根強い人気を誇る女優、吉岡里帆さん。4月に公開された映画『ホリック xxxHOLiC』では、セクシーな悪女・女郎蜘蛛役に挑戦。演技の幅を広げている。
5月20日公開の主演映画『ハケンアニメ!』では、新人アニメーション監督・斎藤瞳を好演。本作の前半部分では、世間に定着しているイメージを封印。観ているこちらも胃が痛くなるようなヒリヒリしたシーンの連続で笑顔を封印して新境地を開拓した。
移動の車に「枕と布団」を常備するワケ
――『ハケンアニメ!』で演じた斎藤瞳は、作品作りに妥協しないアニメーション監督です。吉岡さんがプライベートで妥協しないモノやコトを教えていただけますか。
日頃のテーマは、「どれだけリラックスできる時間を作れるか」です。自宅での寝心地には妥協せず、こだわっています。具体的には、お布団や枕などの寝具を、より良いものをいつも模索しています。
お布団は、素材が変わるだけでずいぶん寝心地が変わると聞いたことがあるので。枕は使い続けると安定する首の位置が変わっていくらしく、合うお布団もそのときどきで変わるそうです。そのときにベストなものを常に探しています。
基本的にはシーズンごとに買い替えていますが、以前使っていた寝具も保管しておいて、使っている寝具の寝心地が変わったら取り替えて使っています。
――睡眠って大切ですよね。
仕事のパフォーマンスを高めるためにも大事にしたいんです。本当は長時間睡眠派なんですけど、今はお仕事がバタバタしているのでショートスリーパーになっています。理想の睡眠時間は7時間なのですが、確保できず……。でも、可能なかぎり眠りたいので、車内に枕とお布団を常備して、移動中に眠っています。今のお仕事のロケ地が北関東なので、現場に到着するまでの1時間半、車内で熟睡しています(笑)。
――女優というお仕事はハードだと思います。夢を諦めかけたことはありますか。
上京する前から、なぜ女優になりたいのかという明確な理由と目標設定を立てていたので、夢を諦めかけたことは一度もありません。昔も今も、夢は叶えるものだと考えています。
夢を諦めずに続けられたのは、現場で作品作りをしている方たちへのリスペクトと憧れを、今まで一度も忘れたことがなかったことも大きいと思います。あとは、事務所のみなさんが心から私の夢を応援してくださって、そばにいてくださったことも。周りの方々に生かされて、夢に近づける道を模索できています。
――吉岡さんの夢とは。
10年後や20年後に、私が携わった作品を見返したいと思ってもらいたいですね。この映画も、そういった存在になることを願っています。
アニメーション監督という仕事への驚き
――アニメーション監督を演じてみて、いかがでしたか。
本当に大変なお仕事だなと思いました。「1本の作品を完成させるまでに、これほどの時間と労力を要するのか」と、演じてみて実感したからです。
私はお芝居のお仕事をさせていただくとき、自分なりに入念に事前準備をします。不器用な性格なので、自分でも「なぜこんなに時間をかけているのか」と思うほどです(笑)。今回もアニメーション監督の仕事を女性監督にマンツーマンでお伺いしたり、下調べをしました。でも、実際に演じて見ると、わかっていたつもりでわかっていなかったと感じることがありました。
実際、現場の方の声を聞いていくと、本当にハードなスケジュールですし、アニメーション作画の量も大量です。そのうえ、やり直しは日常茶飯事。本当に才能のある方にしかできない仕事だと思いました。
――吉野耕平監督ご自身がアニメーターとして活躍されていて、映画『君の名は。』ではCGアーティストや空間デザイナーを担当した方として知られています。その吉野監督とのタッグは、いかがでしたか。
アニメーターの瞳を演じるときは、監督の一挙手一投足を参考にさせていただきました。とてもユニークな監督で、役柄の瞳には反映させていませんが、撮影現場の隅っこでギュッと小さくまとまりながら、何かを考えていらっしゃる姿が印象的でした。「どうしたらこの(アニメの)部署に自分の思いが伝わるんだろう」と考えてらっしゃる瞬間もたくさんありましたし、伝わったとき、こっそり嬉しそうにされていたのも拝見しました。
そういえば監督から1シーンだけ無茶振りをされて、驚いたこともありました。
――どんな無茶振りだったんですか?
瞳が働く大手アニメ会社『トウケイ動画』のアニメーションチームのみんなで、最終話を変更しようと意見が一致して、急展開を迎えるんです。すべての部署に自分の思いを伝えるシーンは、実は決まったセリフがほぼなくて。撮影直前に監督から、「瞳が各部署に思いを伝えている姿を撮りたいので、吉岡さんの言葉で伝えてみてください」と言われて「えっ、どうしよう!!」と、かなり緊張しました。本番では私の話し声は採用されていないのですが、「瞳なら何と伝えるだろう」と想像しながら、次々と話しかけていきました。
映画を観るとたしかに、必死で伝え回っている瞳がいました。監督の采配はすごいと感じた瞬間でもありました。
――完成作を観た個人的な感想ですが、猫のザクロとの共演も印象的でした。
ザクロはプロの役者の猫ちゃんなので、とても賢い子でした。鳴き声までかわいくて。本編でもかわいい鳴き声が使われています。ザクロはごはんを食べるのがすごく好きみたいで、むしゃむしゃと美味しそうに食べている姿を何回も見ては、癒やされていました。
――吉岡さんもご実家の京都で、猫を育てた経験があるとか。
猫はつっけんどんとかマイペースな性格と言われていますが、ウチの猫ちゃんたちは甘えん坊でかわいい猫ちゃんたちばかりです。もともと実家で飼っていた猫が産んだ子猫ちゃんたちなので、親猫の姿を見てすぐに人間慣れしたのかもしれません。
――改めて最後に、映画を見る方にお伝えになりたいことはありますか。
この映画は、アニメーションづくりにかかわる1人ひとりを描く群像劇です。それぞれのキャラクターの関わり合いや、コミュニケーションのつたなさから生まれる人間味がおもしろさのひとつです。劇中の2作のアニメのクオリティもすばらしいので、ぜひ見てもらえたらと思います。
■原作:辻村深月「ハケンアニメ!」
■監督:吉野耕平 ■脚本:政池洋佑



















































