やっぱり今、一番問われているのは質の高さだと思う
──そして「M-1グランプリ」(テレビ朝日系)の休止にともない、'11年にはそれに代わる漫才コンテスト番組「THE MANZAI」を立ち上げて、やがて現在の「ENGEI グランドスラム」「THE MANZAI プレミアマスターズ」(共に'15年~)へとつながっていくわけですね。
「『M-1』は、もちろん素晴らしい番組だと思うんですけど、それとは違うベクトルで、『僕らフジテレビが漫才コンテストをやったらこうなりますよ』という思いで作ったのが、『THE MANZAI』なんですよ。一応優勝者は決めるけど、出場者全員がウケて誰も損しない漫才のお祭り、というのが僕の理想だったので。
そして、その後に始まった『THE MANZAI プレミアマスターズ』や『ENGEI グランドスラム』は、ある意味では、コンテスト時代の『THE MANZAI』に注いでいたエネルギーをそのまま持ち越して作った番組というか、ネタ番組の決定版を作ろうという強い思いで立ち上げた番組です。だから、今までだったら『断られるんじゃないかな』と声を掛けられずにいたような、いわゆる大御所と言われる方々にも声を掛けさせていただいて。
やっぱり、芸人さんにとってネタというのは、彼らのアイデンティティーそのものだと思うんです。どんなベテランの方も、「目の前のお客さんを笑わせられるかどうか」という極限の精神状態で舞台に立たれている。だからわれわれも、それにふさわしいセットや小道具を用意するように心掛けています」
──ちなみに、爆笑問題の太田光さんもラジオ番組「火曜JUNK 爆笑問題カーボーイ」(TBSラジオ)で、「ENGEI グランドスラム」に懸ける思いの丈を熱く語っていましたね。
「ああいうふうに言ってもらえるのはうれしいですよね。『ENGEIグランドスラム』に全回出演してもらっているのは爆笑問題さんだけなんですよ。決して演者さんに褒められたいわけじゃないですけど、『ENGEI グランドスラム』は、芸人さんがちゃんと気持ちを懸けられる場所として存在させ続けたいとは思っていて。芸人さんたちから『次も頑張ります』と言ってもらえるような努力はしたいですね」
──最後に、今後の展望などについてお聞かせください。
「これからは、『お金を払ってでも見たい』と思ってもらえるようなものを作りたいですね。人々のテレビ離れが進んでいるなんて言われてますけど、それは単に、テレビの受像機で見ることから離れているだけなんじゃないかと僕は思っていて。テレビから離れているわけではないような気がするんですね。だから、視聴率うんぬんとは別のところで、ネット配信の有料コンテンツのような、ビジネスとしてちゃんと成立するものを作りたいという思いもありますし、その一方で、無料で見られる既存のテレビメディアの中でも、みなさんが『お金を払ってでも見たい』と思えるぐらいのものを作らないといけないとも思っています。やっぱり今の時代、一番問われているのは質の高さだと思うので。そういう意味では個人的には、オープニングの映像がしっかり作ってあって、結末もしっかり作り込まれている…という番組を作りたいなと。いつの間にか始まって、いつの間にか終わっている番組は好きじゃないんです。古い考え方かもしれませんけど(笑)、一個の“作品”として、きちんと観賞に堪え得る番組を作っていくのが理想です」
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