日本で初めて「日本経営品質賞」を2度受賞(2001年度、2010年度)した小山昇氏の新刊『1日36万円のかばん持ち――三流が一流に変わる40の心得』が話題となっている。第5刷が決まり、5/9の「日経新聞」にも掲載された新刊の中から、小山氏に「三流が一流に変わる心得」を紹介してもらおう。

「責任を取る」とは
どういうことか?

「かばん持ち」なのに<br />「かばんを持たなかった」社長は、<br />なぜ、「公開処刑」されたのか?小山 昇(Noboru Koyama)
株式会社武蔵野代表取締役社長。1948年山梨県生まれ。
「大卒は2人だけ、それなりの人材しか集まらなかった落ちこぼれ集団」を毎年増収増益の優良企業に育てる。2001年から同社の経営のしくみを紹介する「経営サポート事業」を展開。現在、600社以上の会員企業を指導しているほか、「実践経営塾」「実践幹部塾」「経営計画書セミナー」など、全国各地で年間240回以上の講演・セミナーを開催。1999年「電子メッセージング協議会会長賞」、2001年度「経済産業大臣賞」、2004年度、経済産業省が推進する「IT経営百選最優秀賞」をそれぞれ受賞。日本で初めて「日本経営品質賞」を2回受賞(2000年度、2010年度)。2004年からスタートした、3日で108万円の現場研修(=1日36万円の「かばん持ち」)が年々話題となり、現在、70人・1年待ちの人気プログラムとなっている。『【決定版】朝一番の掃除で、あなたの会社が儲かる!』朝30分の掃除から儲かる会社に変わる『強い会社の教科書』(以上、ダイヤモンド社)、『99%の社長が知らない銀行とお金の話』『無担保で16億円借りる小山昇の“実践”銀行交渉術』(以上、あさ出版)、『【増補改訂版】仕事ができる人の心得』(CCC メディアハウス)などベスト&ロングセラー多数。
【ホームページ】 http://www.m-keiei.jp/

 ラブリークィーン株式会社(アパレル/岐阜県)の2代目である井上真典社長は、まだ課長だった時代(父親が社長)に、私の「かばん持ち」をしたことがあります。

 そしてあろうことか、「かばん持ち」なのに、かばんを持とうとしなかった唯一無二の存在。まさに、職務怠慢!

 さて、私はどうしたでしょうか。

 私は、経営サポート会員とのランチの席で(しかも、2代目の父親がいる前で)、彼を公開処刑にし(笑)、全員の食事代を井上社長(当時は課長)に支払わせた。

「小山さんに、『全額支払え』と命じられたとき、正直、意味不明でした。『大した給料をもらっているわけでもないんだからさぁ、ちょっと待ってよ。このおっさん、何を言っているんだ?』と思ったんです(笑)。おやじは、隣で笑っているだけですし」(井上社長)

 どうして、私は食事代を支払わせたのでしょうか?

 それは、井上社長に「責任を取らせるため」です。責任を取るということは、経済的に「損」をすることです。

「責任を取らない」とは、「経済的に損をしない」ということであり、つまり、「出世をしない、社長にならない」ということです。

 当時、井上社長は課長でしたが、父親のあとを継ぐのであれば、理不尽な思いを受け止めて、「申し訳ありませんでした」と自腹を切る覚悟を持たないといけません。

 井上社長は、「最初はイラッとしましたけど(笑)、身銭を切ったからこそ、『かばん持ちは自分の仕事である』『絶対にかばんを持たなければいけない。そうしないと、お金を取られる』ということが実感できた(笑)」と言います。

責任は、社長にしか取れない。そして、人間は、失敗からしか学べない
 井上社長は、「かばん持ち」初日にして、そのことを学ぶことができたのです。