県内ニュース

04月19日 19:40

どうなる?赤字ローカル線 大糸線の存続は 募る住民の不安 《新潟》

どうなる?赤字ローカル線 大糸線の存続は 募る住民の不安 《新潟》
新潟県の糸魚川市を走る大糸線です。運営するJR西日本は4月11日、その収支を初めて公表しました。コロナ禍の前でも年平均5億7000万円の赤字。今後の在り方が見直されようとする中、沿線の地域では不安が広がっています。

朝、20分ほどかけて歩いて駅に向かう男性の姿がありました。糸魚川市小滝地区で暮らす丸山慎一さん64歳です。着いたのはJR小滝駅。大糸線の列車が発着します。
丸山さんはいまこの大糸線の将来に不安を抱いています。

【丸山慎一さん】
「ネットでいろいろ言われてる、無くなるとかなんとかって。急に無くなるって言っていないんだけどね」

視力が弱く車の運転がでない丸山さん。通勤で40年以上、大糸線を利用してきました。

【丸山慎一さん】
「帰りになるとやっぱりさみしいよ、一人とかだから」

地域の生活を支えてきた大糸線。その存続に危機感が広がっているのです。

大糸線は長野県の松本駅から糸魚川駅までをつないでいます。松本駅から南小谷駅まではJR東日本が運営。その先の糸魚川駅まではJR西日本が運営しています。

必要としている乗客がいる一方で利用者の数は年々、減少しています。JR西日本が管轄する区間では1日の平均利用者数がピーク時、1282人でした。しかし、2020年度は50人まで減っています。

そうした中、4月11日、JR西日本は利用者が少ないローカル線の収支を初めて公表。大糸線は新型コロナウイルスの影響がない2017年度からの3年間でみても年平均5億7000万円の赤字でした。

【4月13日 JR西日本 長谷川一明社長】
「全てをこれまで通りとはなかなか難しい。現実問題、難しくなってきておるので、その中で鉄道として仮に維持することならば、どうしていくことが望ましいのか、地域の皆様とそういったことを一緒になって議論させていただきたいということでございます」

JR西日本は赤字のローカル線について線路や駅などの管理と列車の運行を分ける「上下分離方式」を検討するなど、運営の在り方を 沿線地域と議論する考えです。

これを受けて糸魚川市長は・・・

【糸魚川市 米田徹市長】
「通学通勤の生活だけでなくて観光や産業、防災など当地域において欠かすことのできない大切な公共インフラでございます。今の段階におきましては、鉄路以外ないととらえております」

大糸線は沿線の観光にも貢献してきました。長野との県境にある平岩地区。線路沿いに建つのがホテル國富です。源泉かけ流しの温泉、そして目の前に広がる景色が自慢です。

【ホテル國富 木島健太郎支配人】
「景色の方もこちら大糸線と姫川が見えるような景観になっておりまして」

清流・姫川と豊かな自然。そこを大糸線の車両が走り抜けます。60年続くホテルの歴史は大糸線とともにありました。

【ホテル國富 木島健太郎支配人】
「もともと長野県側にあったんですけどもそちらの館が半分流されてしまいまして、その後平成10年に移って、再建したという形になっております」

1995年。糸魚川市などを襲った7・11水害。姫川の堤防が決壊し大糸線の線路や鉄橋が流されました。ホテル國富も濁流に飲みこまれ、宿泊棟が流されるなど大きな被害を受けました。

それでも大糸線は2年4か月後に全線が開通。ホテル國富も対岸に場所を移し、営業を再開しました。

これからも大糸線とともに地域の観光を盛り上げたいと考えています。

【ホテル國富 木島健太郎支配人】
「大糸線のコアなファンが多いですので、できれば存続をしていただいて当館も一緒に大糸線と歩んできておりますので、当館も一緒にがんばって続けていきたいなと思っております」


およそ90人が暮らす糸魚川市小滝地区。市街地まで行くバスはなく、大糸線が命綱となっています。
ここで暮らす児玉晴美さん・64歳。大糸線の存続を願ってきました。

【児玉晴美さん】
「大糸線がないと困りますよね、手段がないから、買い物するにも 病院行くにもそんな感じですよね」

地元では過去にも廃線を危ぶんだ時期がありました。きっかけとなったのは北陸新幹線の開通です。

新幹線の開業に伴い、並行して走る在来線はJRの経営から離れ、第3セクターが運営することになりました。その結果、県内にあるJR西日本管轄の路線は大糸線だけとなりました。

当時から赤字だったため廃線となるのではないかと不安が広がっていたのです。

地元の住民は「大糸線・北陸線を守る会」を設立。JR西日本に存続を求めてきました。会の代表を務めていたのが児玉さんの父、丸山明三さんでした。

【丸山明三さん(当時)】
「沿線住民の高齢化がどんどん進んでいる。今は車があるけど、もう10年も経つと車を運転できない人がいっぱいいるわけですよ。そうすると生活の足として大糸線が大事だと」

丸山さんは5年前に亡くなりましたが、会の活動が実り、大糸線は現在まで続いています。

【児玉晴美さん】
「(父親は)とにかく頭の中は四六時中寝ている時以外は地域のことばっかり、小滝地区、あと糸魚川のこと」

小滝地区はこの10年間で人口が半数に減少。年々、大糸線の利用者が少なくなっているのも現状です。

【児玉晴美さん】
「うちの母が今88歳ですけど、こんなに損失だったら私たちの勝手で廃止しないでくれって言えないよねって、なんだか切ないけどねって。でもそうすると色々考えてもらわないと安易に廃止というので賛成もできないねって」

ローカル線の収支を公表した2日後。JR西日本の長谷川一明社長は赤字のローカル線について廃線などを前提としないと強調しました。

【JR西日本 長谷川一明社長】
「それぞれ自治体、私どもとしてもいろんなお話をさせて頂きながら模索をしていくことになるかなと思います。何々ありきというところで私たちどもとしてはやろうとしているところではございません」

毎日のように大糸線で通勤する丸山慎一さんです。車は運転できず、大糸線の行く末が生活に直結します。

【丸山慎一さん】
「(乗客数は)お盆過ぎるとガクンと落ちる、もう少し観光の人が 乗ってくれればいいんだけどね、観光客が。(電車が)無くなると仕事やめますよ」

水害や北陸新幹線の開通など存続の危機を乗り越えてきた大糸線。これからも生活や観光のインフラとして地域を支えてくれるのか。住民は不安を募らせています。


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