今回は、ニッカウヰスキーの看板ブランドであるブラックニッカについてまとめてみます。

ヒゲのおじさんのウイスキー

現在、ブラックニッカは、クリア、リッチブレンド、ディープブレンド、スペシャルの4種類のボトルがラインナップされています。
クリアは1000円以内、それ以外は1000円台と、比較的購入しやすい価格帯になっています。

2010年代の「マッサン」ブームによってニッカの販売が急上昇したことで、原酒不足により、ニッカはラインナップを大幅に減らさざるを得なくなっている状況で、やりくりが難しくなっている中でも看板ブランドとして現在も売られています。

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初代は特級

て、ブラックニッカは1956年に特級ウイスキーとして発売されました。
しかし当時はヒゲのおじさんの肖像画はなく、羊皮紙柄にロゴとエンブレムだけが掲載されたものでした。

さらにリボンがボトルに巻かれ、それを止める形で封蠟がつけられ、印璽が施された手間のかかったボトルデザインをしていました。
当時の価格は1500円。普及を狙って発売された2級ウイスキーの丸瓶ニッキーが500円だったので、簡単に買えなかったと言えます。

なおこのボトルは、2016年に復刻版が発売されました。

1級ウイスキーとしてリニューアル

bn1_1965年に、1級ウイスキーとしてブラックニッカがリニューアルされました。
モルト原酒の比率が下がり、アルコール度数が42度に引き下げられた代わりに、カフェグレーンウイスキーを採用することで香りや味わいに深みを与えられるようになりました。

そしてボトルにヒゲのおじさんこと、W.P.ローリーの肖像画がラベルにつけられるようになりました。
このW.P.ローリーという人物は、キング・オブ・ブレンダーズの異名を持ち、19世紀にウイスキーをブレンドして販売する事業を始めた一人だとされています。

それ以前においては、スコッチウイスキーは現在でいうシングルモルトで製造、販売するのが当たり前でしたが、グレーンウイスキーが開発された後、それらをブレンドすることで安定した香り、味わいを保ちながら製品として出せるようになりました。
W.P.ローリーはブレンデッドウイスキー製造の先駆者として、方々にそのメリットと説いたとされています。

この2代目ブラックニッカを作るに至って、今迄はアルコールやスピリッツで代用していたものを、スコッチウイスキー同様にグレーウイスキーでブレンドできるようになったことで、ブレンダーの神様とも言えるW.P.ローリーの肖像画をラベルに入れたと言えるでしょう。


そしてブラックニッカは1985年に「ブラックニッカ スペシャル」へリニューアルされました。
宮城峡蒸溜所のモルト原酒が潤沢になったことを契機にブレンドを一新しました。

現在のラインナップ

その後ブラックニッカはバリエーションを増やし、近年では限定ボトルを出すなど、ニッカウヰスキーの看板ブランドへと成長しました。

ブラックニッカ スペシャル

先述したように、ブレイクを果たした2代目ブラックニッカを継承するボトルであり、余市、宮城峡のモルトと、カフェスチルを使って蒸溜されるカフェグレーンで構成されています。

余市モルトならではの燻製を思わせるピートを感じながらも、リンゴ、ブドウ、紅茶、バニラの香りとほどよい甘味があり、ウイスキーらしさを持ちながらも癖が強くならないよう抑え込んだ印象があります。

一時期は流通が少なかったものの、ドラマ「マッサン」の放送前後から、比較的入手しやすくなっています


ブラックニッカ クリア

ラインナップの中では唯一1000円以下で入手できるボトルです。

1997年にクリアブレンドとしてリリースされ、2011年にクリアとしてリニューアルしました。

発芽した大麦麦芽の成長を止めるために加熱するモルティングという工程において、従来はピートを燃やしていたものを、ピートを使わずに加熱する方法で加工する「ノンピートモルト」をニッカとして初採用しました。

それによって、ピートから来るスモーキーな香りが無くなり、フルーティさと樽からの香りが主体となったウイスキーにすることが出来ました。
現在はスーパー、コンビニでも広く流通し、ブラックニッカのエントリーモデルとして広く売られています。

ブラックニッカ リッチブレンド

2013年に、より香りが広がるウイスキーを目指してリリースされました。
スペシャルに比べて香りが華やかなブレンドを目指していて、特にロックで飲むことを主眼にしていました。

2022年にリニューアルが行われ、香りの華やかさを更に引き上げたようなブレンドに改められました。

ブラックニッカ ディープブレンド

2015年に発売されたボトルで、アルコール度数を45度に引き上げ、濃厚な香り、味わいを追求したものでした。

当初はピートの香りも強めで癖のある味わいのするブレンドでしたが、2018年にリニューアルされて、より熟成感の高い、まろやかさを追求したブレンドに改められました。

しばらく看板を維持し続けることになりそう

これらのように、ブラックニッカがニッカウヰスキーの看板ブランドを担っていますが、ニッカ自身が増産に対して慎重になりすぎてしまったため、10年以上熟成された原酒が潤沢になるのは2030年代に入ってからになりそうです。

かつて販売されていた竹鶴12年、余市や宮城峡の10年が飲めるのはまだまだ先になりそうです。
それまではブラックニッカのラインナップが支えざるを得ないでしょう。