今国会におけるAV出演被害の論議
国会では、今年の3月から、AV出演契約の問題が頻繁に取り上げられています。
今国会で、AV出演契約を規制する法律が可決、成立するかもしれません。
法務省の法制審議会による刑法改正の論議
上述の国会の件はさておき、法務大臣の諮問機関である法制審議会は、現在、刑法の性犯罪規定の改正を審議しています。
(参考。現時点までの流れ)
<刑法の性犯罪規定の改正>
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上述のとおり、2月28日に5回目の会合が開催されました。
当日は、
「諮問事項第二の二『被害者等の聴取結果を記録した録音・録画記録媒体に係る証拠能力の特則を新設すること』」、
「諮問事項第三の一『性的姿態の撮影行為及びその画像等の提供行為に係る罪を新設すること』」、
「諮問事項第三の二『性的姿態の画像等を没収・消去することができる仕組みを導入すること』」、
について一巡目の話し合いがおこなわれました。
「諮問事項第三の一『性的姿態の撮影行為及びその画像等の提供行為に係る罪を新設すること』」の論議のなかで、複数の委員は、AV出演強要に関する意見をのべました。
詳細につきましては、過日(2022年3月29日)の当ブログをご覧ください。
(参考。当ブログ。2022年3月29日)
<刑事>
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(参考。現時点までの流れ)
<刑法の性犯罪規定の改正>
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3月29日に、6回目の会合がありました。
議題は、
「諮問事項第一の一『刑法第176条前段及び第177条前段に規定する暴行及び脅迫の要件並びに同法第178条に規定する心神喪失及び抗拒不能の要件を改正すること』」、
「諮問事項第一の二『刑法第176条後段及び第177条後段に規定する年齢を引き上げること』」、
「諮問事項第一の三『相手方の脆弱性や地位・関係性を利用して行われる性交等及びわいせつな行為に係る罪を新設すること』」、
「諮問事項第一の四『刑法第176条の罪に係るわいせつな挿入行為の同法における取扱いを見直すこと』」、
「諮問事項第一の五『配偶者間において刑法第177条の罪等が成立することを明確化すること』」
です。
ゴールデンウイークに入る前に、この6回目の会合の議事録が公開されました。
山本潤委員がAV出演強要にふれています。
当該箇所を参照します。
(2022年3月29日 第6回刑事法(性犯罪関係)部会 議事録より、引用。)
<2ページ>
●2022年3月29日 井田良 部会長(中央大学教授)
(前略。) それでは、初めに、「第一の一」の「刑法第176条前段及び177条前段に規定する暴行及び脅迫の要件並びに同法第178条に規定する心神喪失及び抗拒不能の要件を改正すること」について御議論いただきたいと思います。 まず、事務当局から、配布資料11の内容について説明してもらいます。 |
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<2ページ>
●2022年3月29日 浅沼雄介 幹事(法務省刑事局企画官)
配布資料11について御説明いたします。
1枚目の二つの枠内を御覧ください。 次に、2枚目の枠内を御覧ください。 配布資料11の御説明は、以上です。 |
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<2~3ページ>
●2022年3月29日 井田良 部会長(中央大学教授)
ただ今の説明内容に関して、何か御質問はございますか。 よろしいでしょうか。 それでは、議論を行いたいと思います。 御意見のある方は、挙手するなどした上で、御発言をお願いしたいと思います。 この諮問事項については、最大で70分程度の時間を予定しております。 |
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<3~4ページ>
●2022年3月29日 山本潤 委員(一般社団法人Spring幹事)
どのような文言になるにせよ、被害者側として実現してほしい内容についてお伝えします。
全ての人の性的自己決定権、性の尊厳が守られることが何よりも重要なことであり、そのために性的同意が理解された法改正を望んでいます。 A-1案の「その他意思に反して」にせよ、A-2案の「拒絶する意思を形成・表明・実現することが困難であることに乗じて」にせよ、断っても断っても聞き入れられず性交が行われること、ノーと言えない人への性的同意の押し付け、本人の弱点に付け込んで性的行為に同意させること、性的同意の選択のための重要な情報が提示されていないこと、また、一度同意しても、自分が想定しない性的行為を相手がし始めたときには中断することができ、その中断が聞き入れられなかったら性的自己決定権が侵害されたと捉えてほしいと思います。
その際に、誰がどのように性的自己決定権、性の尊厳が侵害された状態であるかを判断するのかということについては、非常に不安を感じています。 これまでも、被害者の意思に反して行う性交等は規定の対象であると言われてきましたが、運用により「当てはまらない」と排除されてきた経緯を知っているからです。 また、被害者の行動の自然さ、不自然さの判断が、精神医学・心理学的なエビデンスを用いてされてこなかったという指摘もあります。 被害を受けたことのない人の常識ではなく、エビデンスに基づいて判断してほしいと思います。 性的自己決定権を真に保障しようとするのならば、一般社団法人Springの要望書にもありますが、「自発的・任意に参加していない者に対する性交」という概念を含んだ「Yesmeans Yes」型の規定とするべきだと思います。 それは、被害者側が同意がなかったことの証明をしなくてはいけないのではなく、加害者側が同意があったことの証明をしないといけないと転換されるからであり、加害者側の行為の責任を問うことができるからです。 虐待的な家庭環境や過去の性被害により、合理的に自分を守るような判断をすることが難しい人は、再被害を受けることがよくあります。 そのような状況も、「自発的・任意に参加していない者に対する性交」であれば捉えられると思います。 ただ、司法実務に関わる様々な方の御意見もお聴きしたところ、一足飛びの転換は難しいのかなと思うところもございます。 将来の目標を「自発的若しくは任意の参加」と「Yes means Yes」に置いた上で、現在のA-1案についてお伝えしますと、同意のない性行為を表現する文言としては、「その他意思に反して」は、私たちにとっては分かりやすいのですけれども、曖昧であるとも言われます。 A-2案の、「拒絶する意思を形成・表明・実現することが困難であることに乗じて」は、被害者に抵抗する義務を要求しないということでお考えいただきましたけれども、本当にそのような運用がされるのかは不安なところもあります。 「同意の意思を形成・表明・実現することが困難であることに乗じて」という規定とすることも考えられますでしょうか。 ただ、配布資料11に「①」から「⑧」までの例示があり、包括的要件が示されれば、性的自己決定権が守られない社会の仕組みによってこれまで排除されてきた人たちも救われると思います。 例示列挙については、処罰の範囲が議論の対象となると思いますが、「②」の「心身の障害」には、手帳を持っている人たちだけではなく、境界知能の人や発達障害の特性を利用された人も含めてほしいと思います。 また、先に薬物を与え、嗜癖を起こさせて依存状態にさせてからの同意も、「③」の「睡眠、アルコール・薬物の影響」か、「⑤」の「継続的な虐待」で捉えてほしいと思います。 「⑦」の「重大な不利益の憂慮」については、利益を与えると示唆されたときも当てはまるようにしてほしいと思います。 最後に、規定の罪名についてお伝えさせていただきます。 |
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冒頭でも記しました。
いま、国会で、AV出演契約の問題が論議されています。
一方で、刑法を改正してAV出演強要犯を処罰しようとするうごきも進行しています。
(再掲。参考。当ブログ。2022年3月29日)
<刑事>
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今国会の動向と併せて、刑法改正のうごきのほうも注目をしていきたいと思います。
(※参考)
(参考。当ブログ)
【AV出演強要への法規制①】
【AV出演強要への法規制②】
【AV出演強要への法規制③】
【AV出演強要への法規制④】
【AV出演強要への法規制⑤】
【AV出演強要への法規制⑥】
【AV出演強要への法規制⑦】
【AV出演強要への法規制⑧】
【AV出演強要への法規制⑨】
【AV出演強要への法規制⑩】
【AV出演強要への法規制⑪】
【AV出演強要への法規制⑫】
【AV出演強要への法規制⑬】
【AV出演強要への法規制⑭】
【AV出演強要への法規制⑮】
【AV出演強要への法規制⑯】
【AV出演強要への法規制⑰】
【AV出演強要への法規制⑱】
【AV出演強要への法規制⑲】
【AV出演強要への法規制⑳】
【AV出演強要への法規制㉑】
【AV出演強要への法規制㉒】
【AV出演強要への法規制㉓】
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(※参考 ”AV出演強要とAV出演契約”に関する今年の3月からの国会質疑)
<動画>
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(内訳。“成年年齢引き下げとAV出演強要の問題”に関する国会質疑)
<2022年3月8日~2022年4月27日>
【議員別】
●塩村あやか 参議院議員(立憲民主党)・・・・・・4回
●江崎孝 参議院議員(立憲民主党)・・・・・・1回
●本村伸子 衆議院議員(日本共産党)・・・・・・2回
●山井和則 衆議院議員(立憲民主党)・・・・・・5回
●早稲田ゆき 衆議院議員(立憲民主党)・・・・・・1回
●柚木道義 衆議院議員(立憲民主党)・・・・・・2回
●山田勝彦 衆議院議員(立憲民主党)・・・・・・1回
●吉田統彦 衆議院議員(立憲民主党)・・・・・・1回
●森山浩行 衆議院議員(立憲民主党)・・・・・・1回
●宮本岳志 衆議院議員(日本共産党)・・・・・・1回
●鎌田さゆり 衆議院議員(立憲民主党)・・・・・・1回
●堤かなめ 衆議院議員(立憲民主党)・・・・・・1回
●安江伸夫 参議院議員(公明党)・・・・・・1回
●鈴木英敬 衆議院議員(自民党)・・・・・・1回
(※計、23人)
【院別】
●参議院・・・・・・6人
●衆議院・・・・・・17人
(※計、23人)
【政党別】
●立憲民主党・・・・・・18人
●日本共産党・・・・・・3人
●公明党・・・・・・1人
●自民党・・・・・・1人
(※計、23人)
(ツイッターより、引用。)
●2022年4月26日 塩村あやか 参議院議員(立憲民主党)
救済期間が短期だと、殆どの人を救えず一生AVが出回ることを止めることができなくなる(法律上)。 救済される権利はそれなりに保証しなくてはいけない。 法の趣旨や保護対象は業者ではない。 後半は業者保護の話ばかりする党派があり、やはり1人は女性議員の出席して欲しいと思った |
●2022年5月3日 塩村あやか 参議院議員(立憲民主党)
いえ、圧倒的に男性が多いです。 女性は14人中4人のみ。 しかもこの間の国会議論を全く把握していない議員も多く、未だに搾取問題でなく強要問題だと思い込んでいる議員もいるんじゃないでしょうか。 超党派実務者会議の後半は男性議員により、いかにウン千億円のアダルト業界に配慮するかの話に終始 |
●2022年5月3日 塩村あやか 参議院議員(立憲民主党)
担当大臣が「搾取問題」として認識を変えていることもご存知ないかもしれませんね。 業界側の心配が強い認識です。 でもアベプラなら仕方ない人選かもしれません。業界のロビーは活発に行われており、議員の中にもAV業界の話しか聞かずに実行会議に出てきた人もいました。 |
●2022年4月26日 一谷 勇一郎 衆議院議員(日本維新の会)
業界がアンダーグラウンドに潜らない事も意識が必要、業界団体との会話も必要ではと質疑させて頂きました。 |
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(参考。当ブログ。2022年3月29日)
<刑事>
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■2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
■2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
■2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
■2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
問「出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?」
A氏「当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている。」
(※A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
■2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)・(後編)に掲載されました。
■2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」【1】【2】【3】)に出演されました。
■2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
■2016年12月28日 香西咲さんのインタビュー記事が、週刊文春に掲載されました。
(哲学者のウィトゲンシュタイン)
「絶望に終わりはない。自殺もそれを終わらせることはない。人が奮起して絶望を終わらせない限りは」
(明日のブログへつづく)
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