ウクライナ南部住民投票、強行か=親ロ派「共和国」で占領正当化
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【4月26日 時事通信社】ウクライナ侵攻を続けるロシアのプーチン政権が、占領下のウクライナ南部ヘルソン州で「住民投票」を近く強行するという見方がある。「独立を支持する圧倒的な民意」を演出した上で、東部ドネツク、ルガンスク2州の親ロシア派支配地域のように、かいらいの「人民共和国」を樹立するのが目的だ。しかし、東部2州と異なり反ロシア感情が強く、住民投票の計画は何度も延期されている。
ウクライナのゼレンスキー大統領は23日の記者会見で、南部で「偽りの住民投票」が行われるなどした場合には「あらゆる交渉プロセス」から撤退すると警告。ただでさえ停滞する停戦交渉が頓挫する可能性もある。
北部キーウ(キエフ)州の制圧に失敗した後、ロシア軍は短期的には東部2州全域における親ロシア派の支配拡大を狙っている。今月22日にロシア軍幹部は、黒海やアゾフ海に面した南部各州も支配下に置く方針を示した。ロシアは、ウクライナから海への出口を完全に奪い、ゼレンスキー政権を圧迫する戦略を立てているもようだ。
ヘルソン州は、ロシアが併合したクリミア半島の「付け根」に位置し、南部の中で極めて重要な地域だ。住民投票は民主的な手続きで行われるわけではなく、ロシアにとって都合の良い結果が出ることが確実視されている。英国防省は24日、ヘルソン州の住民投票について「占領の正当化が目的。(ヘルソンは)クリミア半島への陸路確保と南部の支配に向けたカギになる」と分析した。
もっとも、ヘルソン州の支配をめぐっては、プーチン政権の「誤算」もある。2014年に軍事介入でクリミア半島を併合したり、東部2州を紛争地化したりした結果、ヘルソン州で反ロシア感情が強まっている。州都ヘルソンではロシア軍による占領後、ウクライナ国旗を掲げる住民による抗議デモが続いた。ヘルソンのコリハエフ市長の推計では、人口約30万人のうち約40%がロシアの占領から逃れようとして脱出した。
ロシアは力ずくで南部の支配を進める構えだ。米メディアによると、ヘルソン以外の南部の占領地で親ロシア派の「市長」を次々と任命。ヘルソンだけでも、ロシアにとって「好ましからざる人物」を中心に200人以上が行方不明になっているという。ウクライナ各地に広がる軍事作戦でロシア側に加勢させるため、18~65歳の男性を「徴兵」する恐れがあるとも指摘されている。(c)時事通信社