ウクライナで募るロシア憎悪=今後に禍根、隣国共存に苦慮
このニュースをシェア
【4月30日 時事通信社】ロシアの軍事侵攻が続くウクライナでは、2カ月超に及ぶ激しい戦闘が刻んだ禍根で、ロシアへの憎悪が一段と募っている。「ウクライナとロシアが共存するには、ロシアが変わる必要がある」。武力を信奉するプーチン政権が横暴な姿勢を強め、和解が難しくなる中、ウクライナ国民は同じスラブ民族の「兄弟国」でもある隣国との距離感に苦慮している。
ウクライナ西部リビウの街角で東方正教会の復活祭(イースター)の集まりをのぞくと、国内各地からの避難民が歓談していた。しかし、記者がロシアの印象を尋ねると、厳しい表情で辛辣(しんらつ)な声が返ってきた。
両親を残し南部ミコライウから逃れたビタリさん(37)は「世界で何か悪いことが起きる時は、大抵ロシアが絡んでいる。あれもこれも欲しがる帝国主義的な思考は捨てるべきだ」。ロシア人の同僚も多く「ロシア人を全員嫌っているわけではない」と言いつつも、「ウクライナが劣っていると考え、今回の戦争を称賛するやつらが憎いんだ。自由のないロシアの占領下で生きるなんて、あり得ない」と吐き捨てるように話した。
首都キーウ(キエフ)近郊ブチャで化粧品店を営んでいたインナさん(47)は、ポーランドとチェコに避難していたが、「全てを失っても、やはり祖国へ」との思いで娘とリビウに落ち着いた。民間人の多数の遺体が見つかったブチャからロシア軍が撤退した後、一度故郷へ戻ったが、ロシア部隊が店をトイレ代わりにしていたのを見て吐き気がしたという。
インナさんはブチャで、息子と同じ15歳ぐらいの男性の遺体を目の当たりにした。「人間の仕業とは思えない。憎むにも値しない」と憤る。ロシア西部クルスクには今も、侵攻直前に「子供を連れて逃げた方がいい」と忠告してくれたロシア人の友人がいる。それでも「思いやってくれるロシア人はいても、ロシア語を聞くと正直、気分が悪くなる」と吐露した。
戦争は子供の心にも影響する。「僕がプーチンを倒す」。リビウの駅でバフダン君(9)は、おもちゃの剣を振りかざした。砲撃の危険が残る中部ポルタワへ、避難していたドイツから帰郷するところだった。強がる息子の傍らで母親のリアナさん(36)は「(息子が)父親と離れ離れでいるより、一緒に死んだ方がまし」と述べた。(c)時事通信社