カゴカキダイは熱帯から温帯の海に広く分布し、房総半島周辺では浅い岩礁などでふつうに見られる魚である。全長は二十センチに達し、体色は鮮やかなレモン色で、五本の黒い縞模様が体側を走っている。塩焼きや煮付けにして食べると美味しいが、まとまって漁獲されることが少ないので、市場にはあまり流通していない。また、きれいな魚で飼育も容易なことから、アクアリストにも人気があるという。

　このカゴカキダイの縞（しま）模様は、初めからついていた訳ではない。生まれてからしばらくの間は、海面付近などで浮遊生活をしているが、その時期にはまだ色素が発達していないため、体は透明である。海底で生活を始める稚魚期に移る頃になって、色素が発達するのである。

　海の博物館のある勝浦市の海では、毎年四月から五月になると、全長十五㍉位に成長したカゴカキダイの稚魚が磯の潮だまりに姿を現せる。磯に出現したばかりの稚魚にはまだはっきりとした縞模様はなく、体は半分くらいの部分が透明である。成長するに伴って縞模様は徐々に変化し、全長三十ミリ位になると、成魚の縞模様にかなり近くなる。

　磯の潮だまりでいろいろな大きさのカゴカキダイの稚魚を探して、縞模様の変化を追ってみると楽しいかもしれない。（千葉県立中央博物館分館海の博物館　川瀬裕司）