銀幕スターだった初代と、父が遺した映画のリメイクに挑む2代目。“モモケン”こと桃山剣之介を1人2役で演じる尾上菊之助(44)は「親子のつながりを見ていただきたい」とコメントしていたが……。
父は音羽屋の当代にして人間国宝の尾上菊五郎、母は富司純子、姉は寺島しのぶ。令和の歌舞伎界を背負う菊之助だが、以前はドラマへの出演は珍しかった。
「歌舞伎の道を極める真面目なタイプ。ただ、父の菊五郎さんは『破天荒さが足りない』『華や色気も勉強しないと』と漏らしていました」(音羽屋関係者)
それが、近年は「下町ロケット」(18年)などドラマに積極的に進出。「カムカム」で初の朝ドラ出演を果たした。アクション指導の中村健人氏が語る。
「モモケンの映画『棗黍之丞(なつめきびのじょう)シリーズ』の殺陣のシーンは、クランクイン初日に撮影されました。菊之助さんは、昼に動きをつけて夜にはもう本番、というタイトな日程でしたが、手を覚えるのは早く、形もお綺麗で。苦労されている様子はありませんでしたが、『歌舞伎は動きがゆっくりなので、スピード感が違いますね』と仰っていました」
初代と2代目のモモケンでは、動きも異なるという。
「初代は割とシンプルでしたが、菊之助さんも『2代目は派手にしたいね』と。構えを歌舞伎の見得っぽくしています」(同前)
轟監督役の土平ドンペイが明かす。
「『黍之丞、見参!』とポーズを決めた後に、ぴくっと1センチに満たないくらい、僅かに首が動くんですよ。それを見た時ゾクッと鳥肌が立ちました。『これやわ、これはできへんわ』と思いました」
そんな菊之助は13年2月に故・中村吉右衛門の四女・瓔子(ようこ)さんと結婚。同年11月には、長男(尾上丑之助)が誕生している。
ところが――。
「母・富司と“暗闘”が続いている。息子が嫁と一緒に家を出て行ったことが不満だったとされます」(前出・音羽屋関係者)
結婚後も、渋谷区内の実家を2世帯住宅にして、菊五郎と富司と同居していた菊之助。だが、16年11月、港区内の超高級マンションを購入する。延べ床面積は約110平米で、妻・瓔子さんと計4億円のローンを組んでいた。一方、実家の表札からは、菊之助の本名「和康」と「瓔子」の文字は消えている。
さらに、もう1つ理由が。
「姉・しのぶとの折り合いの悪さです。もともと、女性であることを理由に歌舞伎役者への道を絶たれたしのぶは、菊之助に比べて『落ちこぼれ感があった』とも公言している。そうした中、しのぶは今、フランス人の夫との間に儲けた長男・眞秀(まほろ)を立派な歌舞伎役者に育て上げようと、相当な熱の入れようです。ただ、“本流”の丑之助に比べ、眞秀は“傍流”。『皆、私と眞秀に冷たい』と母に泣きつくこともあり、富司も娘の味方になっているそうです」(歌舞伎関係者)
モモケンの主戦場・条映撮影所は東映撮影所がモデルだ。かつて、その看板女優だった富司。今、何を思うのか。声をかけたところ、
「東映の俳優会館とかでてきて、すごく、懐かしく見させて頂いています」
母との間に生まれた“暗闇”が切り裂かれ、ひなたの広がる日が待たれる。
source : 週刊文春 2022年3月17日号