吉野家文化
「うまい、やすい、はやい」を支える健全で強い吉野家文化
吉野家には独特の企業文化があります。目に見えない吉野家文化の一つ「客観的、論理的な思考」。抽象的な表現を嫌い、客観的データや論理的思考をコミュニケーションの手段として使っています。一般的に、数字や客観的なものさしによる基準がないと、物事を感覚的に評価してしまいます。感覚的な基準では正しい判断ができなくなり、皆がそれぞれ自分のエゴを主張するようになってしまうため、吉野家は、実に様々な場面で数字や論理的思考によるコミュニケーション手法が体の一部として身に付いているのです。
吉野家のコンセプトである「うまい、やすい、はやい」に表れているように、優先性の高いテーマに集中特化するという習慣も根づいています。牛丼のみという単品ビジネスを長期に亘って営んできたからこそ育まれたアイデンティティです。
まずはお客様に喜ばれなければいけない
「外食No.1のサービスの実現」を目指して
お客様からの支持は、客観的に評価できる数値と、ブランドイメージなどの客観的に測定できないものに分かれますが、私たちは、お客様からの支持の絶対的なバロメーターとして「客数」を重視しています。客数は、市場にいかに受け入れられているのかの指標であり、客数の増加こそ、お客様の支持の高まりを表すからです。客数を増加させるには二つの方法があります。一つは新規のお客様を獲得すること。もう一つは今利用されているお客様の来店頻度を高めることです。吉野家は後者がより重要であると考えており、ご来店いただいているお客様に対して、吉野家だから得られる満足を提供し続けることを大事にしています。お客様からの支持を得るために何をすべきかが常に優先的な課題であり、商品やサービスの品質を重視した活動を実践しています。今後もその姿勢は変わりません。
人材重点主義
人材の育成を重視する概念は創業期から連綿と受け継がれてきた
吉野家の長所の一つは、一度決まったことに対して、全員がベクトルを合わせてエネルギーを集中できることです。それは、従業員全員に経営感覚が浸透しているからだと考えています。吉野家の新入社員には、徹底的な初期教育が施され、店舗運営のための数値の知識、マネジメントの理論などを教えます。初期教育で叩き込まれたものが一人ひとりの中に細胞として残り、その細胞が経営の意志を自然に理解しようと働くのです。創業当時からチェーン化の第一歩として組織づくり・人材育成に取り組んできた吉野家は、人材重点主義を変わらず持ち続けてきました。
経営スタンス
吉野家事業に特化し、進化によるさらなる成長を目指す
出店・開発
出店促進策(低BEP※店舗の開発、フランチャイズ・エリアの出店加速策等)と陣容を整備し、競合視点を踏まえたエリア戦略に沿って出店を加速します。
出店・開発は、「仮説→実験→検証→導入」という手法を徹底しています。
年間目標店舗数を目標どおりに100%出店できても、その中で成功した店舗が80%だった場合、失敗した20%の店舗が成功の足を大きく引っ張り、差し引き成功率は60%を下回ることになります。それよりも、出店目標に対する達成率が80%でも、その中での成功率を100%にした方がよいと考えます。
品質 ~うまいは高めつづける~
「うまい・やすい・はやい」の3要素を志向することに変わりはありませんが、その優先順位と割合・内容は市場に応じて変化してきました。これからも変化させていく必要があります。しかし、今後とも「うまい」が最優先であり続けることは変わりありません。「うまい」は競争力の生命線だからです。
単なる価格の競争なら、資本力と規模が武器になりますが、資本力と規模をもってしても真似することはできないもの、それが「味」です。競争力の決め手となる商品の品質は、これからも最優先課題としてグレードアップを図っていきます。
安全・健康な食材の追求
食材の調達は、肉も野菜も米もタレもすべて、問屋やサプライヤー任せきりにせず、綿密なコミュニケーションで生産段階からコントロールしていることが特徴です。これまでも、原材料の調達プロセスからお客様への提供までを管理することで食材の品質や安全性を確保してきました。これからも、より安全で、健康に配慮した原材料を調達するための努力を続けていきます。
メニュー
一般常識では、「商品は飽きる」「飽きるからメニューを増やす」という概念があります。一方、吉野家では、「商品は飽きない」という観念から出発しています。お客様に飽きさせないための施策は、主力商品を固定した上で徹底的に改良していくという方法です。2004年以降、吉野家は牛丼以外の新たなメニューを開発し、複数メニュー品目の展開によるビジネスモデルを構築し、牛丼に依存しない利益構造を確立しました。今後も牛丼単品で培った運営効率の高さや、複数メニュー品目によるお客様層の拡大など、それぞれの強みを融合し、販売形態の再編を図ります。
組織ワーク
トップダウンの統制型と議論を尊重する二つの特徴
吉野家の風土には、組織を正しく対象に向かわせるための指導の仕方、人事評価の方法などが、美意識として連綿と存在しています。
トップダウン型ストロングマネジメントによる浸透性の高さとスピードは、吉野家の現場における大きな強みです。一方物事を決めるにあたって様々な角度から合理的に考え議論し、立場を超えて是々非々による有効的な選択をする、という議論を尊重する風潮ももう一つの特徴です。
ただ、いくら議論を尊重する風潮があるからといって、弁が立ち、その場を取り繕うのがうまいだけの人間が評価されたことはありません。それよりも不言実行の人間が評価されてきたことは確かです。徹底した議論の後の決定なら自分の意見が通らなくても納得できますし、不満も生まれません。地位や立場を超えて、良いことは良い、悪いことは悪いと議論することが大切で、自由に議論できる状況を自ら作り上げることは、リーダーシップの発揮にもつながると考えています。