2022.05.05
# 週刊現代 # 本

岩下志麻が明かす…今も語り継がれる名作映画『桜の樹の下で』の“ラブシーン”はこうして生まれた

4月30日に8度目の命日を迎えた作家の故渡辺淳一氏。『ひとひらの雪』や『失楽園』などの作品が映画化され上映当時は一大ブームとなったが、岩下志麻氏と津川雅彦氏が主演をつとめた『桜の樹の下で』も印象に残る作品だという。

当時、東映の社長だった岡田茂さんが原作に惚れ込んで映像化にこぎつけたというこの作品の撮影秘話を岩下志麻氏、同映画の撮影監督を務めた林淳一郎氏、そして映画評論家の樋口尚文が語った。

私にとっては特別な作品

樋口 そうしたディテールもさることながら、岩下さんと津川さんの激しいラブシーンも大きな見どころです。大胆な露出をしていたのは七瀬さんだけで、岩下さんは着物の裾から足が露になる程度。

ただ、それだけでも十分に艶が出ているんです。印象に残っているのは、別れを切り出す菊乃に、遊佐が「もう一度したい」と言って愛を交わすシーン。二人が絶頂に向かうにつれ画面が暗くなり、果てる時は岩下さんの表情もほとんど見えなくなる。

映画『桜の樹の下で』のDVDパッケージ
 

 『桜の樹』は、岩下さんの気品ある姿をどれだけ効果的に演出できるかが重要でした。だからこそ、観客が見たいものを敢えて見せずに、想像させたのです。

遊佐に「抱いて!」と迫る場面も出色です。抱き合う二人がソファーの陰に崩れ落ち、画面では岩下さんの手の先しか見えないようにしたのも、そういう意図からでした。

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