学研グループのDXを加速するためにデジタル事業部門を独立・分社化
EdTech事業の開発・構築とそれに関連するコンサルティング、グループ内外各社のIT関連サービスに関する企画・設計・開発・運用、そしてIT業界のベンチャー企業とベンチャーキャピタルに向けた投資・養成等、“デジタル”をキーワードにした幅広い事業を手掛ける株式会社Gakken LEAP。2021年12月に設立された同社は、教育業界大手の株式会社学研ホールディングスのデジタル事業本部が独立し、学研グループ内の重点テーマである「DX」と「グローバル」を担う新会社として誕生した。その設立に至る流れ、そして同社が目指す事業展開について、取締役CTO・山内秀樹氏に話を伺った。
「学研グループは教育分野で、すでに業界をリードする企業の一つと言えると思いますが、現時点で業界のDXを牽引する存在になれているかというと、ノーと言わざるを得ません。ヒトから直接ヒトへ、またはヒトからモノを介してヒトへ価値を届けることに大きな意義を認める仕事が中心となってきたため、業界自体のDXも遅れています。ですが、より個別最適な学びをより多様な環境の人へサスティナブルな形で届けるためには、もちろんDXが必要です。学研がこれをリードし加速させていこうということで、学研グループでは、長期経営方針として2030年にデジタル分野での売上を全体の40%超にまで引き上げるという目標を掲げました。また実際に、2025年までにデジタル分野に200億円規模の投資を行うという計画も進行中です。その旗振り役となりつつ、自らも主体的に新しいデジタルプロダクト/サービスを創出していく存在として設立したのが当社、Gakken LEAPです」(山内氏)。
同社の事業展開にあたって柱となる考え方が二つある。まず一つ目は、デジタルプロダクトの創出、サービス展開を内製化することだ。学研グループとしては、これまでも学習塾「学研教室」の約20万人のユーザーを対象にした出欠管理サービス『マナミル』、学研所属の塾講師がオンラインによる学習指導を提供する『Gakken ON AIR』など、リアルビジネスで築き上げたアセットやメソドロジーを活用したデジタルプロダクト/サービスの創出に取り組んできた。これらの開発・運用は、ベースとなるアセットやメソドロジーを持つ学研グループ内各社が、個々に社外とのアライアンスによって取り組んできたものだが、開発リソースを外部に依存するがゆえに、ユーザーニーズのキャッチアップやトライアンドエラーをスピード感をもって繰り返していくことが困難であったという。この課題の解決のために、Gakken LEAPでは、新たな人材を迎えながら内製できる体制を強化し、新規または既存のプロダクト/サービスの価値向上を図っていく。
一方で、教育分野におけるベンチャー企業やスタートアップ企業に対するM&Aや出資に関する働き掛けも、DXを推進する同社の活動軸になっていくという。これが二つ目の柱、CVCだ。
「デジタルを第一に考えながらも、デジタルをどうリアルに連結するか、ということも私達の考え方のベースとしてあります。学研には、75年以上にわたって積み上げてきた教育事業における実績、ノウハウ、そして信頼という強みがあります。また、その中でも、学びの場をリアルの世界で運営していることは最大の強みのひとつだとも考えていますので、単にデジタルでモノをつくるだけではなく、本当に必要なものをリアルの場に問いながら、デジタルの力を活用した新たなサービスをつくっていきたいと思っています。ですから、CVCを通じて仲間になってくださるデジタルの知見を持つメンバーと一緒に、学研というブランドや学研の持つアセットを活用しながら事業を開発することで、どういう化学反応が起こせるか、非常に楽しみです」(山内氏)。
約30万人の既存ユーザーに新たな学びを提案するための基盤ツールが強み
設立から間もない同社だが、具体的なサービスに関する様々なアイデアを早くも形にしつつある。その代表例として、「大人向けの資格取得支援サービス」を山内氏は挙げてくれた。これまで学研グループが顧客基盤としてきた幼児や学生からターゲットの裾野を広げていけることも、デジタルによる展開がもたらす大きなメリットだという。
「我々としては、デジタルによる新しいサービスを起案しながら、色々な人がチャレンジできる環境、チャレンジしやすい環境をつくっていかなければならないと思っています。子どもから大人、高齢者まで幅広い年齢層を対象に、これからの社会で必要な学びを、デジタル技術の活用によって、低価格ですぐに始められ、可能な限り短期間で成果が出て、そして親しみやすいプロダクトやサービスとして発信することで、学びの機会にアクセスするハードルを下げていきたい。そうすることで、多くの人が自分に最適な学びを手軽に得られるようになり、自分のやりたいことを自分で発見できようになる。それが私たちの目指すところです。そしてこれは、日本国内に限った話ではなく、グローバルで通用する考え方であるはずです」(山内氏)。
これらの事業展開を進める上で、同社の最大のアドバンテージとなるのが、学研グループのサービスを利用するためにユーザーが取得する『Gakken ID』だ。既に約30万人のユーザーが利用しており、リアル・デジタルを問わずサービスへのエンゲージメントを高めるための他社にはない下地となっている。
「学研グループ内の幅広いサービスを繋げる、そして一人のユーザーに対して様々な価値提供を可能にするのが、この『Gakken ID』です。例えば、学研教室に通うユーザーに対して他の学研サービスを提案する場合の送客ツールとしても、またリコメンドのもととなるデータの管理ツールとしても、この『Gakken ID』は非常に有効です。幼児期から学生に、そして社会人から高齢者へと、ユーザーのステージが変化する中で最適な提案ができるため、学研グループのサービスをより際立たせるツールになると、私たちは考えているんです」(山内氏)。
一方、現代においては、学びの個別最適化が重要になると語る山内氏。デジタルによる技術革新も進む世の中において、IDに付随したユーザーごとの“学びの歴史”をデータとして管理することで、その興味関心、志向性に適したサービスを提供できる。そんな自信を見せる山内氏の言葉には、今後の同社の事業展開に関する可能性の大きさが表れていると言えるだろう。
高い価値を提供する自社プロダクトの企画、開発に全面的に携われるやりがい
教育のデジタルサービスを内製し展開することを目指す同社では、その事業を支えるエンジニアの人員増強が急務となっている。自社に迎える人材に対して、アピールできるポイントはどこにあるかという質問に対し、山内氏は発足から間もない組織ゆえの魅力、そしてそこで活躍するための姿勢について次のように答えてくれた。
「開発スタッフが関わる業務領域においても、使用言語やプロジェクト管理方法等、決まった形があまり確立されていないという特徴があると思います。そこをつくり上げていくことは、大変さと同時にやりがいも感じていただけるはずです。また、SIer企業における業務のようにプロジェクトマネジメントが業務の中心になるのではなく、自社プロダクトの開発に関する上流工程から下流工程まで、さらに言えばサービス企画までを担うことができるところが、当社の業務に関するアピールポイントです」(山内氏)。
開発体制や管理方法、そして組織整備に関しても、新たに迎え入れるメンバーたちと共につくり上げていく。大企業としてのブランド力や既存アセットを生かした仕事ができる一方で、完成されていない組織において自ら考え、行動していく主体性も必要になるという意味では、ベンチャー企業と同様のマインドセットも求められるといえよう。安定感とベンチャーマインドの両面を実感しながら、デジタルによる新たな価値創造という意義ある業務に魅力を感じ、大きなやりがいと使命感を持って取り組めるマインドこそが、同社の求める人材に最も必要な力、ということになるだろう。
最後に、読者の皆さんに向けて、山内氏は次のようなメッセージを送ってくれた。
「コロナ禍によって、リアルの世界を中心に回ってきた教育分野でも、その持続可能性を強化するため、デジタルに対するニーズは高まる一方です。学研グループでも、“学びを止めてはならない”という社会的使命感を強く意識しながらサービス提供を行ってきました。その表れとして、全国で一斉休校となった2020年春にはグループの有料デジタルサービスを開放し、誰でも無料で学べる環境を提供しました。次にくるのは、デジタルの力で学びを個別最適なものにすることと、多くの人が多様な学びの機会に手軽にアクセスできるようにすることです。こうした使命感に共感しながら、30万人というお客様との接点を生かした新しい発想によるプロダクトを手掛けてみたい。そんな思いを持つ方には、是非当社での仕事にチャレンジしてほしいと思います」(山内氏)。
株式会社 Gakken LEAPの社員の声
30代前半
2015年04月入社
40代前半
2021年12月入社
ユーザー様のお声から課題を見つけ、チームで知...続きを読む
40代前半
2021年12月入社
外注していた時とは異なり、ユーザーの声を直接お...続きを読む