もう10年も前か。NHK大河ドラマ「平清盛」を思い返す。時代の改革者たる若々しい清盛像に共感し、平家ゆかりの地ならずとも日曜夜が待ち遠しかった。ところが、ことしは攻守一転した▲三谷幸喜さん作の「鎌倉殿の13人」。源頼朝を軸とする物語なので仕方ないが、平家は悪役か腰抜けだ。老醜をさらす清盛は早々と死し、次回はもう壇ノ浦らしい。少々平家に冷たいと思いつつ、軽妙かつシリアスな三谷流の群像劇が毎週楽しみに▲広島人として注目する脇役が元劇団四季の栗原英雄さん演じる大江広元だ。かの毛利元就の祖先で、広島の地名の由来といわれる。劇中では冷静な助言で頼朝を支え、時に力を持ち過ぎる味方を冷徹に排除する一面も▲司馬遼太郎は広元を「サラリーマンの元祖」と評した。戦後10年、新聞記者時代に出した随筆で。権謀も保身も達人だが自ら出世は企てない―。そんな人材が手本とされる時代だったか▲防府市の毛利博物館で、78歳まで生きた広元が愛用したむちを見た。ドラマに合わせた企画展。栗原さんも訪れ「毛利氏の祖先を演じられ光栄」と語ったそうだ。三谷版広元はダークサイドが過ぎぬよう、お願いしたくもなる。