憂慮する

日本の歴史家の会

ウクライナ戦争の停戦仲介を各国政府へ 求めて、5月9日 、日韓共同で第2次声明を発表しました。

■ 2022/5/9に下記の第2次声明を発表しました。
記者発表YouTube→ https://youtu.be/4w4doDsfko8

説明の中で、国連職員として世界各地の紛争処理に関わってきた伊勢崎賢治さんが、蛮行糾弾と切り分け、停戦仲介で、世界核戦争と命の危機を防ぐべしと力説しています。

【悪いシナリオ】 34:00 ①ウクライナ軍の反撃がロシア領内に及ぶ(既に起こった)。

②するとロシアが国連憲章51条の「正当な自衛」として、武器供与国ポーランドに戦端を開く。③するとNATOは集団防衛を発動する。④世界核戦争。
【今が停戦交渉のタイミング】25:20 戦況が膠着し、指導者の支持率が高い今が仲介者が入るチャンスである。

【 停戦仲介者が非難を受ける誤解】 27:00  戦争犯罪を不問にするのか!帰属をどうするのか?等は停戦とは無関係である。それらは脇に置かなければ交渉は進まない。

【 国連の非難決議に賛成しなかった国々の役割について】 44:00 南ア共和国の女性代表は「一方的な制裁は対話の芽を摘んでしまう。何も解決にならない」とアパルトヘイトを対話で乗り越えてきた国是をスピーチした。非難一方ではない南アやインド、ASEAN諸国等の役割は大きい。


参考:オンライン参加された 李へヨン韓神大学校教授の詳細な論考(ウクライナ・「マトリクス」と「冷戦Ⅱ」)(日本語訳で12ページ)は、リンクで見られます。

-------第2次声明に対する賛同署名を集めております -------

提出用ではなく、アピールへの賛同意思表示として本HPに掲載させていただきます。第1次集約日をバイデン大統領訪日前の5/20と致します。https://forms.gle/6NBQJY2hUkuc5ukS6 


 2022/5/9【第2次声明】

日本、韓国、そして世界の憂慮する市民は
ウクライナ戦争即時停戦をよびかける

ロシア軍の侵攻によりウクライナ戦争がはじまってからすでに2か月がすぎた。ロシア軍は目的を達したとして、兵を首都キエフ方面から撤退させ、ドンバス東部に兵力を集中させている。イスタンブールでの停戦会談ではウクライナの停戦の条件が示され、楽観的な空気があらわれた。ところが、キエフ近郊の町ブチャでの市民の遺体が発見されるや、ロシア軍の戦争犯罪を非難する声が上がり、ウクライナ軍は怒りに燃えて、さらなる戦闘に向かっている。米国をはじめとする支援国グループは競って、大型兵器、新鋭兵器をますます大量にウクライナに送り込んでおり、米国の統合参謀本部議長ミリー将軍はウクライナ戦争は数年つづくだろうと言い始めた。

 一部の国々はこの戦争をウクライナの勝利まで、プーチン政府が降伏するまで続けることを願っているようだ。しかし、戦争が続けばつづくほど、ウクライナ人、ロシア人の生命がうばわれ、ウクライナ、ロシアの将来に回復不能な深い傷をあたえることになる。
それだけではない。多くの国がロシアに制裁を加え、ウクライナに武器の援助を増大させつづければ、戦争がウクライナの外に拡大し、エスカレートし、ヨーロッパと世界の危機を招来する。核戦争の可能性が現実のものになり、制裁の影響はアフリカの最貧国において世界的規模の飢餓をひきおこしかねない。

 戦争がおこれば、戦場を限定し、すみやかに停戦させて、停戦交渉を真剣にさせることが平和回復のための鉄則である。われわれはあらためて、ロシア軍とウクライナ軍は現在地で戦闘行動を停止し、真剣に停戦会談を進めるように呼び掛けたい。国連のグテーレス事務総長が、ロシアとウクライナの大統領を相次いで訪ね停戦を働きかけた。国連はさらに停戦のための真剣な努力を継続してほしい。3月以来、トルコが停戦会談の仲介者として敬服に値する努力を果たしている。ヨーロッパの戦争の決定的な現段階においては、アジア、アフリカの諸国も行動をおこすべきだ。中国やインド、南ア共和国などの中立的大国、インドネシア、ベトナムなどアセアン諸国が戦闘停止を両軍に呼びかけ、停戦交渉を仲介するのに参加してくれることを願ってやまない。

 これ以上戦争を続けることは許されない。プーチン大統領のロシア政府とゼレンスキー大統領のウクライナ政府は即時停戦する意思を世界の人々の前に明らかにし、停戦会談をまとめあげ、実際に停戦に向かうようにお願いする。 
 世界中の人々がそれぞれの場で、それぞれの仕方で、それぞれの能力に応じて、「即時停戦を」の声をあげ、行動をおこすべきときである。
 もっとも大切な価値は命である。ウクライナにおいて、これ以上、人間を殺すな、人間は殺されるな、と私たちは訴える。

    2022年5月9日

第2次声明の署名者
【日本】
浅田次郎 作家
石坂浩一 立教大学元教授
伊勢崎賢治 東京外国語大学教授、元アフガニスタン非武装化日本政府特別代表
伊東孝之 早稲田大学名誉教授
上野千鶴子 東京大学名誉教授
内田樹 神戸女学院大学名誉教授、武道家
内田雅敏 弁護士
内海愛子 恵泉女学園大学名誉教授、梨の木ピース・アカデミー代表
梅林宏道 ピース・デポ顧問
岡本厚 元岩波書店社長、元『世界』編集長
加藤史朗 愛知県立大学名誉教授
加納格 法政大学元教授
桐野夏生 作家、日本ペンクラブ理事長
鈴木国夫 「市民と野党をつなぐ会@東京」共同代表
徐載晶 国際基督教大学教授
田中宏 一橋大学名誉教授
田中優子 元法政大学総長
東郷和彦 静岡県立大学客員教授、元オランダ大使、元外務省欧州局長
富田武 成蹊大学名誉教授
豊川浩一 明治大学名誉教授
長與進 早稲田大学名誉教授
西成彦 立命館大学名誉教授
西谷修 東京外国語大学名誉教授
羽場久美子 青山学院大学名誉教授
平山茂 市民運動家
藤本和貴夫 大阪大学名誉教授、大阪日ロ協会理事長
毛里和子 早稲田大学名誉教授
矢野秀喜 無防備地域宣言運動全国ネットワーク
吉岡忍 作家、元日本ペンクラブ理事長
吉田浩 岡山大学准教授
李泳采 恵泉女学園大学教授
和田春樹 東京大学名誉教授、憂慮する日本歴史家の会代表 

【韓国】
高光憲 元 ハンギョレ新聞, ソウル新聞 社長, 詩人
金世均 ソウル大学名誉教授
金峻亨 韓東大学敎授, 元 国立外交院 院長
南基正 ソウル大学教授
明盡 和尙 
朴祥圭 牧師, 韓神大学理事長
白樂晴 ソウル大学名誉教授
白日 蔚山科学大学教授
徐海誠 作家
沈裁明 明Films代表
禹希宗 ソウル大学教授
李大根 又石大學校教授, 元 京鄕新聞 編集局長 
李都欽 漢陽大學校教授
李海榮 韓神大学教授,元韓神大学副総長
鄭智泳 映画監督
鄭泰春 歌手
咸世雄 神父,安重根義士記念事業会理事長
韓貞淑 ソウル大学教授
洪世和 作家,社會運動家 

【世界】
マーク・セルデン(ニューヨ-ク州立大学ビンガムトン校名誉教授、アジア・パシフィッ
 ク・ジャーナル:ジャパン・フォーカス編集長)
ギャヴァン・マッコーマック(オーストラリア国立大学名誉教授、オーストラリア人文ア
 カデミー・フェロー)



(注)短時間で発出するため、まず従来から交流のあった日韓の研究者を中心に声明署名者としました。日韓はアメリカとの関係で、緩衝国家という立場の共通性もあります。

2022/4/29 第2回シンポジウム【再論】

第2回シンポジウム【再論】

ウクライナ戦争を一日でも早くとめるために    

 ― 憂慮する歴史研究者があらためて訴える ― 

※YouTube配信 で 2022年4月29日 の議論をご覧ください。https://youtu.be/2Q9OnavP0Kw 


 ウクライナ戦争は決定的な節目にさしかかっています。ここで停戦に向かうのか、新しい戦争の本格的開始となるのか、それはこの戦争を見守っている世界の人々がどのように考え、声を発するかにかかっています。わたしたちの話を聞いて下さい。

報告と司会 藤本和貴夫(大阪大学名誉教授)

1 ウクライナ戦争の現段階、停戦協議の到達点と展望
伊東孝之(早稲田大学名誉教授)
松里公孝(東京大学教授)
伊勢崎賢治(東京外国語大学教授)

2 米国の新しい戦争のはじまりか、日本の立場は
羽場久美子(青山学院大学名誉教授)
和田春樹(東京大学名誉教授)
富田武(成蹊大学名誉教授)

 外務省、ロシア大使、インド大使と面談してきました 

下段 左 の写真:2022/4/18インド大使館 。左から、一等書記官(政治部)スマン・カンソティヤ、羽場久美子、駐日インド大使サンジェイ・クマール・ヴァルマ、和田春樹、富田武、伊東孝之、平山茂。 写真右:3/24ロシア大使館

ウクライナ戦争を1日でも早く止めるために日本政府は何をなすべきか


 まえがき

 わたしたちはウクライナ戦争を一日でも早く止めるためになにができるかを考えた結果、同じ職業の仲間で、停戦と停戦の仲介を求める声明を出しました。

 戦争は一日も早くとめなければならず、そのためには即時停戦を両軍によびかけ、停戦会談を本格的に開始するように求め、必要ならば、仲裁者、仲介者になって、停戦合意をみちびく必要があります。

 日本は憲法によって国際紛争のために武力による威嚇、武力の行使をおこなうことを放棄した国なのですから、停戦プロセスに積極的に参加すべきです。
停戦と停戦の仲介を求める声をあげることが必要です。声明を支持して下さい。皆さんのご意見をきかせてください。

 最初の署名者14人を代表して 和田 春樹

賛同署名ありがとうございました。

第1次声明(3/15)に対して1581
筆の賛同署名をいただきました。

頂いた一言集


賛同署名と共にお寄せいただいた708件の熱い想いの一言コメントを掲載致しました。(27ページ)

ロシア大使との面談報告

外務省とロシア大使館に歴史家が訪問、声明を手渡しました

―――憂慮する日本の歴史家の訴え――― 

ロシア軍の侵攻によりウクライナ戦争がはじまってから3週間がすぎた。ロシア軍はキエフを包囲し、総攻撃を加えようとしている。このような戦争が継続することはウクライナ人、ロシア人の生命をうばい、ウクライナ、ロシアの将来にとりかえしのつかない打撃をあたえることになる。それだけではない。ウクライナ戦争の継続はヨーロッパの危機、世界の危機を決定的に深めるであろう。

  だから、われわれはこの戦争をただちに終わらせなければならないと考える。ロシア軍とウクライナ軍は現在地で戦闘行動を停止し、正式に停戦会談を開始しなければならない。戦闘停止を両軍に呼びかけ、停戦交渉を仲介するのは、ロシアのアジア側の隣国、日本、中国、インドがのぞましい。

  日本はアメリカの同盟国で、国連総会決議に賛成し、ロシアに対する制裁をおこなっている。しかし、日本は過去130年間にロシアと4回も深刻な戦争をおこなった国である。最後の戦争では、米英中、ロシアから突き付けられたポツダム宣言を受諾して、降伏し、軍隊を解散し、戦争を放棄した国となった。ロシアに領土の一部をうばわれ、1956年以降、ながく4つの島を返してほしいと交渉してきたが、なお日露平和条約を結ぶにいたっていない。だから日本はこのたびの戦争に仲裁者として介入するのにふさわしい存在である。

  中国はロシアとの国境画定交渉を成功させ、ロシアとの安定的な隣国関係を維持しており、国連総会決議には棄権した。ロシアに対する制裁には反対している。インドは伝統的にこの地域に起こった戦争に対して停戦を提案し、外交的に介入してきた。インドとロシアの関係は安定しており、国連総会決議には棄権している。

  だから、日本が中国、インドに提案して、ロシアの東と南の隣国として、この度の戦争を一日も早く終わらせるために、三国が協力して、即時停戦をよびかけ、停戦交渉を助け、すみやかに合意にいたるよう仲裁の労をとることができるはずだ。

 われわれは日本、中国、インド三国の政府にウクライナ戦争の公正な仲裁者となるように要請する。

  ロシア軍とウクライナ軍は即時停戦し、停戦交渉を正式にはじめよ。

 ロシア軍はロシアにとっても信仰上の聖地であるキエフへの総攻撃をやめなければならない。

 最後に訴えたい。ウクライナ戦争をとめるには、すべての者がなしうるあらゆる努力をつくさなければならない。傍観者にとどまってはならないのだ。

 2022年3月15日


伊東孝之 (北海道大学名誉教授)
加納 格 (法政大学元教授)
塩川伸明 (東京大学名誉教授)
富田 武 (成蹊大学名誉教授)
藤本和貴夫 (大阪経済法科大学元学長)
和田春樹 (東京大学名誉教授)
加藤史朗 (愛知県立大学名誉教授)
梶浦 篤 (電気通信大学教授)
豊川浩一 (明治大学教授)
長與 進 (早稲田大学名誉教授)
西 成彦 (立命館大学名誉教授)
羽場久美子 (青山学院大学名誉教授) 
毛里和子 (早稲田大学名誉教授)
吉田 浩 (岡山大学准教授)


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