厚生局個別指導 高点数検査の質疑 返金せずに反撃できた具体例

厚生局の個別指導。優秀なクリニックでも呼ばれる実態。

繰り返しになりますが、個別指導に呼ばれる条件は、以下の通りです。(繰り返しですので、既読の方はすっ飛ばして下さい)

⚫︎各都道府県のクリニック、病院で、診療科の上位4%の高診療報酬(患者さん1人当たり)かつ、各都道府県の診療科の患者さん一人当たりの診療報酬平均点の1.2倍(クリニックと病院で違います)に該当した先生が、集団的個別指導に呼ばれ、その2年以内、同条件を満たしていた場合。(経験的に2年と記載します。)

この条件のキーポイントは、「各診療科別」、「上位4%」、「患者さん一人当たりの診療報酬平均点の1.2倍」です。

厚生労働省(厚生局の親玉)は、非常に頭が良いと思います。例えば、この条件を診療科別に分けないと仮定すると、個別指導に該当する病院、クリニックは毎回、同じとなる傾向が出るはずです。

患者さん一人当たりの診療報酬の高くない診療科(耳鼻科、皮膚科など)は、永遠に個別指導に関与しない。結果、医療費の抑制が隈無く行えない。満遍なく全診療科の医療費を抑制したい魂胆が見え見えです。

各診療科別で、患者さん一人当たりの診療報酬の高い順にクリニックを呼び出していると、内科、整形外科ばかりでなく、耳鼻科、皮膚科、小児科など、患者さん一人当たりの診療報酬が低く、決して売り上げが高くないクリニックすら、個別指導に呼び出すことができます。結果、全国津々浦々、医療費を抑制できるのです。

裏を返せば、診療科別、患者さん一人当たりの診療報酬の高い順に呼び出していますので、非常に優秀かつバリバリな先生を個別指導に呼び出すことがあります。

呼び出された先生からすると、良質な医療を提供しているのに、点数が高いという理由だけで毎回、呼び出されるという、まさに迷惑でしかありません。

そのような先生は、毎回、個別指導に呼び出されている経験、また、中には医師会の保険担当役員を務めていた過去のある先生もおられ、厚生局の技官が反撃を喰らうという、爽快なシーンが度々、目撃できます。当然、返金要請もなければ、再指導にもなりません。具体例を挙げてみます。

検査を分けるように執拗に迫る技官。(小児科、アレルギー検査)

個別指導の敵スペック:厚生局指導監査課 指導医療官 厚生労働技官 2名

対象の先生のスペック:小児科医 男性 60歳くらい。(市医師会、保険担当役員歴あり。医者としても優秀)

⚫︎攻撃を受けた患者さんのカルテ:3歳を初診。気管支喘息、アレルギー性気管支炎、アトピー性皮膚炎。

⚫︎攻撃を受けた項目:炎症反応、血液検査、非特異的IgE定量検査、アレルギー検査、胸部レントゲン検査など。

小児科の先生は、カルテ記載は完璧でした。「SOAP」記載。(「S」:患者さんの主観的情報(Subjective)、「O」:客観的情報(Objective)、「A」:評価(Assessment)、「P」:計画(Plan)の順に記載します。)

この先生の診療内での高点数検査は、非特異的IgE定量検査、アレルギー検査(View39:39項目のアレルゲン検査)です。

・非特異的IgE定量検査:110点(1100円)

・アレルギー検査:特異的IgE定量検査:1430点(14300円)

カルテの記載)「A」:非特異的IgE定量検査:620と高値であり、特異的定量検査では、スギ、ヒノキの定量検査:〇〇と著しく高値であった。その他、小麦:□□、犬:▲▲〜と全項目の数値を記載。

以上から、気管支喘息、スギ、ヒノキ花粉によるアレルギー性鼻炎、アレルギー性気管支炎が長引き、気管支喘息発作と相まって、呼吸器症状が悪化したのであろう。胸部レントゲンに肺炎像は認めず、血液検査では、CRP:0.05mg/ml以下、WBC:9800(好中球:72%、リンパ球:20%)と炎症反応の上昇や、感染を疑う明らかな所見は認めなかった。

「P」:ステロイドの吸入を行い、去痰剤、鎮咳剤を処方。悪化するようであれば、再来を指示。

このカルテには、行った検査項目の結果を記載し、その結果に対する項目も記載してあることから、返金要請はありませんでした。

この先生は、小児科医として30年以上、地域医療に貢献し、評判ばかりでなく、診療内容も良く、大学病院にも月に数回、ヘルプで来られている先生です。さらに、この先生は、過去、医師会の保険担当役員を経験しておられ、どのようにカルテを記載するか、熟知しておられました。

そのことを知らないのか?厚生局の指導官は、

指導官:「先生。このカルテの内容を見ますと、診察、胸部レントゲン検査、血液検査を初診の際、全て行なっています。」

小児科医:「ええ。カルテに記載してある通り、3歳にしては体重が少なく、呼吸音から重度の気管支喘息発作が疑われました。まずは、胸部レントゲン検査で肺炎の否定を行い、肺の状況を確認しました。明らかなアレルギー歴があり、アトピー性皮膚炎、アレルギー性気管支炎を有していました。ステロイドの吸入を行う以上、アレルゲンの精査まで必要と判断しました。」

指導官:「例えば、血液検査の白血球の分画と、非特異的IgE定量検査を測定し、好酸球が高い、非特異的IgE定量検査が高い、など、アレルギーが強く疑われた根拠をもって、(アレルギー検査)特異的IgE定量検査を再度、行なっても良いのではないですか?」

⚫︎初診であり、1回目の血液検査で、アレルギーを疑う根拠がある場合にのみ、次回の血液検査の際、アレルギー検査:特異的IgE定量検査を行え、という投げかけです。

これは、小児科の先生は黙っていないだろうな、と様子を伺っていましたが、さすが、小児科の先生は冷静でした。

小児科医:「先生(指導官)が何科の専門なのか?存じ上げませんが、小児科の外来診療では、1人の子供さんを診察するのに、医師、看護師2人、保護者が、喘息の重責発作の子供さんの容態を案じながら、また、泣き叫ぶ子供さんを宥めながら、懸命に診療しています。先生(指導官)のおっしゃられる通りに診療を行うのであれば、血液検査を2回、行わなければなりません。3歳、喘息発作中の小児の末梢血管が如何に細いか?如何に採血が大変か?ご存じないのですか?」

指導官:「いや、そういう意味ではなく、一度目の検査でアレルギーがあると分かってから、二度目の採血でアレルギーの精密検査を行っていただき、医療費の削減にご協力いただきたい、という意味です。」

小児科医:「それはおかしいです。私は、医師会の保険担当役員として個別指導に幾度も立ち合いました。小児のアレルギー検査を二度に分けて行うように指導するのは、小児、小児の保護者の方に再来するように指導することにもつながります。これも医療費という面、小児科医の負担という点で、看過できない発言です。改めて伺いますが、やはり、アレルギー検査を行う場合には、一度目の血液検査でアレルギーが疑わしい場合にのみ、行うという考えでしょうか?厚生局の考えとして受け取って構わないのですか?」(結構、怒っていた。)

指導官:「申し訳ございません。即答しかねる問題ですので、後日、ご連絡を差し上げます。」

調子に乗るブラック:「大変申し訳ないのですが、後学の為、医師会にもご連絡いただけますでしょうか?」

指導官:「わかりました。」(ブスッとした顔で答える。)

厚生局は、問題になりそうな事、疑問に関しては、決して即答しません。必ず、持ち帰って、厚生局内で議論して返答します。大きな問題に発展しそうな場合には、厚生労働省に問題点を上げているはずです。

なぜなら、簡単に返答してしまうと、前例を認めたこととなり、以後の医療請求、診療行為を全て認めないといけなくなるからです。非常に慎重な役所です。

逆に言えば、過去、厚生局が認めた医療行為、診療報酬請求は、ほぼ、間違いなく、認めてくれます。例外が無いという点において、厚生局は素晴らしく堅い組織です。

結果)アレルギー検査を1回目の診察で全部行なっていても、何も言われないので、厚生局は突っつかないと決めた模様です。

ただ、非特異的IgE定量検査は、IgEの値を記載していないと、返金要請されますし、特異的定量検査は、ヒノキ:〇〇、小麦:□□、犬:▲▲と全項目の数値を記載し、アレルゲンの考察を記載しておけば、返金要請されません。

検査を分けるように執拗に迫る技官。(循環器内科、エコー検査)

個別指導の敵スペック:厚生局指導監査課 指導医療官 厚生労働技官 2名

対象の先生のスペック:内科 男性 50歳半ば。(医者として非常に優秀)

⚫︎攻撃を受けた患者さんのカルテ:75歳。慢性心不全、僧帽弁閉鎖不全症、大動脈弁閉鎖不全症人工弁置換術後、三尖弁閉鎖不全症、慢性心房細動。

⚫︎攻撃を受けた項目:心臓超音波検査、腹部エコー検査。

この先生のカルテ記載も完璧でした。問題は、経胸壁心エコー検査:880点、腹部エコー検査:530点を同時に行なっていることに、厚生局の指導官の指導官がイチャモンをつけていました。

指導官:「先生のカルテを見ますと、心エコー検査を行ったのには理解ができるのですが、腹部エコー検査を行った理由は何でしょうか?」

循環器医:「カルテに記載していますように、胆石症、腎嚢胞がありますので、その観察です。病名にも記載があるでしょう?」

指導官:「心エコー検査を1年毎に行っておられますが、その都度、胆石症、腎嚢胞の確認を行う必要があるのでしょうか?変わりがないのであれば、腹部エコーは2年に1回でも良いのではないでしょうか?」(返金できないので、重箱の隅を突き始める)

循環器医:「循環器専門医は、三尖弁閉鎖不全症、慢性心不全の患者さんを診る場合、腹部エコーの観察の際に、肝静脈の拡張具合も観察します。心不全の評価にもなるからです。心エコーの所見用紙に記載してあるでしょう?ただ、それだけを観察して腹部エコーの算定をしても問題は無いでしょうが、さすがに患者さんにも申し訳ないですし、医師として、腹部エコーを算定する以上、胆石、腎嚢胞、肝臓、膀胱などを観察し、所見用紙に結果を記載しているわけです。医師の良識、善意に伴う検査を否定するようでしたら、こちらとしては、肝静脈、肝臓のみ、観察して、診療報酬請求しても構いませんが、そういう意味でしょうか?」

(実は、この先生は、臨床、研究面で相当に優秀かつ、社会保険の審査員もしていた先生でした。)

指導官:「申し訳ございません。確認不足でした。これからも地域医療のリーダーとして、現在のご診療をご継続ください。」(低頭)

厚生局の指導官も人間ですから、うっかりとしたミス、確認不足も多いです。ただ、診療科別、一人当たりの診療平均点数で呼び出すから、頑張っている優秀な先生を平日の昼間に呼び出してしまうのです。

明らかな過剰医療、不正医療の場合にのみ、個別指導を行えば良いのです。お互い、暇ではないのですから。

個別指導対策は、こちらです→https://町医者の博打と投機と良い医療.com/clinic-open/厚生局の個別指導を乗り切る%E3%80%80金を取られないた/