#入管医療訴訟の内容
2021年1月、大村入国管理センターに収容されているネパール人男性Aさんが、被収容者への適切な医療を求め、国を訴えました。
Aさんは2019年4月に大村入管内で左足の付け根(左股関節)を負傷し、すぐに医師の診察を求めましたが、彼が医師の診察を受けることができたのは、左足を負傷してから1週間後でした。その時には、Aさんは左足を引きずって歩く状態でしたが、大村入管はレントゲン検査を受けさせませんでした。
その後、Aさんの容態は悪化。Aさんが外部医療機関の受診を希望しても、大村入管はAさんの希望を無視し続けました。Aさんが外部医療機関を受診できたのは怪我から4ヶ月後、車椅子で移動するほど病状が深刻化してからのことでした。
我々はこの訴訟を通して、Aさんが適切な医療措置を受けられるようになることはもちろん、この裁判がブラックボックスと呼ばれる入管の実態を明らかにし、国が入管施設に収容されている「人を人として扱う」ようになることを求めます。
ネパール人男性Aさんの経過と裁判
2018
年
10月
9月
月日
東日本入国管理センターに収容される。
この時点で、健康上の問題はなかった。
仕事の都合で在留資格が更新できなくなる
出来事
2019
8月14日
8月7日
6月上旬
5月8日
4月12日
4月4日
1月
8月30日
痛みが生じてから4か月後、初めて外部医療機関の受診が認められる。
大村入管施設内でのレントゲン検査で異常を認める。
Aさんの症状は悪化し、松葉杖を使わないと歩けない状態になった。
初めて大村入管施設内でレントゲン検査を受ける。
初めて入管センター内の医師の診察を受ける。
左股関節に痛みを感じ、大村入管の職員に医師の診察を求める。
大村入管センターに移収される。
「特発性大腿骨頭壊死症」と診断される。
2020
2月
一日のほとんどをベッドの上で寝たきりで過ごすようになる。
2021
1月
Aさんは国に対し、国家賠償請求訴訟を提起。
〇Aさんの症状
・左足全体の動きが徐々に悪くなっている。
左足全体がマヒしたような感覚。
左足全体の血行が悪くなり、皮膚がむらさき色になっている。
・大村入管内はバリアフリーになって居らず、段差を通る度に振動
で患部が痛むため、移動するのを避けがちになり、日の光も滅多
に浴びることができていない。
・就寝中も、左足の股関節が痛みで目が覚めてしまい、長くても
3時間ほどしか睡眠が続かない。
〇最近では排尿障害(尿が出ない)も生じている
・排尿障害が生じ、常時、膀胱内からカテーテルを通し、採尿
バックに排尿している状態。
・ほとんど寝たきりの生活が排尿障害の原因と思われる。
〇大村センター内での生活
・現在、大村センター内のDブロックにただ一人収容され、
24時間職員の管理の下、看護師の介助を受けて生活。
・プライバシーはない状況。
・トイレ、シャワーにも入管職員の介助が必要な状態。
・シャワーは週に2回しか浴びることができない。
〇その他Aさんの現状
・ストレスから円形脱毛症を発症し、脱毛を隠すために長髪
にしている。
・体重も79.6キロから66.5キロまで、13キロも減
少している。
Aさんの現在の状態
意見陳述書のポイント
・国が人を人として扱うようになることを求める
裁判の意義は?
・国内の入管施設における医療処遇の問題を公に訴え、改善を求める
・適切な時期に適切な検査を受けさせなかった
入管の対応の問題点は?
・Aさんの病気の診断が遅れたことで、症状が悪化した
・Aさんの希望や意見を聞かずに、大村入管が医師と治療方針を決めてしまう (インフォームドコンセントの問題)
・日本の入管収容施設では被収容者の生命及び健康を軽視した医療処遇が当然のように行われている。
・東京オリンピックの開催に向けて、国は退去強制令書の発布件数を増加させた。
(送還の予定が立っていない外国人や難民申請者を収容することは違法)
一方、新型コロナウイルスの影響で、最近の仮放免許可申請は通りやすくなった。
・必要性、相当性、比例性を全く問わずに長期かつ無期限に収容することは、憲法第
18条が禁止する「意に反する苦役」や、拷問等禁止条約第1条第1項が禁止する
「拷問」にあたる。
この事件はAさんだけに起こった不幸なできごと、特異な出来事ではない
国は被収容者に対して、「その場しのぎ」な対応を続けている
そもそも長期収容を改善する必要がある
日本の入管政策の問題点
>第1回口頭弁論:2021年4月26日
>第2回口頭弁論:2021年7月19日
>第3回口頭弁論 :2021年11月15日
> 次回口頭弁論:2022年2月7日15:30~
場所:長崎地裁
裁判日程について