照明部から制作部へ異動すると、着実に実績を重ね、「爆笑レッドカーペット」('07年~)というヒット番組を世に送り出し、その後も「THE MANZAI プレミアマスターズ」や「ENGEI グランドスラム」など、フジテレビを代表する大規模なお笑いネタ番組を次々と手掛けている藪木健太郎氏。お笑い芸人へのリスペクトを核にして番組を作る彼の姿勢には、多くの芸人が信頼を寄せている。そんな藪木氏に、これまで携わった番組の経緯と共に、ネタ番組に対する思いの丈や、テレビマンとしての信条を語ってもらった。
“人間”が絡んでいる、ライブ感のある番組が好きなんです
──藪木さんは、まず最初に照明スタッフとしてテレビ業界に入ったというのは有名なお話なんですが…。
「フジテレビでは制作より技術職の採用試験のほうが早くて、まず先に技術で採用が決まったので、そのまま入社したんですけど、当初から制作志望ではあったんですよ。でも、技術職もなかなか面白くて。例えば音楽番組で、この曲のサビのイメージはこうだから、夕陽を浴びているような感じの画にしよう、というように空間をデザインしていく。非常にクリエイティブな作業なんです。
そうして照明の仕事の面白さにハマっていくうちに、今度はもっと総合的な立場で、より大きなものを作りたい、テレビという四角い箱の中で“素敵なウソ”をつきたい、という思いが強くなっていって。それで制作部への異動届を出して、ADとして再出発したんです。ちょうど30歳のときですね」
──ADとしてはどんな番組を担当されたのでしょうか。
「最初は『力の限りゴーゴゴー!!』('99~'02年)ですね。それと並行して、上司から『お前は年を取ってるから、促成栽培する』と言われまして(笑)、CSで『OFJ』('02年ほか、フジテレビ721)というネタ番組のディレクターを見よう見まねでやらせてもらいました。8組の芸人さんのネタを見た100人のお客さんが、自分の価値観で1000円を自由に振り分けてもらって、そのお金がそのまま芸人さんのギャラになる、というシステムの番組で。今やっても面白いんじゃないかな。ネタ番組という意味では、照明時代からずっと『爆笑ヒットパレード』('68年~)にも関わっていましたし、割とスムーズに楽しく取り組むことができましたね。でも、その後、こんなに長くネタ番組に携わることになるとは思ってなかったですけど(笑)」
──「“素敵なウソ”をつきたい」という意味では、ドラマを作りたいという願望はあったんでしょうか?
「照明時代に、『踊る大捜査線』シリーズ('97年ほか)とか、『北の国から』のスペシャル('83~'02年)にも関わっていたので、いつかはドラマも撮ってみたいという気持ちはいまだにありますね。今でもコントを撮るのは大好きですし。
僕の場合、決してお笑い番組だけにこだわっているわけではないんですよね。正直、こういうインタビューなんかで『お笑いの作り手』とか紹介されると、おこがましいというか、ちょっと違和感がある。自分では、お笑いの作り手というより、『テレビ屋』だと思っています。僕の仕事はあくまでも、面白いテレビ番組を作ることなので。だから、作り物のお笑い番組も好きだし、音楽番組も好きだし…紐解いていくと結局、自分は“人間”が絡んでいる番組が好きなんですよね。言うなれば、ライブ感のある番組。歌でもコントでも、演者とカメラとの間にお客さんを置くことによって生まれる、演者さんの真剣な姿というか、一歩前に重心が掛かる感じが好きなんでしょうね(笑)」
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