このところ、バブル入社をターゲットとした中高年のリストラが頻繁に行われています。大企業に入社できたら一生安泰と言える時代は終わってしまいました。
まだ若いうちであれば「元・大企業社員」の肩書は活かせますが、歳を取るほどつぶしが利かなくなります。どのタイミングで「ぬるま湯」から出るべきか、悩ましいところです。
「成熟技術」では自分のスキルが活かせない
企業口コミサイトの「キャリコネ」には、大手のホワイト企業に勤務していながら、後ろ髪を引かれるように退職した人たちの書き込みが見られます。リコーの研究開発部門で働いていた20代後半の男性は、会社を辞めて転職した後で、こう振り返っています。
職場環境はとても良好で、上司にも気軽に相談しやすい環境。残業もほとんどなかった。給与や待遇、福利厚生には全く不満はなく、いわばホワイト企業なのに、本当に辞めてしまっていいのかという葛藤が大いにあった・・・
それなのに、なぜ退職に踏み切ったのか。男性は次の2点を動機にあげています。
・社員の平均年齢が高く、自分が中堅やベテランになったときに、人員が著しく縮小してしまうことに不安があったから。
・従事した仕事内容が成熟技術で、新しい技術開発をすることが将来的に難しく、既存技術のマイナーチェンジでしかエンジニアとしてのスキルやアイデアを活かせないと感じたから。
過去のリストラや採用抑制で、人員構成がいびつになっていたのでしょう。コピー機という技術の将来性にも、不安を感じたと見られます。最終的には「自分で仕事を創り出したい」という意欲が高まって、転職を決めたようです。
「何年も変化のない仕事」には耐えられない
問題が顕在化する前に退職するのは、なかなか勇気のいることです。将来は予測した通りになるかどうか、確実でないからです。周囲の反対もあったことでしょう。
しかし事態は、この男性が予想した通りに進みました。ペーパーレス化の進行と事務機器需要の減少を踏まえ、競合の富士ゼロックスが再編されるニュースが流れています。
リコー自身も2018年2月22日、米販社の減損処理によって赤字に転落するおそれがあると報じられています。見切りをつけた男性の判断は正しかったようです。
ハウス食品を退職した20代男性も、「会社自体はホワイト企業」「社内の雰囲気、環境は私にはもったいないくらい良かった」としつつ、退職を決めました。
業務用営業としての仕事内容は、これから先、何年歳をとっても何も変化のないものだと感じました。将来の自分がどうなりたいか、それを考えてから大手に入ることを事前に熟慮しておくべきだった・・・
「世間体で決めた就職先」を、いつ見直すか
ある外資系航空会社を退職した20代男性も「勤務環境は決して悪くなかった。むしろ、世間によるホワイト企業に近い企業だった」と明かしています。
個人的に新たな挑戦がしたいという考えで仕事をやめました。私が物足りないんじゃないかと思う部分は、仕事のダイナミックさです。毎日同じことを繰り返すのに飽きてしまいました・・・
社会人経験のない学生が、待遇や世間体で就職先を決めること自体は、それなりに合理性のあることです。しかし「ちょっと違うな」と思ったら、周囲を見回してみる勇気も必要でしょう。人生は一度限り。自分の人生は、自分で生きていくしかありません。
ネットのお悩み相談をウォッチするコラムニスト。