、そんな贅沢は言えませんね!!

感謝感謝ッ!!


そうそう…

このヒラメが釣れたポイントは……

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ここらへんかな!!

先端から斜め左側にフルキャストした地点。

そこから引っ張って来たんだけど、結構遠くで掛かったから大変だった……。


その後、9時までロッドを振り続けたけど、アタリも無く、大事な1匹を抱えて帰ることにした。

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帰宅して家族に釣果報告。

凄く喜んでくれた!!

釣り人としてこう釣ったものをいつも喜んでもらえるってのは嬉しいものだ。

そして、いつも大きな魚を釣るとやることがある。

それは、口を大きく開いて持ち、下の4歳の息子を追いかけることだ。

ソイ………

カジカ………

ヒラメ………。

息子は泣いて逃げていくんだけど、これが楽しいのなんのって!!!

いつもはそこで笑って終わるんだけど、そんなことをしている最中に、ふと気付く。

ヒラメの口の中ってさ……。

すんげー柔らかいのね………。

ツルンとしててプルンとしてて、他の魚とは違うような感触だ。

でもこれってさ、針掛かっても裂けて抜けちゃうんじゃないかな。

あとしっかりと掛かりそうな場所といったら、口先の顎骨………か。

今回翔が釣り上げたヒラメは、下顎の骨を貫通するような形でトレブルフックが刺さり込んでいた。

考えてみるとヒラメ釣りにおいて、フッキングがどれだけ重要なのか思い知らされる。

そもそもさ、アタリってアタリ無いよね。

フォールからの食いってパターンが多いけど、通過するルアーを下から喰いあげて行くわけでしょ……。

喰ってからもヒラメの平べったい身体の構造上、くるっと反転して引くとも思えないしさ!!

食ってから逃げるといっても、ラインがフケる方向にしか行かないんじゃないかな。

となると、それに気づけなかった場合、次喰ったことに気付くのは次のアクションの初動。 

そこで、あれ……?

ってなるでしょ。

アクションの初動で気づいて、ヒラメの巻き抵抗が掛かるものの、それではフッキングには不十分なんじゃないかと。

結論として、フォール時の微妙な変化に気づけた場合、しっかりとストロークを取って力強くフッキング。

アクションの初動で気付いた場合は、改めて追加のフッキングが必要なんじゃないかと思った。

特にフォール時間の少ないサーフなら後者の方だろうね!!

フッキングして外れちゃったら………って心配になるけど、そこで外れるような微妙な掛かり具合なら、どっちみち最後のランディングまで持たないと思うな。

最後の抵抗激しいからね………。


そうだ……

捌いて胃の中見てみたんだけど、コイツが居たわ。

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チビガヤ……。

こんなの丸呑みして、トゲとか刺さって胃に詰まって具合悪くならんのかなぁと思ったら、尾ビレ以外全て溶けて無くなってた。  

恐るべし……。


いやー、今回の釣行は大満足!!!

思い出すと最初の1匹目は惜しいが、それも次への糧となるでしょう!!

北海道のヒラメシーズンはまだまだ続く。

翔もドンドンやっていくよっ!!!!


■釣果■
・ヒラメ×1