エマニュエル・トッドの最新刊である『老人支配国家 日本の危機』を読みました。
この本の中でトッドは日本に対して核武装を勧めています。
これまで彼は何度も日本の核武装について発言していますが、日本側の質問者はいつも聞き流すだけで真剣に対応してこなかったのでは、と私は思っています。
そこで今回はトッドの主張に少し耳を傾けてみたいと思います。
トッドの議論を簡単にまとめると、「使用する場合のリスクが極大である核兵器は、原理的には自国防衛以外には使うことができない」ゆえに「『米国の核の傘』はフィクションに過ぎず、実は存在しないのです」というものです。
このような考え方は、トッドが独自に思い付いたのではなく、どうもフランスの核戦略の中心にある思想みたいです。
というのもつい最近、ハンス・モーゲンソーというドイツからアメリカに亡命したシカゴ大学教授の『国際政治』を読み返していたら、「核保有国Aと非核保有国Bとの間の同盟について特に適切なものとなる。Aは、Bとの同盟を尊重してまで、Cによる核破壊という危険にみずからさらすであろうか。」という文章が書かれていました。
この文章に適切な言葉を当てはめると「核保有国アメリカは非核保有国日本との同盟を尊重してまで中国(ロシア、北朝鮮etc)による核破壊という危険に自ら晒すであろうか」となりトッドの言葉と重なるのです。
そして、この問題を提起したのはフランスのド・ゴール大統領だったとモーゲンソーは書いています。
私もド・ゴール大統領やトッドが言うように「核の傘」というものはほとんど幻想だと思っていますが、だからといってそれが日本の核武装に直接結びつくことに対しては疑問を持っています。
では、なぜフランスが核武装をするようになったのかを見ていきたいと思います。フランスが核武装に踏み切ったのは1956年に起きたスエズ危機の強烈な体験があったからなのです。
続く