今回は、2022年4月にリニューアルした、キリンウイスキー「陸」を飲んでみます。

登場から2年でブラッシュアップ

_DSC4264_01「陸」は、2020年5月に発売されたウイスキーで、実質、富士山麓 樽熟原酒50°の後継ボトルという位置づけになります。
容量は500mLと少なめであるものの、アルコール度数は50度を維持しています。

また、キリンディスティラリーの持つ御殿場蒸溜所の原酒だけで無く、海外の原酒もブレンドをしており、厳密にはワールドウイスキー(無国籍)という分類になります。

元々キリンディスティラリーの前身であるキリンシーグラムは、海外メーカーとの合弁として設立され、最初の製品であるロバートブラウンも当初のブレンドは海外の原酒のみで構成されていたこともあり、ワールドウイスキーという形態での製法では長いキャリアを持っていると言えます。

この最初のボトルについて、私もテイスティングしましたが、正直、イマイチでした。
アルコール感が強すぎて、ストレートやロックでは飲めず、ハイボールでないと厳しいというのが私の評価でした。

おそらくメーカーもこれではいかんと思ったのか、たった2年でリニューアルを行うことになりました。
ブレンド内容を改めたほか、冷却濾過を行わない製法(ノンチルフィルタード)を採用したそうです。
近年でも、濾過によって沈殿物を取り除ける反面、味わいが落ちてしまう事を理由に冷却濾過しないボトルが増えています。

また、初代富士山麓以来となるウイスキーのテレビCMを展開するなど、キリンとしても気合いの入ったものになっているように感じます。

テイスティング

今回は旧ボトルも比較として飲んでいきたいと思います。
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グラスからの香り、液色

旧ボトルは、アルコールの刺激と接着剤の香りが半々に感じられます。
液色は中庸は琥珀色です。

一方で新ボトルは、栗、カスタードクリームの香りが得られます。
液色は少し濃い琥珀色です。

ストレート

旧ボトルだと、メロン、カラメル、バニラの香りが感じられます。
味わいは、アルコールの辛みが強く、奥から苦みが続きます。

一方で新ボトルは、栗、ナシ、カスタードクリーム、ライムの香りが続きます。
味わいは、アルコールからの辛みはまあまあで、軽い苦みの後に酸味が広がります。

ロック

旧ボトルでは、接着剤の香りが揮発して、奥からメロン、ライム、バナナの香りが続きます。
味わいは、アルコールからの辛みがあり、奥から甘味もするものの辛さが勝ってしまいます。

一方新ボトルでは、柿、マンゴー、ライム、バニラ、香ばしさを持つウッディな香りがやってきます。
味わいは、多少のほろ苦さがあるものの、甘味が前に来て、旧ボトルよりもとても飲みやすくなっています。

ハイボール

旧ボトルでは、メープルシロップ、メロン、接着剤の香りが先行します。奥からナッツの香ばしさも得られます。
味わいは、多少苦みが先行した後、軽い酸味、甘味が続きます。

一方で新ボトルは、接着剤、メロン、コーン、カラメル、リンゴ、バニラの香りが続きます。
味わいは、ほろ苦さが出るものの、後から甘味が広がります。

香りが広がり、まろやかさがアップ

ストレートやロックで飲んだ際、旧ボトルは若いとげとげしさをダイレクトに感じましたが、新ボトルではそれが抑えられ、しかも香りも豊かに広がるイメージになりました。

旧ボトルでは、ハイボールや水割りなど、加水によってやっと本領を発揮する印象でしたが、新ボトルではストレートでも比較的まろやかで香りも豊かで、ロックでは甘味がしっかり感じられて50度の強いアルコール感があまり感じられなくなります。

またブレンドを改めたことによって、従来のキリンウイスキーのバーボンっぽい香りは抑え、熟成感は「~樽熟原酒50°」に近づいたように思えます。

旧ボトルは良くも悪くもハイボール向けウイスキーの傾向が強かったですが、新ボトルはストレートでもロックでも飲めて、スタンダードなウイスキーとして評価できるレベルに引き上がったように思えます。

なお価格は1500円ほどです。

<個人的評価>

  • 香り B: 栗、ナシ、カスタードクリーム、ライム、柿、マンゴーなど、飲み方で香りが豊富に感じられる。
  • 味わい B: ほろ苦さが先行した後、酸味、甘味が広がる。ストレートでもアルコール感は少なめ。
  • 総評 B: 熟成感が出てロックでも楽しめ、スタンダードなウイスキーに進化した。