「通常国会の会期中なのに、突然秘書官が交代したのです。ロシアのウクライナ侵攻や北朝鮮のミサイル発射など、防衛省が緊迫している最中のことでした」(防衛省担当記者)
鬼木誠防衛副大臣(49)の秘書官・A氏が4月8日付で交代したことが波紋を……。
西日本銀行勤務を経て、福岡県議を10年間務めた鬼木氏。12年の衆院選で初当選して、現在4期目だ。
「夫婦別姓に強く反対するなど保守的な政策で知られています。昨年3月には国会で、環境相時代の丸川珠代五輪相を『各国首脳からアジアンビューティーと呼ばれ人気があった』と紹介したこともあった。森喜朗氏の女性蔑視発言の直後だっただけに、容姿に言及した鬼木氏の発言は物議を醸しました」(自民党関係者)
昨年10月、岸田政権の防衛副大臣に就任したが、
「党の国防部会ではほぼ見たことがない。森山派の所属ですが、派閥の割り当てで、副大臣に就いたとされています」(同前)
そんな新副大臣の秘書官に就いたのが、前副大臣からの続投となるA氏だった。防衛省のHPでは、〈随処作主(自ら主体的に動くこと)〉という臨済宗の言葉を掲げ、副大臣秘書官の仕事を〈いかに副大臣の納得・了解を得るか、政治家としての知見に基づく副大臣からの示唆・指示をどうやって省の政策に盛り込んでいくか、毎日が勉強です〉と紹介している。
「A氏は現在40代。気さくな人柄ですが、仕事には真面目で誇りを持っています」(防衛省関係者)
ところが――。
A氏はある日、上司から突然、交代を告げられてしまう。周囲には、
「クビになりました」
と無念そうに報告していたという。なぜ彼は“クビ”になったのか。別の防衛省関係者が明かす。
「防衛省では今、自衛隊福岡病院の建て替えが進められています。今年度予算にも準備工事費2000万円が計上された。鬼木氏は地元の支援企業から入札情報について聞かれたそうです。そこで事業を発注する九州防衛局へ連絡しようとしたのですが、A氏は『連絡すべきでない』と慎重な立場だった。“副大臣のご意向”に従わない姿が不満だったようで、A氏の交代に繋がったと見られています」
結局、鬼木氏自ら、九州防衛局の担当課長に電話し、支援企業が直接、挨拶に行くことを伝えたという。
防衛省の政務三役経験者が指摘する。
「副大臣が外局の課長に業者のことで連絡するなど考えられない。まして防衛省は上下関係が特に厳しい組織。上司の連絡は即、命令と受け止められます」
石破茂元防衛相も続ける。
「政務三役がそうした電話は掛けてはならないし、間違っても『よろしく』なんて言ってはいけません」
当の鬼木氏はどう答えるのか。電話で直撃した。
――A氏交代の理由は?
「春の交代ということで」
――自衛隊福岡病院の建て替えを巡り、A氏の対応が不満だったのでは?
「それはないです。(支援企業から)問い合わせがあるから、どう対応をするかAさんと協議して、Aさんの言う通りにしてきたんで、トラブルはありません」
――九州防衛局に鬼木氏が電話をした?
「『挨拶に行きたいって言ってるからよろしくね』みたいな感じで、電話をしたことがあると思います」
――秘書官交代は鬼木氏の意向か?
「それは誰かを責める話になるから差し控えます」
改めて鬼木事務所に見解を求めたところ、企業1社を九州防衛局に紹介したことを認め、「問題になるような行為ではないと考えております」などと回答。
また、鬼木氏がA氏に不満を抱いたことが秘書官交代に繋がった点については、鬼木事務所も防衛省も「そのような事実は承知しておりません」と回答。ただ、防衛省によれば、第2次安倍政権以降、通常国会会期中に政務三役の秘書官が交代した例はゼロだった。
職務に忠実な秘書官を守ることができなかった。
source : 週刊文春 2022年4月28日号