健康意識の高まりから、脚光を浴びている「発酵食品」。酵母や乳酸菌、糀(こうじ)など、様々な微生物の働きにより、食べ物を美味しくするだけでなく、免疫力を高めたり、栄養素を吸収しやすくするなど、私たちの体にとってメリットがたくさん!特に糀は味噌や醤油、日本酒、漬物など、古くから日本の食文化と深く結びついています。 

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原料に米を使った生糀(なまこうじ)

ここ数年、ブームになっている塩糀(しおこうじ)は料理に詳しくなくても、耳にすることが多いですよね。
私は「なんとなく、体に良さそう」と思いながらも、どうやって使ったらいいのか?と、これまで手を出せずにいました。
そんな時、出会ったのが山口県の柳井市に暮らす糀の先生です。 

柳井市日積の「日積市原サンワーク」 

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こちらが糀の先生、高井千里さんです。柳井市の山里、日積(ひづみ)という地区で、「日積市原サンワーク」を立ち上げ、日々糀に向き合っておられます。 

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日積市原サンワークの商品。生糀を原料として、塩糀や醤油糀、使いやすいパウダー状の糀粉(こうじこ)などを作っている

「まずはこれを飲んでみて」
冷蔵庫から出してくれたのは、「お婆ちゃんのあまざけ」。 

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伺った日は残暑厳しい8月下旬。「夏に甘酒……?」と思ったのも束の間、一口飲んでみると、スッキリ、ほのかな甘みがあって美味しい! 

「甘酒って、元々は夏の季語なんよ。うちの甘酒は、砂糖を一切使っていないの。糀と水だけで作った、ノンアルコール、ノンシュガー」と高井さん。 

「飲む点滴」とも呼ばれる甘酒。体にじんわりと入り込んでいくような優しさがあります。寒い時期や春先に飲むものだと思っていましたが、冷やし甘酒、いいかも! 

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「甘みとして砂糖がわりに料理やお菓子に使う人もいるよ。以前お客さんがきすい(筋張った)ゴボウに、甘酒入れて炊いたら柔らかくなった、って言ってたねぇ」 

甘酒作りに欠かせないのが「生糀」です。 

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この生糀で味噌や塩糀、醤油糀など様々なオリジナル調味料を作ることが可能。日積市原サンワークの商品もこちらを元に作られています。 

ところで、高井さんが糀に目覚めたきっかけはなんだったのでしょう? 

「おばあちゃんの味噌が食べたい」と言われて 

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65歳で退職するまで、病院や薬局、身体障害者施設など様々な職場で働いてきた高井さん。
「ちょうど退職する頃、日積に『ふれあいどころ437』※ができる計画を聞いて。私も仕事をやめたら、地域のために何かできないかなぁと考えとったんよ。それで仲間たちと『日積をそばの里にしよう!』と盛り上がってね」 

※ふれあいどころ437……柳井市都市農村交流施設。地元農産物の直売所や農家レストランがあり、収穫、調理体験などイベントも行なう。(HPはこちら)

加工場を作り、製粉機やそば打ちの道具を購入、栽培から加工、そば打ち体験などを行なってきましたが、活動は徐々に尻つぼみになりました。 

「野菜作りも考えたけど、お店に出すと売れ残りは回収しないといけない。何か日持ちするものを考えた時、息子に『おばあちゃんの味噌が美味しかったよね。あんな味噌を作ったらどう?』と言われて。同時に周防大島の起業塾『島スクエア』で、北里大学の微生物の先生と知り合って、糀のことも教えてもらったんよ」 

様々なきっかけを経て、おばあちゃん(高井さんのお姑さん)がやっていたことを思い出しながら、手探りでの糀作りがスタートしました。 

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塩糀と醤油糀。塩や醤油のように料理に使えるが、糀の旨味があるため通常より減塩が期待できる

自ら糀を作り、料理に使っていくうちにその魅力に引き込まれた高井さん。 

「糀が食材のタンパク質をアミノ酸に分解してくれるんよ。だから素材の旨味がしっかりと引き出されるの。今では塩や醤油は私には辛すぎて、塩糀や醤油糀ばかり使ってる」と笑います。 

私も早速、糀を使った料理に挑戦。高井さんに教わった、醤油糀で味付けする肉じゃがや、きゅうりを塩糀でもんで酢の物に、生姜焼き、チキングリル、トマトパスタなど、普段塩や醤油を使うところを糀に置き換えてみました。すると、肉や魚は柔らかくなり、野菜そのものの旨味や甘みにより、まろやかで奥深い美味しさを発見!もっと早く使ってみればよかった、と後悔するほどです。 

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生糀をパウダー状にした糀粉と塩糀パウダー。どちらも長期保存可能

「糀粉はヨーグルトにかけたり、ぬるま湯に小さじ1ほど混ぜて朝晩飲む人もいるよ。日常的に摂ることで顔色がよくなり体調が回復した、って喜ぶ人もいるねぇ。他に運動や生活習慣が影響するだろうし、どれくらい糀の効果があったのかは分からないけど、そう言ってもらえるのは嬉しい」 

糀の素晴らしさを広く伝えていきたい 

 

「糀はやめられない。だって体にいいもんね!みんな元気になるし!」と微笑む高井さん。 

糀以外にも、定期的に開催している味噌作りワークショップや、春の筍収穫など、年中精力的に活動されています。さらに今後はゴボウ茶の加工、地元で評判のラーメン店とコラボして、自家製メンマを作る計画や後進の育成など、やりたいことがいっぱい。
年齢を感じさせないエネルギーの源は、やっぱり糀にあるのかもしれません。 

 

 

執筆時期:2020年9月
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日積市原サンワーク 

住所|山口県柳井市日積7399-2 

TEL|090-7998-5380 

販売店舗|ふれあいどころ437、FAM’Sキッチンいわくに、田布施地域交流館、 道の駅ソレーネ周南、菜さい来んさい!下松店など 

メール|nadeshiko.1088@gmail.com 

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