――フェイトスター・アカデミー。
木 馬太郎校長とその姪
花子、二人の芸能神が見守る中
特設ステージの準備が着々と進められていました。
「新入生の皆さん、喜んでくれるといいですねっ。おじさま!」
春、それは新学期の季節。
フェスタは今年もアイドルの卵として新入生を迎えることになっています。
いま準備されているステージは、その新入生や入学希望者を歓迎する大規模イベント――
シンギュラル・フェスタのものでした。
「ええ、そのためにワールドホライゾンにも声をかけましたからね!
仙道くんの意外なコネのおかげで、彼らを呼ぶことができました」
「えっへん! にあの可愛さにかかれば、機材を借りるくらいチョロいにゃ!」
ドヤァ……と笑みを浮かべて胸を張る
仙道にあ。
「それににあも
最初に見た先輩たちのライブで、すっっっ……ごい感動したから!
新入生のみんなに、フェスタ――ううん、世界にはすごい人がいっぱいいるんだって知ってほしいんだ」
今回のイベントは未来のアイドルである観客により多くの可能性を示し、「自分のなりたいアイドル」像を見つけてもらうため
ヒロイックソングス!以外の世界のアバターでも力を発揮できるようになっています。
それは、にあはグランスタの開発部と(色々あって)仲良くなっていたことから、
厚意でグランスタの独占技術――特殊なディメンションシフトに使う機材を借りられたためでした。
「にあちゃん……!! 必ず成功させましょう!」
意気込む花子の肩越しに、「わぁ……!」とよく通る声が響きます。
それはアークの歌姫
ジェニー・ヘアドレッサーのものでした。
「スタンドガレオンよりちょっと大きいくらい? どんなライブにしよっかな~」
「観客席も大きい……こんな大勢の前でやるんですね」
「美しいな。心躍る舞台になりそうだ」
パラミタの
ジェイダス観世院校長、
そして馬太郎校長たちとは面識のあるバイナリアの
アンナ・ミハイロヴァの姿もあります。
彼らはワールドホライゾンを通して誘いを受け、快くゲストとして出演を引き受けてくれたのでした。
「皆さん! 下見にいらしたんですね。
いやぁ一度生で見たいと思っていたんです、ジェニーくんの歌はとくに」
にこやかに三人を歓迎する馬太郎校長。
そして一人ずつ硬く握手をして回る様子を見ながら、花子がふと呟きました。
「そういえば……この前のホワイトデーも張り切ってましたが、元のかわいいおじさまには戻らないんですか?」
今の爽やかナイスミドルの姿になる以前、馬太郎校長は
ずんぐりむっくりした花の妖精のような風体でした。
世間の目をくらませるため、今の姿をとったのですが――
「ムムム、この姿は外部にはウケがいいんですけどねぇ。
しかし、確かに私の逮捕騒動からほとぼりも冷めましたし……わかりました。
それでは私がどの姿でいるべきか、
未来のフェスタ生に聞いてみましょう!」
「未来の?」
アンナが首を傾げて尋ねると、校長は「はい」とうなずいて答えました。
「私も生徒たちとステージに立ち、新入生の反応を見て
評判の良かった姿で過ごすことにします!」
――こうして。
フェスタだけでなく、各世界の芸能が集まっての歓迎イベント
シンギュラル・フェスタは
その幕を開けたのでした。