保育園の統合計画
笠間保育園は、耐震性能不足と少子化により建て替えを余儀なくされた2園を統合する保育園の新築計画です。
敷地は鈴鹿山脈のふもと、三重県いなべ市北中部。形状は一見複雑ですが、接道状況や隣接環境が明快なため、配置ゾーニングは比較的スムーズに決定しました。旗竿の様にボトルネック状に接道する西側は車寄せと駐車場、縫製工場のある南側には園庭、そして北側の住宅地側に園舎を計画するという配置計画です。
最初のイメージを表現した強いコンセプト
設計打ち合わせは既存2園の園長先生と市のこども課を中心に進めました。園長先生が最初に提示したイメージは、「みんなが一つになれる」「こどもたちが自由に裸足で走り回れる」保育園。打ち合わせを重ねていく中で、最初のイメージを要所で確認していくうちに、自然と「ひとつ屋根の下の保育園」という太い幹のような設計コンセプトが整えられました。
機能性と心地よさを兼ね備えた設計と演出
建物全体は中庭を囲んだロの字型で、ひと続きの屋根の下にすべての保育室機能が配置された、シンプルかつどこからでもこども達を見守れる設計となっています。
建物のシルエットは、周辺住宅地の描く輪郭線と鈴鹿山脈の景観を意識し、全体の高さを抑えながら、トップライト(天窓)によるボリューム分割を行なっています。トップライトには、大きさや開口の方位、色彩にバリエーションを持たせ、建築基準法の排煙設備規程を満たしつつ、時間の移ろいによって豊かな内部空間を演出することを試みています。
室内は、「こども達が触れるものには木のぬくもりを」というイメージを大切にし、構造材すべてに三重県産材のスギを採用。万一の火災に備えて燃え代を設計時に考慮することで、床、壁、天井の露出部分も木構造でありながら、建物の耐火にも配慮しています。
また、地元の職人でも扱える木架構にも配慮し、1丈の約半分の1.5mグリッドをモジュールとして定め、柱ピッチや屋根架構の格子梁構造へ適用することで、材径や仕口の統一化を図っています。
保育室等の内部空間については、床面から1.2mまではこどもの空間、1.2mより上は大人の空間と位置付ました。下層は家具等もすべて木質化を行い、こどもが安心して過ごせる落ち着いた空間とし、上層にはガラスの間仕切りを採用し、トイレや隣接する保育室をはじめ、建物全体を見渡せる構成とし、一体感を高めています。
計画概要
発注者 | いなべ市 |
延床面積 | 2,063㎡ |
主要用途 | 保育園 |
竣工 | 2013年 |