ここのところ、またワイドショーの話題は、芸能界の不倫のニュースで持ち切りになっています。それにしても、マスコミにすっぱ抜かれる時期が集中するというのは不思議です。不倫強化月間か何かでしょうか?
ところで、不倫も恋愛もこじれて大ごとになる原因は、たいていは優柔不断さからくる三角関係のもつれだったりしますよね。今回は、80年代の大ヒットラブコメ『きまぐれオレンジ☆ロード』の主人公であり、“天才的優柔不断ニスト”の春日恭介から優柔不断の極意について学んでみたいと思います。
『きまぐれオレンジ☆ロード』は、「週刊少年ジャンプ」(集英社)の黄金時代(1985~1995年頃まで)の作品でありながら「友情・努力・勝利」といういわゆるジャンプ三原則ではなく、「優柔不断・ツンデレ・三角関係」という、ラブコメ三原則を盛り込んで大ヒットとなった、まさしくラブがコメっている作品です。
主人公・春日恭介は、パッと見は至って普通の中学生。しかし、実は超能力を持つ一家の長男。妹が超能力を使ったところを他人に見られたため、引っ越しを余儀なくされ、高陵学園中等部に転校してきました。
ヒロイン・鮎川まどかは、若い頃の中森明菜をイメージさせる、ちょっとツッパってるクールな美人。授業をサボったり、タバコを吸ったり、飲酒したりする不良中学生なのですが、実は成績優秀で、音楽の才能もあるというミステリアスな存在。
サブヒロイン・檜山ひかるは、まどかを姉のように慕う、かわいい妹分。まどかとは真逆の天真爛漫な明るい性格で、恭介に一目惚れしたらもう一直線。「せんぱい」「ダーリン」などと呼んでガンガンアタックし、半ば強引に恭介を周囲公認の彼氏にしてしまいます。
ラブコメで不朽の名作と呼ばれている作品には「三角関係」がつきものです。本作でも根幹をなすのは、恭介・まどか・ひかるの三角関係。そして、その三角関係を引き起こす原動力となっているのが、恭介の圧倒的な「優柔不断」さです。恭介には「決断力」はまったくありませんが、「優柔不断力」が人並み外れているのです。
とにかく、恭介は絶対に決断しません。ひかるは恭介のことを完全に彼氏だと思い込んでいますが、恭介自身はひかるのことを彼女だと肯定もしないし、否定もしない。まるで政治家の答弁のようなスキルで、結論を先延ばしにします。そのため、ただでさえポジティブなひかるの勘違いが加速していきます。
恭介自身は最初からまどかしか眼中にないのですが、ひかるに気を使って、それを悟られまいとします。さらに、まどかも実は恭介のことが好きなのですが、妹分のひかるがいる手前、恭介に対して素直になれず、持ち前のヤンキー魂を発揮し、ツンツンしてしまう……。そう、まだツンデレという言葉がない時代にすでにツンデレを標準装備していたヒロイン、それがまどかです。リアルタイムで読んでいた読者でも、まどかの持つツンデレ属性のとりこになった人は多いのではないでしょうか。
本作のストーリー進行上、あまり意味がないと言われることが多い恭介の超能力者設定も、実は役に立っていました。ひかるとのデートが入っている日に、まどかともデートすることになってしまう……。そんな状況下、テレポーテーション能力を駆使して瞬間移動を行い、不可能と思われたダブルブッキングデートを成立させてしまうのです。こういった超能力で、恭介は修羅場となりそうなピンチを幾度となく乗り越えた結果、三角関係はさらに泥沼化していきます。さすが「春日恭介」とググると「春日恭介 クズ」ってキーワードが出てくるだけのことはありますね。
そんな感じで、まどかのミステリアスでツンデレなかわいさと、ひかるのピュアで元気で一途なかわいさ、どっちにも決めることができない美少女両天秤状態、『ドラクエ5』でいうところのビアンカとフローラみたいな感じですが、そんな甘酸っぱくもぜいたくな悩みを疑似体験しつつ、恭介の当代一といわれる優柔不断さにイラッとさせられながら読むのが、このマンガの正しいたしなみ方といえます。
もちろん、三角関係に永遠はありません。いつか終わりが来るものです。本作でも、ラストシーン近くで、ついにひかるが、恭介とまどかが実は両思いだったという残酷な真実を知る時が来ます。その時のひかるの表情は、かつてない完全ブチ切れ状態で鬼の形相。そのセリフがまた、実に痛々しいのです。
「あたしはなんなの…!? たんなるピエロだったわけ…!? 3年間も…ずっとみんなにだまされてきたってわけ…!?」
はい、そうです。3年間の見事なピエロっぷり、お疲れさまでした! このシーンを見た読者全員が、そう思っていたに違いないのであります。
そして、最終巻の有名なクライマックスのシーン。アメリカ留学が決まったまどかが今まさに飛び立とうとしている空港のシーンで、すべてを知ったひかると恭介が対峙。土下座する恭介、そしてひかるの強烈なビンタ。呆然と立ち尽くすまどか……これぞ、まさに修羅場です。ちなみにこのシーンは連載時、単行本、文庫本などでそれぞれバージョンが違っており、文庫本になると描き下ろしのシーンが追加され、修羅場のシーンが長くなっています。修羅場のシーンを描き下ろしでロングバージョンにしたマンガなんて、本作だけかもしれません。
というわけで、超能力を駆使した恭介ですら三角関係の修羅場から逃げることができなかったわけで、優柔不断もほどほどにしないと、身を滅ぼしますよ。「不倫はダメ。ゼッタイ。」ということでした。芸能人のみなさんは『きまぐれオレンジ☆ロード』を読んで、そのことを学ぶべきですね。
(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん)
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