診療報酬、レセプトのため、頑張る医療事務さん。
クリニック、病院で頑張っている医療事務さんは、専門的な仕事です。医者ばかりでなく、医療スタッフが行った医療行為をお金に変えてくれる方々ですので、大切にしなければなりません。
連日、記載しております医科点数表や、診療報酬の手引きなど、電話帳並みに分厚い本を読み、必死に診療報酬請求に向けて、「レセプトの締め」と呼ばれる月末月初の過酷な業務に励んでおられます。
医療事務さんの頑張りを逆手にとって、個別指導、監査通達が来ることがあります。最も多いのは、在宅訪問診療です。
在宅訪問診療の算定の際、在宅訪問診療を行った日にちを記載しなければなりません。ただ、在宅訪問診療を行った日にちを記載するだけで良いのに、日にちだけではなく、訪問診療時間を記載している方が居られます。
●在宅訪問診療を行った日にちは、レセプトに記載しなければなりませんが、在宅訪問診療を行った時間を記載する必要はありません。
患者さんの自宅に在宅訪問する場合と、施設に入居されている患者さんに在宅訪問診療をする場合(一施設に複数名の患者さん)では、診療報酬が全く違います。
患者さんの自宅であろうが、施設であろうが、訪問診療を行った日にちは、レセプトに記載しなければなりませんが、時間は不要です。レセプトに在宅訪問の時間を記載していることが、厚生局を刺激してしまい、個別指導、監査に発展し、返金要請を食らったクリニック、病院を複数知っています。
具体例1)施設に入所している患者さん(8人入所)を在宅訪問、月2回、行った場合のレセプト。
施設入居時等総合管理料(在支援等)1日つき213点 月2回 213×2回 (月2回以上単一建物診療患者2人〜9人)単一建物患者数:8名
往診又は訪問診療年月日 令和4年4月1日
往診又は訪問診療年月日 令和4年4月15日 1400点×1
このようなレセプトになるはずです。ここの往診又は訪問診療年月日には、時間、時刻の記載は不要です。
具体例2)患者さんの自宅に訪問診療した場合。在宅訪問、月2回のレセプト。
在宅患者訪問診療料 同一建物居住者以外 1日につき880点 月2回 880×2
在宅時医学総合管理料2(在支援等)(月2回以上、単一建物患者1人)
往診又は訪問診療年月日 令和4年4月1日
往診又は訪問診療年月日 令和4年4月15日 3700点×1
患者さんの自宅に訪問診療した際のレセプトは、このようになります。同様に、時間、時刻の記載は不要です。
●厚生局の技官は、毎日、分厚い診療報酬点数表を読み漁っている医者です。調べる時間を充分に持っている、ということです。
監査に発展した病院では、訪問診療を行った時刻、診察時間を記載していました。しかも、細かく、適当に。これが最悪でした。(分かりやすく、在宅訪問診療は4月1日にしています。)
4月1日に8名、入所している施設「□□館」に在宅訪問診療した時刻を適当に記載。4月1日にご自宅に在宅訪問診療を行った時刻も記載。4月1日に訪問診療した他の施設「▲▲園」の時刻も記載。同一の4月1日に外来診療した患者さんのレセプトまでも、厚生局は調べ上げていました。
厚生局の技官は、暇だし、陰険だなって思いました。4月1日のタイムテーブルを作成していました。
その結果、14時20分に「□□館」に在宅訪問し、8名診察し、6キロ離れた「▲▲園」で7名診察し、在宅の患者さんを1人、訪問診療し、15時10分に帰院して、外来患者さん14名を診療したことになる。
1人あたり、診察時間を5分と仮定しても、訪問診療を行うのは、物理的に困難ではないか?カルテの記載でも診察時間が2分になっているが、個別指導のために後で記載したのではないか?
もう、無茶苦茶に攻撃され、結果、訪問診療の医療費返金を要請された挙句、監査へ発展しました。
在宅訪問診療の日にちだけで、レセプトへの訪問診療時間の記載は不要です。まさに、やぶ蛇になり得ます。
ただ、注意しとかなければならないのは、カルテには、訪問診療を行った時間を記載しておかなければなりません。レセプトからタイムテーブルを作成されても大丈夫なように、スケジュールに無理のない訪問診療を行って、診療報酬をご請求ください。
例えにあげた病院は、過去に幾度も個別指導に呼ばれ、改善が全くなく、4000万円を現金で返金するようなバブリーかつ稼げるところまで突き進む病院です。ブラック、個別指導、監査のたび、正直、「もう、勘弁してくれよ。こっちは平日、午後に代診頼んで来てるんだし」って辟易している病院です。
熟練の医療事務さんが知らなかったこと。
慢性心不全、気管支喘息、てんかんなどの患者さんの治療に際し、ジゴキシン、テオフィリン、フェノバールなど、中毒の危険のある薬剤を使用されていると思います。
薬剤を使用されている先生でしたら、是非、血中濃度を測定して、ご算定ください。これは高点数ですし、中毒の回避、有効血中濃度の確認に有意義な検査です。
ただ、算定には決まりがありますので、ご注意ください。(気管支喘息、テオフィリンの患者さんの場合)
1)血液検査を行った日に、血中濃度はわかりませんので、算定できません。
2)血液検査の結果、患者さんに血中濃度を示した日、血中濃度から治療方針を考察した際に算定できます。
テオフィリンの血中濃度を測定した日が、4月9日であれば、4月9日には算定できません。4月15日に血中濃度を患者さんに伝えたとすると、
特定薬剤治療管理料 特定薬剤治療管理加算(臓器移植後及びバンコマイシンを投与しているもの以外)
二)気管支喘息等の患者でテオフィリン製剤を投与。2022年4月15日 750点
レセプトは、このようになります。
ここで安心してはいけません。この場合も同様にカルテにしっかりと記載します。これも、血中濃度を記載するだけでは、管理指導ではなく、ただの記載である、と返金要請されます。ですので、
テオフィリン血中濃度:7.3。有効血中濃度は、5.0〜15.0であり、中毒域ではない。気管支喘息発作は、年に1回〜2回程度であり、現状のテオフィリン投与を継続する。
と記載しておけば、まず、個別指導での返金はありません。(返金要請できねえ。くそっ、って感じた嫌味な技官は、「単位まで記載してください」って言います。経験上。)
クリニック、病院の医療事務さんが頑張って請求のために作成したレセプトですが、厚生局は、どこかに齟齬がないか?おかしいところはないか?という目で見ていることを忘れないようにしてください。
前述の在宅訪問診療の監査の際、技官から「全ての患者さんの診察が1分間以内の診察で、光の速さで移動しなければ、このスケジュールでの在宅訪問診療は不可能です。」と断言されました。
ブラックは、「そうですかね?」って流しておきましたが、監査を受けている病院の院長は顔を引き攣らせてました。
返金要請があった翌日、4000万円を現金一括で振り込む経営には感心しますが、日々、相当に強引な診療を行っているのでしょう。完全に厚生局にマークされています。
バブリー、経済価値の違う先生ですから、個別指導、監査の際以外に付き合いはありません。このような先生は珍しいので、慌てず、焦らず、冷静に、コツコツと診療報酬をあげて、個別指導、監査などで嫌な思いをしないよう、医療事務さんと連携して診療報酬請求を行いましょう。
個別指導、監査、医療請求について、(自慢ではないですが)情報と経験を有しています。ブログの記載が保険診療に偏って良いのか?自問自答しています。
ただ、ブログを閲覧していただいている方は、厚生局の個別指導、監査について、カルテの書き方、クリニックの経営についてのページの閲覧が多いようですので、ブラックの瑣末な情報ながらも皆様の需要にお応えするべく、記載を続けたく存じます。
厚生労働省(厚生局)、医師会(日本医師会)の重鎮の圧力に屈服しないように頑張ってみます。ブログが閉鎖した時、圧力に屈したとご理解ください。「けっ、負け犬がっ」って言ってもらっても良いです。