※結論だけ見たい人は4.結論は?まで読み飛ばしてください。
Fabrizio Anteri氏がGPで不正なデッキ操作により失格処分を受けました。
FABRIZIO ANTERI DISQUALIFIED FROM GRAND PRIX MANCHESTER
http://magic.wizards.com/en/events/coverage/gpman16/fabrizio-anteri-disqualified-grand-prix-manchester-2016-05-28
そしてその失格行為の内容がイゼ速の記事で反響を呼んでいます。
現在開催中のGPマンチェスターにおいてマスターレース首位のFabrizio Anteri選手が失格に
http://www.izzetmtgnews.com/archives/20717
Fabrizio Anteri氏の失格理由は「mana weaving」という手法を使ったことです。
「mana weaving」とは、
①デッキを土地とそれ以外に均等に配分し、
②十分なシャッフルを行わない
ことで土地事故を減らす行為です。
①についてはデッキやデッキリストを作り終わった直後に必ず発生する状況です。なのでこの手法の本質は①ではなく②にあります。
MTGのシャッフルは非常に難しい問題です。シャッフルはゲーム中に頻発する行為で、不十分だと今回のように問題になり、やりすぎると遅延行為になります。
この記事ではどのようなシャッフルを行うのが適切なのか考えていきます。
1.どのようなシャッフルがあるのか
一般に知られているシャッフル方法は以下の3つです。
この3つに加えてカット(デッキの上半分と下半分を入れ替える行為)が一般的に使われています。
この中のどの方法にも問題があります。
ファロー:混ざりやすいが上のカードは上に、下のカードは下に留まりがち。
ディール:一番カードが散らばるがそもそもシャッフルではない。
ヒンズー:カードの上下関係は変わるが隣り合ったカードが散らばりにくい。
なので、これらのシャッフル方法を織り交ぜる必要があります。
と、ここまでが一般的なシャッフルの記事によく書かれていることです。
ですがこの記事ではより踏み込んで、どのようにこれらのシャッフルを織り交ぜれば良いのかを考えます。
2.より均一にカードを混ぜるためには
より均一にカードを混ぜるために、どのような順番にシャッフルすればいいかについて、興味深い論文があります。
TCGにおけるシャッフル手法に関する計算機実験を用いた考察
http://ci.nii.ac.jp/naid/110008583071
注目すべきは複数の手法の組み合わせ(3.5節)の部分です。
要約しますと、
①ディールシャッフルを1回行うとカードが混ざりやすい。2回目以降は効果がない。
②ディールシャッフルを最初や最後に行うより、途中に挟む方がカードが混ざりやすい。
となります。
ディールシャッフルは時間がかかるので基本的にゲームの合間にしかやりませんが、1回行うことでカード枚数の確認と大きなシャッフル効果が得られます。
3.「紳士的」「公正」にカードを混ぜるためには
なんの制約もなくカードをよく混ぜたいならシャッフル回数を増やせばいいだけです。
しかし実際のプレイでは「紳士的」「公正」にシャッフルする必要があります。
ここでいう「紳士的」「公正」とは、
・相手にイカサマを疑われないようなシャッフルを行う
・ある程度相手のシャッフル時間と歩調を合わせる
ということです。
・相手にイカサマを疑われないようなシャッフルを行う
自分がイカサマをしていなくても、相手に疑われるようなシャッフルは慎むべきです。
具体的には、ファローシャッフル、ヒンズーシャッフルを連続で繰り返す行為です。それぞれトップ操作、並び順操作を疑われかねません。
これはファローシャッフル、ヒンズーシャッフルを交互に繰り返すことで解決します。
また、ヒンズーシャッフルはカットの延長に見られがちなので、どちらか片方を行うならファローシャッフルをするべきです。
・ある程度相手のシャッフル時間と歩調を合わせる
限られた試合時間の中で、自分のシャッフルが終わった後に相手がディールシャッフルを始めたら少し嫌な気分になると思います。
ディールシャッフルはなるべく早いうちに行うべきです。
4.結論は?
以上のことを鑑みると、最も適切なシャッフルは、
①ファロー
②ディール
③ヒンズー
④ファロー
⑤ヒンズー
⑥ファロー
(⑦ヒンズー)
(⑧ファロー)
以下繰り返し
となるのではないでしょうか。
対戦中は②のディールシャッフルを飛ばしましょう。
5.付録1 自分のシャッフルは十分?
Michael A. Rutterが自分のシャッフルが十分かどうか簡単に見分ける方法を紹介しています。
かなり興味深い記事なので翻訳記事を読むことをおすすめします。
Am I Shuffling Enough - Or Correctly, For That Matter?
http://www.starcitygames.com/magic/misc/4004_Stats_101_Am_I_Shuffling_Enough_Or_Correctly_For_That_Matter.html
【翻訳】僕のシャッフルはデッキを十分に無作為化できてるんだろうか?/Am I Shuffling Enough - Or Correctly, For That Matter?【SCG】
http://regiant.diarynote.jp/201201202104281778/
Fabrizio Anteri氏がGPで不正なデッキ操作により失格処分を受けました。
FABRIZIO ANTERI DISQUALIFIED FROM GRAND PRIX MANCHESTER
http://magic.wizards.com/en/events/coverage/gpman16/fabrizio-anteri-disqualified-grand-prix-manchester-2016-05-28
そしてその失格行為の内容がイゼ速の記事で反響を呼んでいます。
現在開催中のGPマンチェスターにおいてマスターレース首位のFabrizio Anteri選手が失格に
http://www.izzetmtgnews.com/archives/20717
Fabrizio Anteri氏の失格理由は「mana weaving」という手法を使ったことです。
「mana weaving」とは、
①デッキを土地とそれ以外に均等に配分し、
②十分なシャッフルを行わない
ことで土地事故を減らす行為です。
①についてはデッキやデッキリストを作り終わった直後に必ず発生する状況です。なのでこの手法の本質は①ではなく②にあります。
MTGのシャッフルは非常に難しい問題です。シャッフルはゲーム中に頻発する行為で、不十分だと今回のように問題になり、やりすぎると遅延行為になります。
この記事ではどのようなシャッフルを行うのが適切なのか考えていきます。
1.どのようなシャッフルがあるのか
一般に知られているシャッフル方法は以下の3つです。
ファロー(またはコンバイン)
二束に分けたカードを組み合わせていく。カードとカードの隙間に挿しこんでかみ合わせていくイメージ。
無作為化しやすい手法であり、スリーブを使用している場合はカードとカードの間に隙間ができるため技術的にもそれほど難しくない。
スリーブをしていない場合はやりづらい。また、束をやや立てないと行いづらいため、カードを見たり相手に見せてしまったりというトラブルが生じる危険性もある。なるべく束を横向きにするか、シャッフル中は目線を逸らすなどの配慮が必要。
Olivier Ruelは、デッキを傾けてのコンバイン・シャッフル中に不正を疑われて失格になった。対戦相手のデッキを扱う際は慎重に。
ディール(またはパイル)
カードを複数の束に配っていく。束の数に応じて「N山切り」などとも呼ばれる(6個の山に配る場合は「6山切り」)。
技術としては非常に簡単だが、事前に並びを覚えていればシャッフル後の順番も簡単に類推できるため、無作為化の効果は低い。また、作業に時間がかかりやすい。
公式大会においては、ディール・シャッフルのみでは十分な無作為化とは認められない。必ず他のシャッフルと組み合わせる必要がある。
ヒンズー
カードの束から一部を抜き取って上へ(または下へ)置いていく。
比較的簡単だが、無作為化にはそれほど効果的ではない。
この3つに加えてカット(デッキの上半分と下半分を入れ替える行為)が一般的に使われています。
この中のどの方法にも問題があります。
ファロー:混ざりやすいが上のカードは上に、下のカードは下に留まりがち。
ディール:一番カードが散らばるがそもそもシャッフルではない。
ヒンズー:カードの上下関係は変わるが隣り合ったカードが散らばりにくい。
なので、これらのシャッフル方法を織り交ぜる必要があります。
と、ここまでが一般的なシャッフルの記事によく書かれていることです。
ですがこの記事ではより踏み込んで、どのようにこれらのシャッフルを織り交ぜれば良いのかを考えます。
2.より均一にカードを混ぜるためには
より均一にカードを混ぜるために、どのような順番にシャッフルすればいいかについて、興味深い論文があります。
TCGにおけるシャッフル手法に関する計算機実験を用いた考察
http://ci.nii.ac.jp/naid/110008583071
注目すべきは複数の手法の組み合わせ(3.5節)の部分です。
要約しますと、
①ディールシャッフルを1回行うとカードが混ざりやすい。2回目以降は効果がない。
②ディールシャッフルを最初や最後に行うより、途中に挟む方がカードが混ざりやすい。
となります。
ディールシャッフルは時間がかかるので基本的にゲームの合間にしかやりませんが、1回行うことでカード枚数の確認と大きなシャッフル効果が得られます。
3.「紳士的」「公正」にカードを混ぜるためには
なんの制約もなくカードをよく混ぜたいならシャッフル回数を増やせばいいだけです。
しかし実際のプレイでは「紳士的」「公正」にシャッフルする必要があります。
ここでいう「紳士的」「公正」とは、
・相手にイカサマを疑われないようなシャッフルを行う
・ある程度相手のシャッフル時間と歩調を合わせる
ということです。
・相手にイカサマを疑われないようなシャッフルを行う
自分がイカサマをしていなくても、相手に疑われるようなシャッフルは慎むべきです。
具体的には、ファローシャッフル、ヒンズーシャッフルを連続で繰り返す行為です。それぞれトップ操作、並び順操作を疑われかねません。
これはファローシャッフル、ヒンズーシャッフルを交互に繰り返すことで解決します。
また、ヒンズーシャッフルはカットの延長に見られがちなので、どちらか片方を行うならファローシャッフルをするべきです。
・ある程度相手のシャッフル時間と歩調を合わせる
限られた試合時間の中で、自分のシャッフルが終わった後に相手がディールシャッフルを始めたら少し嫌な気分になると思います。
ディールシャッフルはなるべく早いうちに行うべきです。
4.結論は?
以上のことを鑑みると、最も適切なシャッフルは、
①ファロー
②ディール
③ヒンズー
④ファロー
⑤ヒンズー
⑥ファロー
(⑦ヒンズー)
(⑧ファロー)
以下繰り返し
となるのではないでしょうか。
対戦中は②のディールシャッフルを飛ばしましょう。
5.付録1 自分のシャッフルは十分?
Michael A. Rutterが自分のシャッフルが十分かどうか簡単に見分ける方法を紹介しています。
かなり興味深い記事なので翻訳記事を読むことをおすすめします。
Am I Shuffling Enough - Or Correctly, For That Matter?
http://www.starcitygames.com/magic/misc/4004_Stats_101_Am_I_Shuffling_Enough_Or_Correctly_For_That_Matter.html
【翻訳】僕のシャッフルはデッキを十分に無作為化できてるんだろうか?/Am I Shuffling Enough - Or Correctly, For That Matter?【SCG】
http://regiant.diarynote.jp/201201202104281778/
もし君が平均的なプレイヤーよりも土地の偏りがひどいと思うならば、ここまで述べてきた内容から君のシャッフルが十分だったのかどうかを確認することができる。
まず24枚の土地だけ表向きにした60枚のデッキを用意する。次に、意識せずに君が普段やっているとおりのシャッフルを行う。最後にデッキを1列に並べて土地が隣り合っている箇所の個数を上で行った例(※1)のように数えてみる。
土地を大きく偏らせてからシャッフルするのがいいだろう。なぜなら24枚の束になってしまった土地を綺麗にほぐせるようになれば、君のシャッフルの技術が満足のいくレベルに達したことが分かるからだ。
この手順を4回か5回ほど繰り返し、それぞれのシャッフル後の土地の隣り合っている箇所の平均値を求めればいい。※ 念のために補足しておくと、土地が3枚連続で並んでいた場合の「2枚連続で土地の箇所」は「2個」となる。「1個」じゃない。
もし君の平均値が11より高いなら、シャッフルの手順を変えることを考えたほうがいい。
(中略)
もし君が平均して12より高い数値を得るようなら、本気でシャッフル手段の改善を考えたほうがいい。
コメント
私はシャッフルが苦手なので(よく自分のデッキを吹っ飛ばします・・)対戦相手の方がシャッフル不十分に思えても、上半分と下半分を入れ替える大雑把なカットぐらいしか出来ません。
なので、記事に書かれている様な念入りかつスピーディーなシャッフルをして頂けると非常に安心して、気持ちよくプレイ出来ますね。
後半の無作為化についても興味深かったので、自分のシャッフルでちゃんとデッキが混ざっているのか確かめてみようかと思います。
大変遅くなりました。リンクありがとうございます。
こちらからもリンクさせていただきました。よろしくお願いします。
>>ポッキーさん
まさにポッキーさんの仰るとおりで、私達の大半はジャッジの見ていないところでプレイしているのですから、相手の人が安心できるシャッフルをするのが肝要なのだと思います。
一つだけ気になったのが付録の記事についての抜き出し方です。
この抜粋だけであると偏らないシャッフルがイコール無作為化のできているシャッフルのように誤解を与えてしまう気がしました。原記事ではそこについても言及してあるのでそこにも触れていると誤解の可能性も防げると思います。翻訳記事を読むことを勧めていらっしゃいますし、揚げ足取りのようで申し訳ないのですが素晴らしい記事なのでそこが気になってしまいました。
この抜粋は”土地を大きく偏らせてからシャッフルするのがいいだろう。”の部分が大変重要で、この前提のもとなら、偏らないシャッフルは、ほぼイコール無作為化のできているシャッフル(十分なシャッフル)になり、原記事でその後に述べているmana weavingは考えなくていいはずです。
確かに読みかえすと誤解を与えかねないように見えます。
該当部分を強調しておきます。ご指摘頂き、ありがとうございます。