撮影被害当事者声明
性行為映像作品出演被害の防止等に関する法律について当事者からの願い
私たち抜きに法律を決めないでください
性行為映像作品出演被害当事者
「AV出演対策委員会」
多くの被害当事者は、既存の支援団体につながることができていません。現在行われている被害者支援は、「強要」被害を訴える被害者を救うサービスを提供していますが、アダルトビデオ(AV)を含む性的画像記録出演に関する被害者の多くは、強要されていない、自らすすんで従事していると思い込まされているからです。支援につながることができない認知の問題も大きく、「トラウマの再演」や「性的自傷」「関係性の依存」を搾取されているなど、種々の事情を抱えています。既存の支援のやり方では、本当に支援が必要な人が助かりません。現在、性行為映像作品出演被害の防止等に関する法律が審議中です。私たち被害当事者は、2022年3月25日に4万超のAV契約取引権に関する署名を各省庁に提出しました。法律審議の際に、実際の被害当事者の話を聴いて、本当に困難な状況の当事者を救うことができる法律にして下さい。
①スカウト全面禁止
署名サイト
成人年齢引下げ後もav出演契約は未成年者取消権を無効化しないでください
白川美也子医師のインタビュー トラウマの再演、複雑性PTSD、性的自傷、性化行動について
西村光太郎医師ののインタビュー 個人ライブ配信、インターネット使用依存について
西村光太郎医師コメント ホスト、スカウトによる色管理について
性行為映像作品出演被害の防止等に関する法律骨子案についての疑問
第1目的について
「出演するものの自由な意思決定」が、セックスワーク論や偽装ネットワークが多用する呪文的表象の言葉であり、違和感がある。出演しようとする人(被写体)を守ろうという法律ではなく、使用者側の視点に近い。
法律によって、出演自体が「出演者の心身及び私生活に重大な悪影響を与える」と規定するのであれば、飲酒、喫煙、ギャンブルと同様に、20歳まで禁止しないのはなぜか。悪影響とわかっているのであれば、本来ならば、全面的に禁止すべき。
第2定義について
「性行為映像作品」の定義が「人が性交もしくは性交類似行為を・・・・」としており、なぜ本番行為が定義されているのか、疑問です。これでは、法的に本番行為を撮影し、流布することを認めることになるので、このあたりも、業界の人が文を書いたのかと、驚くような内容です。削除を求めます。
この定義だと、今、小中高生未成年が被害に遭っていて、規制する法律がない「着エロ」を放置することになります。「着エロ」も規制が必要なので「性的画像記録」
と定義することを求めます。
第3出演契約の締結について
1契約
シリーズものなどの包括的契約ではなく、一本ごとに契約することは、前進だと捉える。しかし、1シーンごとの細かい契約が必要。どのような行為を認めるか、台本に表示する必要がある。現場では、ほぼアドリブで、その時の雰囲気で行為が行われている状態を放置してはいけない。完成台本に同意するかどうかが契約とならないと、現場で何が行われるかわからないまま、撮影が行われていることは大きな人権侵害にあたる。
作品の公表と期間が示されることが明記されているが、それが守られないことがほとんどであり、コピーされたものが出回ることが状態化しているため、厳しい罰則規定が必要。契約外のコピーが出回らないように完全削除するの責任も制作販売側に必要。
2説明義務
書面、電磁記録の説明を受けて20日を経過しないと撮影できないという内容だが、なぜ、20日なのか不明。20日放置すれば、撮影可能というのは、無責任だ。
この期間に、出演しようとする人が、性暴力被害者、逆境サバイバー、発達特性、境界知能、知的障害、貧困経済問題があるか、確認する必要があり、相談団体、支援支援、自治体窓口などの支援につないで、まず、福祉の支援を受ける必要がある。このことから、20日では短かすぎる。支援や福祉が安定して提供される必要がある。なぜ出演が必要なのか、当事者の主体性の背景の問題を解決することなしに、撮影した場合、トラウマやPTSD、ショック症状、アレルギーなど、心身への悪影響が大きく、そうなった時のケアが用意されていないことは、あまりにも危険。業務によりトラウマやPTSD、ショック症状、アレルギーなど、心身への悪影響が出た場合、性暴力加害であり、刑罰が必要。そのことへの支援が用意されなければならない。特に、精神的負担が大きいために、トラウマケアは保険適応にすべき。撮影により、トラウマ、PTSDを発症する可能性を出演希望者にあらかじめ説明する必要がある。
意に沿わないものは拒絶できるとあるが、拒絶が困難な特性や背景があることが考慮されていない。
作品の発表は撮影終了の3ヶ月後
待つ間の期間にもPR活動に駆り出される可能性もあり、宣伝活動の禁止を盛り込む必要がある。また、撮影により、心身に悪影響が出ることが臨床的に明確になっていることから、この期間に相談機関やトラウマケアを受けられるシステムが必要。心身の異変があった場合、発売することにより、さらに精神的に問題が起きてしまう。そのことについてもなんら考慮されていない。
制作側から損害を請求しないことは、当然であり、今まで強制的に出演者が支払わされていたことがおかしい。
撮影後撤回できる期間が1年間に限られる問題
いつでも、いつまでも撤回できないと、性暴力を受けるということは、被害に気づくのに時間がかかったり、トラウマの再演、性的自傷にはなかなか気づきにくく、自身で受け入れにくいため、1年ではなく、いつでも撤回できる必要がある。
相談機関があまりにも少なく、限定されていて、機能しておらず、現状の問題を把握できていないところもあり、そもそも知識が共有されていない問題がある。相談機関の養成が必要。悪質なトラウマケアや高額な相談料を取るところ、出演者の背景の問題に知識がない機関もあることが問題。
出演者を誤認させるような表示をしてはならない
これまで誤認させ、情報を与えないようにしてきたので、具体的に何を禁止するか、明記すべき。身バレは確実にする、性感染症の危険性がある、粘膜接触がある。これまでの販売実績では、デビュー作しか売れない、プロダクションと出演者のギャラ取り分割合などの明記などが現在不明瞭であり、不当に安い賃金で働かされている問題がある。借金までさせられるケースも多い。ギャラが適正に支払われたら良いわけでなく、人身取引、性暴力であることには変わりない。この点からも、本来は、AVを全体的に禁止すべき。
3出演契約の条項の無効
一見、とても良いように見えるが、具体性に欠け、適応の範囲がわかりにくい。
第4 出演契約の履行等
現場で拒絶できる権利がありますよ、すべて説明しましたねという内容だが、そもそも拒否しにくい特性や背景を持つ人が集まる職業であるという認識が必要。現場で、拒否権がありますよと説明されても、大勢のスタッフが待ち構えている中、拒否できる人は、ほとんどいない。ほぼ絵に描いた餅のような条文。撮影を確認する機会が与えられることが明記されているが、実際、これまで、自身の作品を確認してきた女優はほとんどいない。確認したところで、やはり発売はやめてくださいと言える人は、ほとんどいないだろう。インティマシー・コーディネーターが必要。
第5出演契約の解除
いわゆる適正AVを制作しているAV人権倫理機構管理下の組織は、体裁を整えて、言い逃れをするツールとして法律が使われる可能性がある。適正AVより市場規模が大きい個人ライブ配信や同人AV規制に繋がらない。いつでも撤回権が行使できることが必要。
解除の効果
原状回復を求める部分が危険
第6差し止め請求権
差し止める権利があっても、トラウマ再演、性的自傷、経済困難な状態において、権利を主張することは困難。そもそも、契約前にスクリーニングを行い、性暴力被害者、逆境サバイバー、発達特性のある人は、出演契約ではなく、支援と福祉につながらなければならない。
第7プロバイダ責任制限法の特例
2日に短縮された以外のなんのメリットもない。
性的画像記録流布に関するプラットフォーム側の責任こそ追及されるべき。
第8相談体制
現状ほとんど相談体制が整っているとは言えない。知識が共有されいない。ワンストップセンターでは、スキルが足りない上に、無理な仕事。
性的画像記録に出演することの問題への情報提供、出演希望者への公的支援、福祉が提供されるべきで、出演ありきではなく、まず、福祉と支援が提供されなければならない。
第9国及び地方公共団体の責務
犯罪フィクションの制作を禁止してください。
出演希望者に福祉と支援を確実に提供してください。
支援団体の育成と利権構造にならない仕組みが必要。
第10罰則
罰金だけでなく懲役を含めた刑罰が必要。
第11施行期日・見直し条項
インターネットを媒介した勧誘の手口や広告トレンドが早いため、毎年法律を見直す必要がある。
◉AV出演対策委員会としての結論
スカウトは禁止。
性暴力被害者、逆境サバイバー、発達特性、経済困難などの出演志願者は、出演契約ではなく、福祉支援につながる必要がある。
撮影によるトラウマ、PTSDへはケアと制作側への刑罰が必要。
犯罪フィクションは制作してはならない。
いつでも取消、撤回ができなければならない。
バラエティ番組をはじめ、あらゆるセクハラ行為と、それを拒絶せずに受け止める女性という図自体に問題がある。犯罪を助長するという点では、バラエティ番組も同じ。既存メディアを含め、社会の問題として考えて欲しい。
◉会見を終えて
記者会見の質疑で新法について、 「『適正AV制作法』であって『出演被害防止法』ではない」と指摘していました。
本当にその通りです。
同日夜、複数の支援団体が集まり、急遽メディアの記者らを集めて学習会が開かれました。
そこでも、《このままでは、日本で最初の性暴力性売買を合法化するための法律になってしまう。絶対阻止しなければ》という声が上がっていました。
被害当事者を排除して法律を作らないで下さい。
◉元AV女優 瀧本梨絵さんから
今回新たにAV出演に際しての法案ができたことは出演する女優を守るためにも必要なことで大きな一歩だと思っております。ただAV出演に関わった女性として更に考慮いただきたいことが3点あります。
①私は5年前にAVの撮影現場において事前説明のない性的行為の強要を受け被害を告発しました。当時は撮影当日に台本の内容が変わるのはよくあるだなど数多くのセカンドレイプを受けましたが、撮影当日に台本にない本番行為を強要されることは女性に大きな肉体的負担と心的外傷を与えるので、撮影数日前までの充分な説明が必要で台本にない本番行為はやめてほしいと思ってます。
②ここ数年デジタル性被害に苦しむ出演女性が増えています。自分の出演した性的動画が本人の知らないうちに許可なくコピー・転載されてそれが繰り返され、一生消えないデジタルタトゥーとして出演女性を苦しめています。私自身も自分の性的動画が許可なく動画販売サイトで売られていたり海外の動画サイトなどにアップされる被害にあい対処方法がないまま現在に至っています。このような被害を防ぐため本人の同意のない出演動画のコピー転載を厳しく取り締まってほしいと思っています。
③出演して販売された性的動画は現在申請しなければいつまでも売り続けられています。いつまでも販売を続けることはデジタル性被害を助長することにも繋がり女性の引退後の生活にも支障が出るため申請がなくとも1年以内に販売を停止する法制度が整えばいいなと思っています。
瀧本さんを取材した産経新聞記事
https://www.sankei.com/article/20170415-O6KI4JDQ5ZKDXDPJTWRLEPAG6I/
◉与党案骨子(未定稿)
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2022年5月9日当事者会見についての報道
AV出演被害救済法案、自民党示した骨子案に当事者団体訴え「無条件に解除できるようにすべき」 日刊スポーツ(共同)