個別指導での厚生局基本スタンスを確認 病名、電子カルテ他

厚生局は行政であり、指導、監査する医者は技官。

個別指導、監査を行う厚生局は、厚生労働省の支店みたいなところ。お役所です。

指導、監査を行う医者は、厚生労働省技官。お役人です。

当たり前のことですけど、お役所であり、お役人ってことです。なので、お役所仕事であり、マニュアル重視。柔軟性はありませんし、現場の痛み、忙しさなどは、無関係です。完全に事務作業ですので、情状酌量はありませんし、期待しない方が良いです。

カルテが無記載の白紙であれば、全額、返還ですし、適応病名が無ければ、たとえミスであっても、検査、処方に関して返金要請を行ってきます。

逆手に取れば、カルテに決まり通りの記載があり、病名が適正であり、診療の手引きや医科点数表通りに医療を提供していれば、いくら高額であっても、支払い側(国民保険、社会保険組合)は診療報酬を支払う義務があるということです。

◉口を酸っぱくして指導してくるポイント

1)主病名と副病名を分けるように。病名の数に注意しなさい。

主病名とは、その患者さんの主たる病名です。紙カルテの場合には、病名の左に「主)」と記載して、わかるようにしておかないといけません。厚生局は、主病名を5つ以内にするように、病名数は、概ね、10以下にするように、と指導します。

ブラックは、「それは患者さんに応じて変わることですよね?」、「重症の患者さんを診ている先生ほど、病名は多くなりますよね?」と尋ねました。そもそも、循環器疾患の患者さんだけじゃなく、大学病院、民間病院などの内科、外科などでは、病名の多い患者さんは山のように居られます。

病名が多い場合、省略すると、「病名をしっかりつけなさい」と指導してくるのも厚生局です。お役所仕事だから仕方ないですけど。

ブラックが、厚生局に、「大学で診ている心臓弁膜症の患者さんの場合、病名が多くなります。正しく病名をつけると、

主病名1)慢性心不全、主2)大動脈弁狭窄症、主3)人工弁置換術後、主4)慢性心房細動

副病名1)本態性高血圧症、副2)高コレステロール血症、副3)慢性甲状腺炎、副4)甲状腺機能低下症、副5)骨粗鬆症、副6)慢性便秘、副7)不眠症

主病名が4つ、副病名7つ、って多いですけど、問題ないですか?」って尋ねたら、

「先生のように、病名をしっかりつけて、適正な医療を行なっている場合には問題ありません。」っ返答でした。個別指導、監査とかで仕事しているから、このように言っているだけです。ブラック、全く心を許していませんし、警戒を解きません(顔はニコニコだけど)。ただただ、厚生局だけは敵に回したくないです。

主病名、副病名、合わせて20以上の病名数になると、病名が多いと判断されます。厚生局は、診療報酬の点数ばかりでなく、病名、診療内容もしっかり見ていますので、気をつけましょう。

2)疑い病名を大量に付けるのは止めましょう。

これって本当に矛盾しています。初診の患者さんが、体重が増えて、会社の検診で血糖が高いと指摘された場合、病名はどうなるのでしょうか?厚生局に確認したことがあります。

血液検査で血糖とHbA1cだけ検査するってことはないです。コレステロール、中性脂肪、尿酸、肝機能、腎機能、貧血など、生活習慣病に関わる項目は全て検査します。

この場合、主病名1)糖尿病疑い、副1)高コレステロール血症疑い、副2)脂質異常症疑い、副3)高尿酸血症疑い、副4)脂肪肝炎疑いって病名を付けるのですか?って尋ねたのですが、その場の厚生局員は即答できず、後日、厚生局から連絡がありました。

厚生局:「先生が診察して、診断がついた病名に関しては、疑いではなくて、確定診断で結構です。」

ブラック:「コレステロールとか尿酸とか、血液検査しないと分からないでしょ?」

厚生局:「その場合には、疑い病名にしていただいて構いません。血液検査の結果を見て、疑い病名を消してください。」

ということでした。

○具体例1)初診の患者さんで尿糖があり、糖尿病が心配、という患者さんで、血液検査を行なった場合には、主)糖尿病、副1)高コレステロール血症疑い、副2)脂質異常症疑い、副3)高尿酸血症疑い、副4)脂肪肝炎疑い、という病名になります。

しかし、普通はこれでだけでは終わらないです。NT-proBNP:心不全のマーカー、インスリン:インスリン分泌能を見る検査、抗GAD抗体:年齢が若い場合には1型糖尿病の否定が必要。最近、40歳以上の1型糖尿病報告も多い。尿中微量アルブミン:腎負荷を見る必要がある。

もう、こうなると、NT-proBNP:心不全の疑い、インスリン(CPR):インスリン分泌異常症の疑い、抗GAD抗体:1型糖尿病の疑い、という感じで疑い病名が羅列されます。

この場合、レセプトに病名だけ記載しても、国民健康保険であろうが、社会保険であろうが、審査員は見ていますし、厚生局も確認しています。

対策は、レセプトに患者さんの来院の経緯と検査の必要性を記載しすれば大丈夫です。

この場合は、

⚪︎42歳男性。会社健診で高血糖を指摘され、来院。1型糖尿病の鑑別の必要があり、抗GAD抗体、インスリン(CPR)の検査を行なった。

⚪︎肥満、頻脈、体重増加があり、NT-proBNPを測定し、心不全の精査を行った。

こういう記載をしておけば、減点、返戻されることは、まず、ありません。(ローカルルールがあり、断言はできませんけど。)

その後、血液検査の結果が出て、患者さんが再来された際に、診断を確定して病名の疑いを消す、という何とも面倒臭い作業を行わないといけません。ここで、病名全部を消してしまうと、診療報酬請求でガッツリと削られますので要注意です。一番良いのは、請求が終わった翌月に病名整理を行うことです。手間は、お金を稼ぐため、個別指導、保険返戻を避けるため仕方がありません。

○具体例2)体重が減った女性で、甲状腺が腫れているけど、貧血があって、癌が疑われる患者さんの場合には、全て疑い病名です。

主1)バセドウ病疑い、主2)甲状腺腫、主3)慢性甲状腺炎疑い、主4)鉄欠乏性貧血疑い、副1)肺癌疑い、副2)胃癌疑い、副3)大腸癌疑いってことです。

この場合も、

⚪︎28歳女性、体重減少、甲状腺腫大、著しい貧血で初診。バセドウ病、慢性甲状腺炎の鑑別が必要であり、TRAb、抗TPO抗体、抗サイログロブリン抗体などの自己抗体を測定した。

⚪︎高度の貧血、息切れが強く、肺癌、胃癌などの悪性疾患の精査を行った。(レントゲンは撮影しておいてください。)

面倒ですけど、電子カルテ内にレセプト用のコメントを大量に作り、ポチポチと添付していくことです。決して、医療事務さんに丸投げしない方が良いです。残業時間が増えますし、カルテとの整合性が取れなくなります。(医療事務さんが突っ走って、監査に発展したケースがあります。いずれ、記載いたします。)

こういう質問攻撃をかましていたら、「厚生局は、例えを言っているだけなので、極論まで突き詰めないように」と医師会のトップから怒られました。

厚生局は、「明らかに検査の目的で疑い病名を羅列している場合には目をつけてくる」と覚えておかれた方が良いです。ブラックの経験ですが、1年間以上の間隔を開けて、腫瘍マーカーを測定しても、患者さん一人当たりの診療報酬が高く無ければ、減点、返戻されていませんし、個別指導に呼ばれることもありません。

電子カルテでの指摘ポイント。

紙カルテだから、電子カルテだから、という理由で、厚生局が狙ってくることはありません。レセプトの内容、病名、カルテ記載、一人当たりの診療報酬が全てです。

ただ、電子カルテの管理が杜撰であると、クリニック、病院の管理体制が悪いという印象を持たれてしまい、個別指導の結果、再指導となるように感じています。

厚生局側は、国民の健康維持、疾病予防のため、適正な医療提供の確認という大義名分で個別指導をおこなっています。本当は、不正医療の発見と医療費削減のためでしょうけど。

厚生局は否定していますけど、「不正医療を発見した」、「●億円、返還させた」など、評価になっているはずです。そうでなければ、あんなに必死こいてカルテの隅々まで見るはずがありません。

電子カルテについては、厚生局の技官もオッサンが多いので、あんまり詳しくないです。しかし、毎回、注意してくるポイントがあります。患者さんの個人情報保護の観点からの注意点が多いです。

1)サーバーを施錠できる部屋に置いているか?

2)システム運用日誌を付けているか?(電子カルテシステムの作動状況を業務日に毎日確認しろということ)

3)データのバックアップをサーバと別の場所で、施錠できる場所に保管しなさい。(外注会社では、だめなのか?と尋ねたら、返答に窮して未だに返答が無いです。)

4)職員に電子カルテシステムの利用申請書と誓約書を提出させてください。

5)電子カルテへの記載入力が遅滞している。1週間後に記載していることがある。改竄と捉えられます。ご注意ください。

6)運用マニュアル、誤作動対策マニュアルなどのマニュアルが徹底していない。

7)電子カルテの監査体制が整っていない。監査するものは誰なのか?決めていない。

8)電子カルテ、電子カルテ周辺機器の日時、時刻が同期していない。同期させなさい。

9)診療情報、カルテ記載を修正した場合には、修正した人、修正した日時を記載しなさい。

10)職員全員がアクセスログを有しているのであれば、定期的にパスワードを変更しているか明らかで無い。

まだまだ、無茶苦茶に膨大です。厚生局は、電子カルテ運用のチェックリストを持っています。30項目くらいありますので、所属医師会に問い合わせると、電子カルテの運用について、教えてくれる医師会役員(保険担当)の先生が必ず居られます。

電子カルテ移行時や新規開業時に用意しておいた方が良いです。この辺について、全く対策ができていないと、電子カルテの為だけに再指導になります。勿体ないことです。

電子カルテは、国がデジタル化を推進していることもあり、厚生局内でも電子カルテに詳しい技官が現れています。同時に、医師会でも、電子カルテを使用している先生を個別指導に立ち会うように要請しています。徐々に電子カルテが当たり前に成りつつあります。

電子カルテを導入すると、医療事務さんの残業時間が激減するので、職場は明らかに良くなります。個別指導に発展するケースで、1割程度は、内部告発によるものです。医療事務さんが経営者と揉めて退職し、退職後、クリニック、病院の不正医療を厚生局に通達し、過剰な残業については、労働基準監督署に通報しています。

厚生局の個別指導、労働基準監督署の立ち入り調査が一緒に来る時は、まず、間違いなく内部告発か、退職者による通報です。

経営者の先生は、職員さんの働きやすい職場を作らないと、後でしっぺ返しが怖いです。

もちろん、逆恨みで通報しても、厚生局、労働基準監督署は動きません。彼らも暇ではありませんので、証拠がないと動きませんので、その点、ご安心ください。

個別指導で大金が動いた具体例は、こちらです→https://町医者の博打と投機と良い医療.com/yabuisha/ボッタクリ%E3%80%80クリニック%E3%80%80個別指導で言い合い/