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議員に当選しても「手取り15万円」、夜間にバイト…地方議会で「定数割れ」深刻

読売新聞 / 2022年5月5日 19時0分

 地方議会の選挙で立候補者数が定数に満たない「定数割れ」が深刻化している。2019年の統一地方選では、前回選(2015年)の倍となる8町村だったが、読売新聞の調べでは、統一選以降の約3年間に行われた市町村議選で少なくとも10市町村に上っている。議会側は報酬アップなどで対策を進めるが、解決策は見いだせておらず、「なり手不足」が浮き彫りになっている。(福田友紀子)

段階的削減

 4月12日告示の兵庫県神河町議選(定数12)。立候補者は11人で、初の定数割れとなった。町の自営業女性(62)は「昔は各地区に議員がいたのに。地元をよく知る議員が減れば、町にとっても損失」と嘆く。

 05年に二つの町が合併して誕生した神河町。過疎化が進み、人口は1万767人(3月末)と合併時から2割減少した。町議会は16だった定数を段階的に削減してきたが、今回は定数割れの予兆があった。現職の死亡などで3人の欠員が続いており、なり手不足に加え、目立った争点もなかったからだ。

 無投票当選した11人のうち9人が60歳以上。ある町議は「引退するにも後継者がいない」と焦りを募らせる。成人式で実行委員を務めて町政に関心を持ったという新人の木村秀幸町議(36)は「町民は町政に関心が薄く、誰が議員になっても一緒と思っている。若い自分の活動を通じて議会への関心を高めたい」と語る。

手取り15万円

 議員のなり手不足は、特に小規模な町村で深刻だ。

 総務省や読売新聞の調べでは、19年統一地方選で無投票当選者の割合は、町村議選で23・3%(93町村)と過去最高となり、8町村で定数割れとなった。定数割れは11年統一選が3町、15年統一選が4町村と増加傾向にある。

 理由には人口減や高齢化に加え、町村の議員報酬の低さがある。

 和歌山県有田川町では、1月の町議選(定数16)で立候補者15人と初めて定数割れした。現職5人が直前に不出馬を表明した影響が大きかったが、最年少で2期目の椿原竜二町議(32)は「働き盛りの若者が仕事を辞めて議員になるにはハードルが高い」と指摘する。

 議員報酬は月23万円で、税金などが引かれると手取りは約15万円。椿原議員は「独身なので何とか生活できる」というが、議員活動の資金も不足し、夜間にアルバイトを始め、現在も議員以外の仕事を続けている。

報酬増の試み

 こうした状況を改善しようという試みもある。

 8月に村議選を控える長野県中川村議会(定数10)は、月額報酬(17万5000円)を35〜59歳に限って年代別に1万5000円〜7万1000円増額する条例案を3月に可決した。

 村議選は10年から3回連続無投票で、現職は全員が60歳以上。定数割れが現実味を帯び、村民アンケートの結果を踏まえ、子育て世代が立候補しやすい環境を整えたという。

 しかし、報酬だけでは解決に至らない例もある。

 長崎県 小値賀 おぢか町議会は15年3月、月額報酬(18万円)を50歳以下限定で30万円に増額。若者の立候補を促す狙いだったが、翌月の町議選に50歳以下は名乗りを上げなかった。「金目当てで議員になるのか」との批判もあったといい、関連条例は18年3月に廃止された。

 長野県 喬木 たかぎ村議会では、17年の村議選で無投票となった後、会社員などの仕事との兼業をしやすくするため、議会の一部を休日や夜間に開催。20年度からは報酬も引き上げた。21年の村議選3か月前には、現職が集まって進退や後継について異例の情報共有を図ったが、村議選では定数12に立候補者は10人。欠員を補うため今年1月の村長選と一緒に再選挙(欠員2)を行ったが、立候補者は1人だった。

地方政治関心低く

 明治大の牛山久仁彦教授(地方自治論)の話「住民の地方政治に対する関心の低下や魅力がないという問題が、なり手不足の根本にある。報酬の低さは課題だが、議会が出向いて住民と意見交換するなど、議会への関心を高める努力が必要だ。会社員や公務員が立候補して落選しても復職できるような法整備も必要になるだろう」

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