ようこそしないで魔法使い君   作:ツインテ美少女こそ至高

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うぇーい


青春は始まったばっかだぞ

 

 人間の結末は常に突然とやってくるものだ。

 

 

 少し息を切らせて家電量販店の搬入口に辿り着いた俺は、その光景を見て、少しの思考停止。

 

 現実に戻って、改めて物事を客観的に捉える。

 

 

 こうなった責任は誰にも無い、あると言うのならおそらく、俺の目から少し離れた所で横になって伸びている小太りの男ただ一人だ。

 

 あえて何かを言うのなら、俺にはどうしようもなかった。そもそも俺はDクラスの生徒では無いし、傍観を決め、事実この騒動の結末の大方は俺の予想の範疇に過ぎなかった。

 

 結局の所、龍園は負けた、Cクラスが訴えを取り下げたのはここに来る前に知っている。

 

 綾小路は勝ったのだろう、詳しいやり取りはまだ聞いていないが、この状況は俺にとっても綾小路にとっても計算外。遊びの中ではなく、外で起きた出来事の筈だ。

 

 

「____倉上くん!」

 

「少しどけ一之瀬」

 

 俺は一之瀬に一言だけ言ってそこにいる人物に近づく、俺は医者でも何でも無いが魔法使いではある。仕事上、そして30年間の魔法使いとしての人生から、この傷は致命傷だとわかる。

 

 当たり所が悪過ぎる、綾小路もそれを分かっているからか、突き刺されたナイフを外していない。それで良い、変に外すと失血で死ぬ。

 

「ぁ…あゃ、のこうじくんが……っ、わたしを、か、かばって、それ、それで」

 

「いい、何も言うな」

 

 近くに蹲って顔面を蒼白とさせている女子生徒にそう言って、視線は綾小路に固定したまま思考を続ける。

 

 

 今日の放課後、いつも通り姫野とどこに遊ぼうかスタスタと歩く姫野についていきながら話している途中、一之瀬からの電話を受け取った。

 

 その時には既に気が動転していたのか、要領を得なかったがその錯乱の仕方に俺は考えるより先に場所を聞いて全速力で向かった。

 

 着いた時にはこの状況になっていた、詳しい事は何も知らない、綾小路がナイフで急所を刺されているその状況だけが確かな事実だ。

 

 綾小路の実力なら素人レベルなら簡単に制圧出来るはずだ、それが出来ない程あの小太りの男が綾小路より上だった事は先ず無い。実際あの小太りの男は重たい一撃でも食らったのか、地面に寝ている。

 

 庇ったと蹲る女子生徒は言う、ならば……運が悪かったか、或いは自分を犠牲にしなければ間に合わない状況だったか。

 

 

 まあ、いい。これを考えても何も意味はない。

 

 

 このままなら綾小路は死ぬ。

 

 適切な治療を行えば命は助かるだろうが、学校にまた入学出来るのは軽く見積もって夏の終わり、それだけじゃない、人の命に関わる問題だ、学校も何かしら慌ただしく動くだろう。

 

 考えるにそれは、俺の青春が失われる事になる。

 

 俺は善人じゃない。だからと言って悪人でもない、魔法使いだ。

 

 魔法でこの状況をどうにか出来るかと言われれば、はっきり言って簡単だ。

 

 この学園で初めて作った友達、何れは親友になれるかもしれないと思っている人物を助けない理由はない。

 

 なにより、こんな終わりはお前も俺も望んでいない。

 

 だから俺は魔法使いとして、今からお前を助けよう。

 

「一之瀬、学校には言ったか」

 

「……ぁ、ご、ごめんなさい、まだ」

 

「いやそれで良い、考える事がひとつ減った」

 

「え……?」

 

 最初に、俺は魔法を使うルールの例外として犯罪行為に遭遇した時や、自他の生命の危機は魔法を使ってもいいことにしている。

 

 今のこの状況を完全解決するまで俺は30年間共に歩んできた魔法を無制限で使える。

 

 

 

 さて、始めよう。

 

「倉上くん、それはどう____」

 

「悪いな、寝てくれ」

 

「え……っ?」

 

 俺は手を向けて一之瀬と、それから近くに蹲って泣いている女子高生に睡眠魔法を掛ける、効果は5分ぐらいで良いだろう。

 

 眠っている間に混乱魔法を掛けさせて貰う。

 

 少しの間の記憶を混濁させる、これは10分前後にしておこう、綾小路が刺されたという事だけが綺麗消えていればそれで良い。

 

 ……いや、この女子高生はそれだけだと脳のフラッシュバックで錯乱する可能性があるか、当事者らしいし根強く記憶に残るだろう。

 

 混乱だけでは足りないなら改竄魔法、助けられたと言うのは事実だろうから、刺されたという事実を、この女子高生には完全に無かった事に改竄する。

 

「……倉上、何を」

 

「安心しろ」

 

 綾小路にも睡眠魔法を掛ける……待て、様子が変だ。もう既に死に体か?いやそうじゃ無いな、だとしたらこれは。

 

 そうか、そういうことか。こんな状況だと言うのに俺は思わず笑みを浮かべているのを感じた。

 

「何をしようと、いや。しているんだ、これは」

 

「綾小路おまえ……凄いな、俺の魔法が抵抗されるのは何年振りだ?」

 

「魔法、だと?」

 

「ああ、俺は魔法使いなんだ。安心しな、まだお前は遊べる」

 

 

 再度睡眠魔法を重複させて眠らせる、二回目は抵抗できなかったか、それはそうか。重傷なのも加味すれば十分凄いやつだ。

 

 さて、綾小路にも記憶の改竄をさせて貰おう、刺されたという事だけ忘れていれば、あとは脳が勝手に処理してくれる。

 

 それから、そうだな。ここ一帯の監視カメラなどの記憶媒体も不味いか。

 

 周囲……そうだな、範囲を600mに設定して、監視カメラを全てハッキングして内容を弄らせて貰おう。

 

 電脳支配魔法。今この周囲にある全てのコンピューターは俺の支配の下にある。

 

 これで隠蔽は出来たか。他にやる事は____ああ、三人に俺が魔法使った事は忘れさせないとな。

 

 ……よし、これでいい。事細かいことは隠し通せないかもしれないが。

 

 魔法使いの痕跡を理解出来る人間が果たして何人いるかな。

 

 家電量販店の搬入口で良かった、これがもう少し人通りの多い場所だったら、面倒臭かったからな。

 

 さて、あとは綾小路の傷を完全に治して終わりだが。

 

 

「う……」

 

「お前は要らないな」

 

 

 蹲って意識を取り戻そうとしている小太りの男、おそらくだがこの家電の店員を見下ろす。

 

 良かったな、オマエの存在は世界に最後まで記録されるだろう。

 

 

 ソレに手を翳して魔法を使用する。

 

 

 店員と思われるソレは意識を取り戻し、無言で移動した。

 

 

 これで良い。

 

 さて_____遅くなって悪いな綾小路。

 

 

「再生……」

 

 

 俺は綾小路の傷を完全に癒やす、後遺症も残らない、お前が受けたこの傷を覚えているのは俺だけだ。

 

 ここに目撃者は居ない、念の為再生魔法で傷を癒している間に、探索魔法と索敵魔法を合わせて使ってみるが特に問題無し。

 

 仮に探索と索敵魔法を使う前に他人に見られてしまってもそこまで困らないだろう。

 

 結局の所。未知を既知として理解出来る人間はこの学校には誰も居ない。

 

 俺が魔法使いだと知られる事はないだろう。

 

 

 完全に治ったのを確認、それと同時に緊急用の魔法が使えなくなった事を理解する。

 

 俺は、ふっーっと一息した後に壁にもたれて、懐にある煙草____っとと。

 

 ここに来るまでの仕事のルーティーンをしそうになった、そもそも煙草は無いし、いや教員用に売っているのを目撃しているから、やろうと思えば盗んで吸えるけど、それはさておき。

 

 二ヶ月振りに何回も魔法を使ったが、やはり強く、そして便利だ。

 

 だからこそそれに驕ってはいけない、溺れてはならない、その想いを忘れないようにしなければならない。

 

 感じている全能感に身を任せるな。

 

「んにゅ……」

 

 地面で眠っている一之瀬がそろそろ起きそうだ。

 

 それを見て俺は、魔法使い側に寄っていた思考を切り替える。

 

 

 ところで。

 

 

 今日、姫野と遊べるかなあ……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後の話をしよう。

 

 眠りから覚めた一之瀬、綾小路。それから佐倉愛理と名乗った女子生徒は自分の記憶があやふやなのに?を浮かべていたが、俺が来た時既に眠っていたぞと少し揶揄う感じで言って誤魔化した。

 

 どう誤魔化しても俺に追求される事はないだろう、この状況になった発端の男は俺が通報して連れて行った事にしたし。

 

 そうすれば三人共通して多少違和感はあるけど何とかなった、という事実だけが残る。

 

 その事に綾小路は深く考えていた様で、時折俺の目を探る様に見てきたが、やがてそれも無くなった。

 

 俺から見て綾小路に魔力らしいものは感じられない、だが魔法に抗えたと言う事は、何かのきっかけで魔法使いになれる可能性があるかもしれない。

 

 過去にも何人かいた、その誰もが魔法を使う事は出来なかったが、綾小路の場合、魔法を既知として理解出来る可能性はある。

 

 こいつは確実にあっち(天才)側の人間だからな。

 

 ……これは青春とは違う、卒業後の楽しみになる可能性が出て来たな。

 

 それはさておき、この話はもう良いだろう。

 

 

 綾小路、それから一之瀬から改めて今回の事件について聞いてみると、どうやら監視カメラを買って特別棟に設置し、そこに呼び出して訴えを取り下げる様脅したようだ。

 

 なるほどそのやり方か、と少し意外だった、何が意外と言うと一之瀬がそれに賛同したからだ、他に思いつかなかったのだろうか。

 

 それでもやはり意外だ、そうか……案外、こういうところは善性でも悪性でも無いのかもしれない。

 

 相手が正々堂々とやるなら自分達もそうする、相手が不正をするのなら、已む無ければこちらも同じ事をする。その考えを一之瀬が出来る事はBクラスがAクラスを目指すのなら、収穫だろう。

 

 俺?俺なら監視カメラは買わない、魔法を使うならそれを使うが、使わないなら、そうだな。

 

 ボイスレコーダーを使って相手の隙を突いてから言及を始めるかもしれないな、複数のボイスレコーダーを持って使い分ければ、こちらに都合の良い音声を合成してそれを提出するかもしれない。

 

 他には、龍園と同じ土俵。つまりは暴力で解決する手もある、これは諸刃の剣にも近い行動だから、いざやるかと言われるとそこまでではないが。

 

 

「それじゃあ私はここでっ、呼び出してごめんね倉上くん」

 

「大丈夫だ」

 

「あ……なら私も、その。ありがとうございました、綾小路くん、一之瀬さん。それから、倉上さん」

 

「じゃあな佐倉、何かあれば。連絡してくれ」

 

「うんっ……ありがとうね、綾小路くん」

 

 

 一之瀬と佐倉は各々それぞれの方向へ向かっていく。しかしあの佐倉という女子生徒、メガネ絶対外した方が可愛いと思うんだが。

 

 いや、かわいいからストーカーされたのか?具体的な事は聞かなかったが、容姿が原因の問題事は社会人時代にも何度かあったから、怖いな。

 

 さてどうするかと思い、ふと俺が動かないのを立ち止まって見ている綾小路と目が合う、てっきり綾小路も何処かに行くかと思ったのだが。

 

「不可解な事がある、だが……今は良い」

 

「そうか、それでこの後はどうするんだ?」

 

「生徒会室に行って、見届けて終わりだ」

 

「どうだった?この遊びは」

 

「そうだな……はっきり言って、倉上との遊びよりは楽しめなかった」

 

 お?何だーこいつ、可愛いやつめ。

 

 しかしそうか、やはりそうか。綾小路は心底、AクラスとかDクラスとか、自分の心情的にはどうでも良いのだろうな。

 

 綾小路なら、訴えを取り下げる以外の方法でも出来た筈だ、俺の様に魔法を使う事は出来ないだろうが、監視カメラを取り付けるやり方まで行き当たるなら、もっと攻撃的な思考を展開する事も出来るはず。それをせず現状維持に止めるか。

 

 一之瀬の言葉からは堀北という女子生徒がこの騒動を止めたと言っていたがそれはまずあり得ない。

 

 あり得るとするなら、綾小路がそれとなくその堀北に助言したのだろう、自分の思考を隠しながら、一言二言話せば、勘や思考力の高い人間は勝手に察する。

 

 ……そうか。

 

「綾小路、今回で次の遊び先は見つかったか?」

 

「……遊びと言えるかは、まだ確定出来ない」

 

「そうか。ちなみに綾小路はあの佐倉とかいう女子を狙うのか?」

 

「狙う?」

 

「彼女にするのか?」

 

「え、いや。待ってくれ……確かに佐倉はかわいい、容姿が優れている」

 

「ああでも綾小路、これはただの勘だけどギャルっぽい女の子からその内好かれそうだし、それもありだぞ」

 

「まじか、嬉しいな。いや違う、何でそんな話になった?」

 

「恋バナは青春ポイントが高いんだ、そして綾小路。俺はお前に彼女が出来て、その頃には俺も姫野と付き合っているとする。するとだな」

 

「お、おう」

 

「ダブルデートができる」

 

「ダブルデートだと」

 

「そうだ、これは……もう言わなくても、わかるな」

 

「倉上、オレに彼女は出来るのか……?」

 

「お前は俺より容姿が良い、そして綾小路、しっかり聞いてくれ」

 

「な、なんだ」

 

「女の子は……ギャップに弱い。なんか良い感じな所でちょっと凄いところ見せたら、お前は彼女ができる!」

 

 そう俺が声を高々に言うと、綾小路は無表情ながらも若干ほんの少しだけ目を見開いたような気がする。

 

 ちなみに俺はこのギャップを上手く扱えていない気がする、なので綾小路、この技はお前に託した……ッ!

 

 

「倉上、オレはやるぞ」

 

「ああ、所で生徒会室は行かなくて良いのか?」

 

「……もう行かなくても良い気がしてきたが、一応行ってくる」

 

 綾小路はそう言って心なしか少し機嫌がいい様に見える様な歩き方?様子?で生徒会室に向かい出した。

 

 俺もついて行っても良いんだけど、自分達が負けた事に疑問を持った龍園が生徒会室に寄りそうだ、その時にDクラスとBクラス……いや、少し違う。俺もDクラスの生徒に関わりがある事を知られたくないからな。

 

 その内知られるかも知れないが、その時はその時に考えよう。

 

 こんな思考はただの言い訳だ、本音?

 

 魔法連発で使ってほんのちょっと気持ち的な疲れを癒しに姫野に会いに行きますよ〜行くぜ行くぜ!

 




実際ストーカー何しでかすか分からんしナイフ持ってたら刺されてたかもね、てことで二巻終了でづ。
明日ぐらいに投稿しま。

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