訪問看護指示書で気をつけること。
訪問看護ステーションに対して訪問看護指示書を発行し、在宅の患者さん、施設入所中の患者さんに看護師さんを派遣するように手配されている先生は、是非とも訪問看護指示書の記載、発行にはご注意ください。
◉訪問看護指示書は月1回 300点(3000円)を算定できます。
訪問看護指示書は、毎月、指示書を発行しても良いですし、最長、6ヶ月間の期間を指定して発行しても構いません。
手書きだと面倒くさいので、訪問看護指示書の指示期間を6ヶ月にしている先生が多いのですが、電子カルテが普及し、毎月、コピペした訪問看護指示書を発行しているクリニックがあります。
確かに、コピペして、指示書を訪問看護ステーションに送るだけで、300点(3000円)です。10人の患者さんに毎月、訪問看護指示書を発行すると、
3000円×10人=月:3万円×12ヶ月=36万円 コピペだけで年間:36万円と手間の割に利益率の高い指示書です。看護師さんへの指示という責任はありますが、紙代程度しかコストはかかりません。
このような収入を厚生局が見逃すはずはありません。癌の終末期や、老衰、寝たきり状態、褥瘡などがあり、1ヶ月の間に容体が変わる可能性が高い患者さんに対しては、毎月、訪問看護指示書を記載、発行しても構いません。その場合には、訪問看護指示書の内容を変更しなければなりません。
例えば、2022年3月の訪問看護指示書。
⚪︎病状:大腸癌の終末期。るいそう、脱水が深刻化。座位にて食事摂取を行っているが、殆ど食べることができていない。肝転移のため、右季肋部痛が生じている。痛みが悪化する場合には、麻薬の増量を検討。
⚪︎輸液指示:ソリタT3:500mlを時間100ml/h、月、水、金の3回、輸液施行を継続してください。
→2022年4月の訪問看護指示書。
⚪︎病状:大腸癌の終末期。今月から黄疸が出現し、食事摂取が厳しくなり、臀部に褥瘡が発生した。寝たきり状態となり、アンモニア上昇。肝性昏睡となっている。
⚪︎輸液指示:末梢血管が細く、輸液が困難となった。また、ご家族も点滴を止めて欲しい、との依頼があり、末梢輸液は中止。看取りに関しては、ACPを患者さんのご家族にお渡しして説明済み。心肺停止時、心臓マッサージ、気管内挿管などの蘇生は行わない。在宅での看取りを希望。心肺停止時、ドクターコール。
決して充分ではないでしょうが、訪問看護指示書を毎月、発行する場合には、上記のように「病状が変わり、指示も変わった」ことを明確に記載しておかなければなりません。
医師会の指導の際、訪問看護指示書を「コピペ」して、毎月、指示書を出していると、厚生局の指導で指摘されます、と警告しているにも関わらず、全く改善せずに個別指導に突撃される先生が居られます。
訪問看護指示書を乱発したクリニック。結果は当然、返金要請でしたが、それ以外にも突っ込まれる。
●個別指導の対象:内科クリニック 在宅訪問診療患者さん50名程度。外来診療も行なっているが、かかりつけ患者さんは少なめ。
30冊の個別指導の指定カルテのうち、16冊が在宅訪問診療のカルテでした。在宅訪問診療のカルテが狙われていることは明らかでした。
⚪︎厚生局の指導官:毎月、全く同じ内容の訪問看護指示書を発行しています。病状が変わらないのであれば、期間を延長してください。12人の患者さんは、容体が安定しており、毎月の訪問看護指示書の発行は不要と判断します。6ヶ月に1回の発行で充分と判断しますので、10ヶ月分は返金してください。
10ヶ月分×3000円=3万円 3万円×12人=36万円 患者さんは全て1割負担でしたので、36万円×0.9=32万4千円の返金。
訪問看護指示書だけで、32万4千円の返金です。
⚫︎この先生は、カルテの記載が不充分で、もう、庇いようがなかったです。
「SOAP」記載が不十分。(「S」:患者さんの主観的情報(Subjective)、「O」:客観的情報(Objective)、「A」:評価(Assessment)、「P」:計画(Plan)の順に記載します。)
・80歳代、寝たきりの患者さんの緊急往診のカルテ。
「S」:頭が痛い。「A」:カロナールdo。処方:カロナール(200)2錠1×疼痛時、5回分
・70歳代、在宅訪問診療の患者さんの緊急往診のカルテ。
カルテ記載:喘息発作。吸入do。処方:ホクナリンテープ外用1枚1×5回分、発作時
⚪︎厚生局の指導官:淡々とカルテの不充分記載を指摘。
先生のカルテを拝見しますと、同一患者さんに緊急往診が月に10回以上行われているケースが多く見られます。緊急往診を行った患者さんのカルテを見ますと、本当に往診を行ったのか?疑問に感じます。誤解をされないようにカルテに、緊急往診の理由、診察内容、訪問時の時間、診療時間などを記載してください。
気管支喘息の発作のため、緊急往診を行っていますが、カルテには吸入と記載していますが、実際に処方されているのは、ホクナリンテープの外用薬が処方されています。こちらも誤解を招かないよう、カルテの記載を徹底してください。
以上から、緊急往診算定の大部分の返金を要請されました。緊急往診は、1回の往診:750点(7500円)です。
◉後日、クリニックの先生から、一体、いくら返金したらよいのか?相場を教えて欲しい、との連絡が入りました。
ブラック:返金は義務ではありませんが、先生のクリニックの個別指導の印象から、再指導は間違いないでしょう。厚生局が納得するように返金を行った方が良いです。再指導、監査とか発展すると困りますから。
結果、カルテ記載が不充分であった(本当は往診に行っていない可能性が高いのですが)緊急往診加算の診療報酬は返金されました。総額:100万円程度の返金をされたようです。
100万円程度の返金は、結構、痛手ですが、「税務署が来ても50万円程度、払わされることが多い」ですので、お金の問題としては、「まあ、そんなものか?」という印象です。
ただ、税務署は、1回来たら、当面、来ませんが、厚生局の個別指導は、再指導を行なわれますし、指導の後、診療報酬を気にして日々の業務を行いますので、売り上げが激減します。
在宅訪問診療、訪問看護指示書などの記載につきましては、充分にご注意ください。
◉記載内容は、医師会で行う指導を記載しております。また、個別指導の内容に関しましては、実際の指導内容を元に、指導を受けた先生が特定できないよう、ボカして記述しております。デリケートな問題ですので、ご配慮とご理解をよろしくお願い申し上げます。
診療情報提供書の記載についての指摘点。
患者さんを他の医療機関に紹介した際、診療情報提供書料 250点(2500円)を算定できます。
⚫︎同一の医療機関、〇〇大学病院消化器内科、〇〇大学病院整形外科、と診療科が違う場合でも、月に何通、記載しようが、診療情報提供書料は、1通分しか算定できません。
⚫︎診療情報提供書を発行する際、CD-R代、フィルムコピー代など、数百円程度の徴収に関しては、経験的に指摘されません。
◉診療情報提供書料を1通毎、別途料金(例えば、1通:3000円)を徴取している医療機関があります。
現在まで、返金を指摘されたことはありませんが、3000円徴取していた場合、保険算定の診療情報提供書料:250点を算定していると、3000円徴取が「自由診療」、診療情報提供書料:250点が「保険診療」とみなされる可能性があります。
何がまずいのか?厚生局は、この点に関して、攻撃はしてきませんが、あまりに過剰に行っていると、混合診療とみなされる可能性があります。
⚫︎混合診療とみなされると何がまずいのか?
・3000円徴取した「お手紙代」に関しては、自由診療なので「ノータッチ」でしょう。
・3000円を聴取した日に行った医療に関しては、混合診療とみなされると、保険診療分の返金を要請される可能性があります。診療情報提供書料:250点以外の診療、「再診療」、「処方箋料」、「特定疾患指導管理料」などまで返金要請されます。混合診療とみなされると、こういう返金要請が恐ろしいです。
⚫︎患者さんも徐々に情報を得ていますので、お手紙代:1000円〜5000円を徴収している先生は、そろそろ考え時かもしれません。
当院に転院された患者さんは、長年にわたって、お手紙代:1通あたり3000円、徴収されていて憤慨していました。既に前医が閉院されていましたので、どうしようもなかったですが、厚生局に通報されると、おそらくアウトです。いきなり、個別指導に呼ばれる可能性があります。
別に患者さんに診療情報提供書料のことをお話しした訳ではありません。胃癌、心不全のため、大学病院の消化器内科、循環器内科に診療情報提供書を記載し、お支払いの際、診療情報提供書料 250点(2500円)の1割:250円とCD-R代:100円をお伝えしたところ、奥さまが安すぎると当院の事務員さんが尋ねられて、診療報酬についてご説明を受け、結果、憤慨された、という経緯です。
簡単に調べることができる時代ですので、お手紙代の徴収に関しては充分にお気をつけください。
⚫︎診療情報提供書の宛名について。
診療情報提供の内容が乏しくて返金要請を受けた経験がありません。ただ、家族歴、アレルギー歴、病歴などの記載は当然ですが、ここ数年、紹介先の病院名を記載するよう、厳しく指導を受けています。
遠方に転居される場合には、転居後に受診する病院を調べて記載するか、近隣の病院宛に記載をしなければなりません。患者さんが転居後、宛名と違う病院に行っても構わない、と理解しています。
訪問看護指示書、診療情報提供書などについても、細かなチェックが行われていますので、ご注意ください。
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