兇星のミラスラグナ ─ 天彗のウルド ─

河葉之狐ラヰカ

Prologue 刃鋼の民

Introduction

 その身は、鋼からなる。

 鋼鉄の骨を持ち、鋼糸の筋肉でその身を鎧う、鋼の肉体を持つ者。造られた魂ではない、生まれ持った自我を持ちそれを保持して連続性を持続させる金属人間種族である、ヒトと定義できる生命体。

 人は彼らを、そして彼らもまた自らを刃鋼の民はがねのたみと、そう呼んだ。

 まだ人々が力を持つ以前、刃鋼の民は勇者だった。危険な原住生物ルグレアンから、竜から人々を守っていた。鋼鉄の拳がそれらを打ち砕き、彼らが築く要塞が大勢を守った。

 けれども彼らが持つ人知を超えた力は、恐れと妬みを生んだ。

 時代が流れ、便利な兵器が生まれるとより強大な力を欲した種族は徒党を組み、大勢が彼らに攻撃を仕掛け、狡猾にその命を狩り取り続けた。次第に刃鋼の民は説得による和解をやめて抗戦したが、減り続ける味方と増え続ける損害から抵抗を諦めて、隠れるか逃げるかしたものの、ヒトは残酷にもそんな刃鋼の民を見つけては殺し続けた。

 とうとう絶滅した刃鋼の民だったが、けれど賢い人々は彼らの体を解剖し、その知見から得られた機械生命体を生む。

 その機械生命体である最初の一人目である『マキナ・イヴ』から造られたのが機巧人形、マキナータであった。

 一つの種族を根絶させたことを悪びれもせずのうのうと暮らすヒトと、造られた女の命と、そしてその人形ヒトガタ

 異質でいびつな、奇妙な共生はかろうじて安定を保っている。

 けれど。

 ときとして、マキナータもまた先祖返りをする。

 そう、先祖へ──命を弄ばれた母親の、そして母の元となった刃鋼の民の恨みを代弁しようと、そのように復讐といった行動をするのだ。

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