ラヰカ式蛇足的創作論

河葉之狐ラヰカ

俺には舌を回す暇なんてない

 まず一つ、人によっては不快になる。引き返すなら、今だ。






 創作論を語るのは正直苦手だ。

 俺は基本的に自分の手札を見せるのが嫌い。なぜならそれは俺が持っている兵器だからだ。ちょっとした単語の選び方、そのコツを知られたら簡単に模倣される。けれどいつまでも自分の殻に閉じこもっていても何も変わらないので、自戒を込めてやや素に近い態度で話す。


 繰り返すが、人によっては不快になる。それを踏まえておいてなおコメントでくだらない文句を垂れるくらいなら、それこそそのタイピングを執筆のために行った方が、まだマシだ。






 さて、まずは俺が創作するにあたって気を付けていることを書き連ねていく。面倒なので箇条書きだ。


・人の仕草を見る


・言動を覚えておく


・自分ならこうする、といったことを一人のキャラにさせるのではなく、分担させる


・理由がなければそれをしてはいけない、という縛りを捨てる 人間は突拍子もなく、意味不明な行動をとる


・なんでもいいが、何か一つ揺るがない自分の答えを見つけておく


 取り留めもないが、重要なことだ。


 まず人の仕草を見るということだが、とりあえずこれについて語ろうか。他はまあ、自分なりの解釈でいい。もちろん、この仕草だって理解は自由でいい。鋳型にはめた文章や世界観、物語なんてつまらない。


 これは漫画でも映画でも、リアルなことでも自分の癖でもいい。心理学的だとか、そういう難しいことではない。なにか癖がある。それだ。


 例えば俺は、スマホを片手でいじるとき、小指を支えにする。そのせいで、俺の両手の小指は曲がっている。

 そういった、些細なこと。そんなものが何の役に立つと思ったら、もうその時点で俺とは波長が合わない。

 くだらない、馬鹿げている、意味がない、効率的ではない──そんなもの百も承知。俺は別に、作家になるまでのタイムを競うRTAをやっているわけではない。楽しいを本気で楽しむだけだ。悪いか?

 話を戻す。

 こういった「その人の何気ないが、繰り返される行動」。これをキャラに持たせる。例文はこうだ。


×


 高校二年になって、クラス替えをした教室には制汗剤と香水の匂いが漂っていてくらくらした。度を過ぎているというのは明らかで、過ぎたるは猶及ばざるが如し──とは誰の言だったか。

 席について、コードが絡まるのが嫌いなので無線のイヤホンを耳にはめて鼻を摘んで、何気なくそのまま適当なナンバーをかけた。

 視線が彷徨っているのは、面倒なやつに目をつけられたくないから。

 ふと気づくのは、そういった一見明るそうな奴らの小指は曲がっていたり、歪んでいること。なにか、重いものを支えるバイトをしているのだろうか。

 なんだ、普通の勤労学生じゃないか。

 そんなとき、スマホから通知音がして音楽が遮られた。腹を立てつつスマホを手に取り、小指を台座に操作した。台座にされてなれたのか、小指は文句を言わない。関節の痛みはここ最近ないし、まあいいかと思った。


×


 何気ない動作を取り入れて、「主人公の勘違いを、主人公自身の癖、そしてそれはスマホをいじるどこか閉鎖的なコミュニティに閉じこもり仲間意識を持つ擬似的な仮想の群れ」を描いた。


 なお、前半関係ないじゃないかと思われただろうが、果たしてそうだろうか。あえて答えは言わない。


 さて、皮肉めいた文章だったが、読み解いて答えがわかると「確かに、じゃああいつらも本当は度胸なんてないのか」という理解、あるいは「便利なツールに適応した現代人」という理解になる。このあたりの解釈や解像度は、インプットに比例する。


 だから俺にはとにかく舌を回す暇なんてない。馬鹿げたアンチ文を書いて悦に浸る暇なんてないんだ。とにかく読んで、たくさん書く。文章だろうと、イラストだろうと上手くなるにはそれだ。文句なんて言ってなんになる? それが生産か? 違うだろ、それはただの脱糞であり放尿、あるいは嘔吐だ。そんなものは生産ではなく排便。しかも、肥やしにもならないただの有毒化学物質だ。上等な料理にはちみつをぶっかけるほうがまだいい。食えるんだからな。


 俺はこのように、ここでは己を包み隠さず、『自戒の意味で』創作論を開示していく。


 喧嘩腰に思えたのなら、申し訳ない。ただ本来的に俺は闘争心が強く、また縄張り意識が異常なほどにある。食うか食われるか、常にそう考えている。


 俺が欲しいのは傷を舐め合う上っ面の『相互さん』じゃない。


 競い合い、殴り合い、斬り合う好敵手が欲しい。


 そして、くだらない弁舌とも言えない、支離滅裂な怪文書的なクソを垂れ流す害敵など論外だ。


 幸い、俺のフォロワーはそんな「相互さん」ではないだろう。好敵手だと思っている。だから、絶対に忖度なんてしない。表層では言葉遣いは綺麗だし、そして優しく接するが、おそらくは互いに内心「食ってやる。こいつの技術を、知識を、力を」と思っているだろう。

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