亀梨和也 二人の恩師がつないだ5年ぶりの舞台 せりふを覚えず向き合った新しい自分とは

2020/11/04 11:30

 この仕事を始めてからの僕は、失敗して恥をかくことを回避するために、本能的に多くの時間を割いて準備してきたと思うんです。だって、ちゃんとしていたいし、カッコつけていたいじゃないですか。だけど、今回の稽古ではあえて準備せずに飛び込んでみよう、と。

 まさに「迷子の時間」にいますけど、迷走しているわけじゃない。「ここに行ってみようかな」「あそこに行ってみようかな」と、寄り道したり、直感で進んだりしている。どこにたどり着くかわからない状態ですけど、出口に向かって道を進んでいる感覚だけはあります。
 前川さんは、「本番初日にベストでいられればいい」とおっしゃっていました。僕は「今日、試合できます」はいらない、と解釈して、初日に間に合わせるというのは自分を信じてあげて、いまの時間を漂ってみるのもいいかなあと思っています。

 先日、(松岡)広大は「座長に合わせますよ!」と言っていたのに、速攻でせりふを覚えてきていて、僕も3日後には完璧にせりふを覚え始めるかもしれませんけど(笑)。

 初主演舞台は、故・ジャニー喜多川が手掛けた「DREAM BOYS」だった。05年から12年まで主人公のボクサーを演じ、後輩にバトンを渡した。

亀梨:10代から座長としてジャニー喜多川の舞台に立たせてもらったことは、僕の中で一番大きな経験です。先輩から受け継いだ役をいずれ自分も後輩に渡していきたいなとも思っていました。一方で、(堂本)光一君や滝沢(秀明)君がジャニーさんと舞台を作っているのを見てきて、帝国劇場で主役として立たせてもらって10年という時間を過ごすうちに、心のどこかで疑問を抱くようになったんです。

 まず、ジャニー喜多川作・演出の舞台で、作品と向き合う熱量やクオリティーも含めて、光一君を超えられる気が1ミリも感じられない自分がいました。もちろん、僕も舞台に対して全力でぶつかっていたし、誰かを超えるためにやってきたわけでもなかったけど、そう感じた瞬間があったんです。

 同時に、外の世界を見たほうがいいのではと思う自分がいた。環境に対して不満はなかったし、とても誇りに思っていたけど、だからこそ「このままでいいのか?」と自問自答しました。それで、区切りをつけさせてもらうことになったんです。

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