厚生局の個別指導を乗り切る 金を取られないための戦略 第3弾

個別指導は、対策するものではありません。呼ばれた瞬間、勝負は決まっています。

新規開業の先生は、もれなく、開業1年以内を目処に個別指導に呼ばれます。(コロナウィルス感染症の拡大により、個別指導が遅れています。)

不正医療や医師法違反の疑いがある場合、いきなり個別指導に呼ばれます。ほとんどが内部告発か患者さんからの通報です。

いずれの個別指導にしても、指導対象となった医療機関には、開業地区の厚生局から封書で通達があります。個別指導の1ヶ月前に通達があることがほとんどです。同時に所属の地区医師会にも連絡が入ります。

個別指導に呼ばれる条件は、繰り返しになりますが、以下の通り、患者さん一人当たりの診療報酬平均点数です。先生の診療科別ですので、充分にご理解ください。(此処が抜けてしまうと、個別指導に呼ばれないように対策することが全くできませんので、毎回、記載しています。ご理解されている方は、すっ飛ばして下さい。)

⚫︎各都道府県のクリニック、病院で、診療科の上位4%の高診療報酬(患者さん1人当たり)かつ、各都道府県の診療科の患者さん一人当たりの診療報酬平均点の1.2倍(クリニックと病院で違います)に該当した先生が、集団的個別指導に呼ばれ、その2年以内、同条件を満たしていた場合。(経験的に2年と記載します。)

新規個別指導は別として、通常の個別指導で返金要請がなかった先生は殆ど居られません。返金は要請であり、義務ではないので返金しなくても構いませんが、監査に発展しても困りますし、厚生局の返金要請通り、カルテの記載漏れ、記述不足を反省して返金した方が良いと思います。

返金額は、個別指導の終盤、総括で説明されます。その時、「〇〇の項目については、返金されてください」と指導されます。その額を返金すれば良いです。

⚫︎厚生局の技官も人間です。個別指導は30分間から長い時は1時間以上続きます。カルテの記載を注意しても、返金について触れなかったり、総括で要請されなければ、返金しなくても構いません。

⚫︎個別指導の総括で返金を要請された部分に関しては、厚生局も記録を残しています。その部分を返金しないと厚生局が納得した、と言えません。

過去の記載にもありますように、管理料の算定を行なってもカルテに充分な記載が無い場合や、検査データの記載がない場合、ガンガンと返金要請されます。

個別指導に呼ばれた段階で、勝負は決しているので、是非とも呼ばれないように。せめて、集団的個別指導までにとどめてください。

個別指導に呼ばれた場合。カルテの未記載、不充分な記載について、どうするのか?

カルテの記載に関しては、先生によって考えが全然違います。

⚫︎90%以上の先生は、個別指導が決定した後、カルテを記載する行為は「改竄」とみなされる可能性があるし、行なってはいけない、と指導しています。

⚫︎改竄の意味を調べてみると、改竄の意味=文章の字句を直すこと。悪用するため、勝手に直すこと。

ですので、悪用して勝手に直すことでも、書き換えることでもないので、ブラックは「改竄」とは考えていません。

⚪︎ブラックの考え:医師の業務は多忙かつ非常に広い。実臨床の場では、診療や治療、検査業務に追われ、カルテを記載する時間が確保できません。

⚪︎患者さんに指導しているが、その全ての内容、会話を記載できない場合も多々あります。実際、保険担当のブラックですら、大学、大病院、クリニックのカルテについては、診療から時間が経って記載しています。

⚪︎コロナウィルス感染症拡大のため、医療従事者の負担は大である。

◉以上から、患者さんに指導していない、血液検査の結果を伝えていない、など、実際に行なっていない診療内容について、個別指導を受けることがが決まってから記載するのは「改竄」とみなされる可能性がありますが、診療した先生が、指導、管理について思い出し、記載する行為は「加筆」と判断しています。

◉「加筆」する場合には、医師の記憶による所が大きく、証拠が無いので行なってはならない、という先生も多くおられます。

・では、夜中の3時に看取り医療を行なって、カルテを記載して、死亡診断書を作成しますが、カルテを完全に書き上げてからではないと、通常診療に戻ってはいけないのか?特に、患者さんが亡くなったという特殊な状況ですから、時間をかけ、仕事に追われて焦って書くべきではないのではないか?

・救急診療の現場で、急性心筋梗塞の患者さんが搬入された場合、処置を行い、即座にカテーテル検査、治療を行うが、治療終了後、間髪入れずに急性心不全の患者さんが来られた場合、カルテを記載している時間もなければ、記載している場合でもない。そういう場合にはどうするのか?

以上、厚生局、医師会の上部に尋ねました。結果、臨機応変にカルテ記載を行なって下さい、と曖昧な返答でした。

◉全く行なっていない診療行為、検査、管理指導について、個別指導が決まってから記載する場合には「改竄」とみなされる可能性がありますが、忙しい中、思い出して記載するのは「加筆」と考えています。責任は持てませんし、多くの先生が加筆を認めていない状況です。慎重に行なってください。

◉「加筆」にも限度があります。厚生局は、個別指導が決定すると、チェックするカルテを指定してきます。個別指導の2週間前に10冊、1週間前に10冊、前日に10冊という感じで指定してきます(地域差あり)。「加筆」、「改竄」を防ぐため、前日にカルテを指定してくることがほとんどです。

◉通常の診療時から、カルテを抜けがないように記載し、可能な限り、その日のうちに記載を済ませてください。

例)夜中の2時に記載していたり、週末に一気に記載している先生が居られました。電子カルテですので、記載した日時が分かります。厚生局から、「カルテの記載の日時が遅い。可能な限り、診察時、診療時間の終了時までに記載するように」と指導がありました。

ブラック、大学、大病院のカルテは、深夜に記載したり、週末に記載しています。忙しく働くとカルテを記載する時間がありません。言い訳ですけど、よくあることです。カルテの記載時間が遅いから返金要請された、という経験、記憶はありません。ただ、印象が悪くなって、再指導になる可能性があります。

個別指導の返金要請。細かい病名を羅列しても無駄だった。

コロナウィルス感染症の拡大により、患者さんが一箇所で薬を処方してほしい、とのご希望が多いです。また、高齢者の患者さんも増え、国が、かかりつけ医を推進していることもあり、一般内科でも、点眼薬、外用薬、塗り薬、吸入薬などを処方する機会が増えています。

前述しました通り、各診療科別の一人当たりの診療報酬点数の順位によって、個別指導に呼ばれますので、全ての診療科が個別指導の対象です。皮膚科、眼科、耳鼻科などの先生も漏れ無く呼ばれています。

以上から、外用薬、点眼薬、吸入薬などに対しても、指導が厳しくなっています。

例1)ヒルドイドソフト軟膏(1本:25g)を、凍瘡、肥厚性瘢痕の病名で250g、10本、毎月処方している。

指導内容:外用薬の量が多い場合には、塗布部位を記載してください。また、ヒルドイドソフト軟膏10本は、処方量が多いので、減量してください。転売の可能性まで考慮して診療を行うように、と厳しく指導がありました。返金要請はなかったですが、過剰な処方とみなされた場合には返金要請される可能性が高いです。

例2)内科のクリニックでクラビット点眼薬を毎月3本ずつ、6ヶ月間連続、結膜炎の病名で処方している。

指導内容:結膜炎の症状、診察、病状の記載がカルテに見られません。点眼薬を長期間にわたって処方している場合は、漫然処方とみなします。症状が強い場合には、眼科に紹介してください。(返金要請なし。)

例3)禁煙外来を行なっている呼吸器内科でのニコチン依存管理用に関して。

指導内容:禁煙外来におけるニコチン依存管理料算定の場合には、診断の根拠、同意書、指導内容の記載、内服薬内服状態の確認が必要です。カルテに記載が全くないので、返金してください。

例4)耳鼻科、鼻出血の患者さんの検査で、鉄欠乏性貧血の疑い、銅欠乏症疑い、亜鉛欠乏症の疑い、葉酸欠乏症の疑いで検査をしている。

指導内容:疑いをもった根拠がカルテに記載されておらず、検査結果、診察内容も記載されていない。記載がない検査項目については返金してください。

例5)内科であるが、人工涙液の点眼薬を頻繁に処方していた。

指導内容:涙液分泌減少症、ドライアイ、結膜炎、角膜炎などの病名をつけているが、診断根拠がない。点眼薬の過剰処方とみなします。眼科に紹介してください。また、病名については診断根拠を記載してください。

◉以上のように、細かいところまで注意、指導を繰り返されます。亜鉛欠乏症であれば、味覚障害、感覚障害があり、3食食べていない、食事の内容(おかず、魚介類の摂取程度)などを記載し、ようやく、亜鉛の血液検査を行います。血液検査の結果、亜鉛:〇〇であり、亜鉛欠乏は認めなかった、と記載するしかありません。ちなみに、プロマックは、亜鉛欠乏での適応病名はありませんのでご注意ください。

この細かいチェックをクリアできるほど、カルテを記載できる自信がありません。可能な限り記載し、疑い病名の場合には、その病名を疑った根拠を記載しましょう。

個別指導を乗り切るカルテ記載。第二弾は、こちらです→https://町医者の博打と投機と良い医療.com/clinic-open/金をブン取られないカルテの書き方%E3%80%80厚生局個別/