高齢者虐待を目撃した介護相談員は3人に1人…介護の適切な関係性とはどのようなものか
介護者による被介護者への虐待が深刻
今、介護の線引きについて世間から注目が集まっています。介護現場において過度の身体拘束やお世話をしないといった虐待と思しき行為を目撃した介護相談員が、実に全体の33.1%いることがNPO法人地域ケア政策ネットワークの調査でわかりました。地域ケア政策ネットワークは今後、介護としてふさわしくない行為をまとめて年度末までに策定する予定です。
3割以上の介護相談員が不適切な介護を目撃
介護者は体の自由が効く上に呼び出しブザーや車椅子、センサーなどを自由に操作できるポジションである以上、どうしても被介護者が従わざるをえない状況があります。今、その介護者が被介護者に対して虐待を起こす事件が問題になっているのです。
厚生労働省からの委託を受けたNPO法人地域ケア政策ネットワークが調査したところによると、約33.1%の介護相談員が虐待と疑える不適切な介護を目撃しています。虐待かどうかの判断は、個別の事例ごとに異なりますし、また、目撃した介護相談員の判断によっても意味合いが違っていきます。
しかし、約3割強が好ましくない行為が目撃している以上は見過ごせる事例ではありません。虐待に関しては2007年度から厚生労働省が調査に乗り出していますが、虐待と疑わしいグレーゾーンや不適切ケアについては把握していないままでした。そのため、対策等も取られておらず野放しになっていた状態です。
当たり前のことですが、身体が思うように動かない場合や、仮に認知症になってしまって認識能力が低下していたとしても、高齢者には人権があります。人間としての尊厳や人らしく生きていく権利を不当に侵害されないようにしていく必要があり、自分から声をあげにくい被介護者だからこそ、周囲が人権を守らなくてはなりません。
介護者による嫌がらせ・虐待の背景とは
実際に、現場ではどのような行為が行われているのでしょうか。調査の詳細を見てみましょう。調査事例1,171件のうち、特にブザーやセンサーなどの呼び出しにかかる嫌がらせが724件と、とても多くなっています。センサーの嫌がらせとは、高齢者が立ち上がるタイミングで職員に通知がゆき、意味もなく座っているように指示されるというものです。
他にも、介護者がベッドや椅子から落ちても放置したり、鍵をかけて自由に外出ができないようにするといった行為が行われています。こうした不適切な介護が多発しているのです。このようなグレーゾーンの行為は、やがて本格的な虐待に発展してしまう恐れがあります。
なぜ、このような行為が起こってしまうのでしょうか。背景のひとつには、やはり介護職員の不遇があると考えられます。介護職員の待遇が悪いがゆえに不満が溜まり、それが高齢者に向けられてしまうケースがあるのではないでしょうか。
悪化した労働環境が原因…?
たとえば、介護業界の有給取得ひとつ取ってみても、労働者全体で有給をしっかり取れている割合は56.8%であるのに対して、介護職員は管理者やサービス提供者、ホームヘルパーなど、どの職種で見ても有給の取得は4割程度にとどまっていると回答しています。
また、給与や人間関係の問題もあるでしょう。介護職は給与が他業界と著しく低く、重労働の傾向があります。待遇が悪いとストレスが溜まり、良好な人間関係を築くことが難しくなります。それらが複合的に重なりあった結果、ストレスが蔓延して虐待に近い行為が発生するという可能性は十分に考えられるでしょう。
そして、身体拘束で体の自由を奪うという行為も介護の現場で起こっています。暴れる認知症患者に対して行われる場合は致し方ないこともありますが、この行為が虐待の意図を持って非介護者を拘束するケースがあるのです。
介護者と被介護者の関係性
具体的に、どのようにして介護現場で身体拘束等が行われているのでしょうか。調査によると、車いすや椅子に高齢者を座らせたまま、動くと注意するなどの行為や、ミトンなどを使って、身体の自由を奪う行為等があることがわかっています。
これらの背景には、被介護者が認知症となり、予期せぬ行動に出て介護職員の負担が増えてしまうという事情などが考えられます。
介護職員は、人手不足が故に限られた人員の中で多くの高齢者をケアしていかなければならないため、どうしても効率性と合理性を重んじなければなりません。ここにも、介護現場における慢性的な人手不足による影響が発生しています。
身体拘束のあり方は難しい問題で、代替方法がない状態で完全に廃止してしまうと、今度は事故につながる可能性があります。手段を考えていくことはとても重要で、それが認知症患者をはじめとした高齢者の人権を守ることの第一歩になるでしょう。
「人」を介護するということ
介護が必要な被介護者が、認知機能や身体機能の低下や「自分の世話をしてもらっている」という恩義から、仮に虐待と疑わしき行為を受けていてもそれを「嫌だ」と言いづらいということは十分にイメージできます。
被介護者にとって身体拘束や外出、動作の自由を奪うことができる介護職員は、被介護者にとってある意味「脅威」となりえるでしょう。しかし、だからこそ相手の立場に立ってものごとを考えることの重要性は一段と増していくのではないでしょうか。
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2020年9月7日 制定