白いスポーツウェアを着た男が、制服姿の男子生徒を殴り、蹴る――。4月20日にSNSで拡散されたのは、私立秀岳館高校(熊本県八代市)サッカー部で起きた暴力事件の動画だった。
同校サッカー部は、200名以上の部員を擁する強豪。2014年には全国大会に出場した。地元記者が語る。
「事件はサッカー部の寮で起きた。加害者は30代のコーチで、被害者は3年生の部員。異様なのは22日に部員の“顔出し謝罪動画”がアップされたこと。暴行を受けた部員らが『部内の暴力は日常茶飯事』という報道を否定したのです」
生徒を矢面に立たせる学校側の姿勢に批判が集まる中、20年以上サッカー部を率いる段原一詞監督(49)は日テレ系「スッキリ」に出演。「責任はすべて大人にある」「謝罪動画は部員が自発的に撮り、関与してない」と釈明した。
「だが、後に流出した部内会議の音声で監督は『被害者は俺』と発言。暴行動画を投稿した部員は『加害者』で『損害賠償請求とかいう話になる』。謝罪動画も監督の指示のもと撮影されたことが判明した」(同前)
それだけではない。今年3月には、入学を前提にサッカー部の寮に入った中学3年生A君が、先輩部員から殴られたとして退寮する事件も起きていた。A君の母親が小誌に明かす。
「3月28日に段原監督と話し合いの場を持ちましたが、『イジメをなくすのは無理』と。息子が寮内で部員の飲酒や喫煙を目撃しており、改善も求めたのですが、『お母さん、僕たち人間ですよ。24時間寝ずに見張れというんですか』と鼻で笑われた。暴行の被害届を出したことについても、『気分が悪い話ですよ』と言われました」
不信感を持ったA君は入学前の4月4日に辞退届を提出。だが入学前だったゆえに他高校に編入できず、窮地に立たされているという。段原氏の発言などについて秀岳館に事実関係の確認を求めたが、「この件についての回答は控えさせて頂きます」と回答した。
5月5日の学校側の会見でも段原氏の進退は明らかにされなかった。秀岳館高校の校長であり、同校を運営する学校法人八商学園の理事長も務める中川靜也氏(91)を訪ねると、約60分にわたり取材に応じた。
「実は、内部的にはもう監督は替わっています。保護者からも『あの監督のもとではやれない』との声が相次ぎ、十数年やっているコーチに監督代行を頼んだ。段原はサッカー部から外します。ウソをつき、世間を騒がせたし、自己擁護が目立ちすぎる。本来は自分から身を引くのが筋です」
しかし、段原氏自身に退職の意向は全くないという。
「彼には全国にサッカー人脈があり、多くの生徒が来てくれた。学校経営的にありがたかったのは事実。ただ、動画の件でも生徒は『段原先生にああせい、こうせいと言われ、怖くてやった』と言う。保身のために生徒を動かす人物に教壇に立つ資格はありません」
では校長は彼をどうするつもりなのか。段原監督は同校の校長補佐でもある。
「監督を外すのは校内人事なので私の一存で決められるが、教員として解雇するのは難しい。本人の暴行などは確認されておらず、解雇理由がない。本人も『解雇したら(不当解雇などの)裁判にかける』と。役職は外しますが、授業は続けることになります」
目下、ネット上で、中川校長と女子生徒たちとの“密着写真”の数々が注目を集めていることについては、
「おじいちゃん校長と慕ってくれるのが妙なかたちで言われている。まぁ、構いません(笑)」
と弁明。おじいちゃん校長の判断を、生徒も注視しているはずだ。
source : 週刊文春 2022年5月19日号