「……」

沈黙。ほんの数秒前までは賑やかだった貸切状態の居酒屋から音が消える。
デュランダルはカツ丼の器に向けて顔を伏せたまま固まっている。
垂れ下がった髪でその表情は伺えない。

「……言いやがったよアイツ……」

ポツリと、そんなことを呟いてギムレットのグラスを煽るのはタニノギムレット。
その隣でギムレットに飲み比べを仕掛けて見事に酔い潰れたシンボリクリスエスや、更に少し離れた席に座っているゴールドアリュール達も口にはしないが、前々から概ねファインと同じことを考えてはいた。
いたが、それを口に出してはならないという暗黙の了解があった。

「……私は。彼と、そういう仲では」
「うん。嘘じゃないけどホントのことも言ってないよね？」
「騙りなど。何も」
「うん。でも、あの人とそういう関係にはなりたいんだよね？」
「……」

沈黙。
攻めるなぁ、アイツ──そんな事を考えながら酒のお代わりを注文するギムレット。
そんなギムレットの左手の薬指には銀の輝き。卒業後、チームメイトのローズキングダムと共に担当トレーナーを掻っ攫──想いを告げ結ばれて、今では三人仲良くとある牧場で暮らしている彼女からすればデュランダルの現状は酒の肴でしかない。
ちなみにシンボリクリスエスも既に自分の元担当トレーナーと籍を入れている。酒に弱いのにギムレットに度々飲み比べを挑んでは酔い潰れる彼女を回収するのはトレーナーの役目であった。

「それは。その」

カツ丼の器から顔を上げるデュランダル。
一見すると表情は平静そのものであるが、耳と尻尾は忙しなく揺れ動いている。

「いえ。容易く形にできるものではないと言いますか。彼と私は、言わば剣と鞘。共に」
「なりたいんだよね？」

早口で捲し立てて煙に巻く。そんなデュランダルの目論見はファインの一言で両断される。
名刀の切れ味はどこへやら。先行からの鍔迫り合いでは迫る影も切り払われる。

「……」

言葉に詰まり、お冷を手に取るデュランダル。冷たい水で喉を潤し、頭を冷やそうと考えたが──

「じゃあ、こういうのはどうかな……うん、そうだね。アローキャリーさんとかがあのトレーナーさんと結ばれたら」

──その仮定の話は、グラスにヒビを入れるのに十分過ぎた。

「ファイン。戯れにも限度があります」
「そうかな？　でも、あり得ない話じゃないと思うの」

圧力が増したデュランダルを前に余裕の態度を崩さないファイン。そんな二人を見て、そういえば──とふと口を開いたのはゴールドアリュール。

「あ、そう言えばこの前あの二人が並んで宝石店に入ってくのを見たような──っ」

何となく思い出しただけ。
ゴールドアリュールとしてはデュランダルを煽る意図など無く、ファインから己へと対象が切り替わった眼差しの重圧に思わず口を紡ぐ。
現役時代のレースを想起させるプレッシャー。レースにおいてゴールドアリュールとデュランダルが鎬を削ることは無かったが、もしも適正が合っていたのなら──とifを想像してゴールドアリュールの頬を冷や汗が伝うと共に口角が微かに上がった。

「もー、ダメだよデュランダル。八つ当たりしちゃ」

そんなデュランダルの重圧を真っ正面から受けて尚余裕の笑みを崩さないファイン。
なるほどこれが王族かと、ゴールドアリュールは一人頷いた。

「今はもしもの話だけど、本当にそうなっちゃうかもしれないんだよ？」
「……」
「そうじゃなくても、もしかしたら想いを告げる前に届かないところに行っちゃうかもしれない。思い出の中だけの存在になっちゃうかもしれない。あなたはそれでいいの？」

デュランダルは目を閉じて、イメージする。
遠く離れ、二度と会えなくなってしまう彼と自分を。想いは繋がっている、お互いを理解し合えている。それは間違いない。
例え会えなくなっても、遠くから見守っているような関係を──

「……嫌、です」

「だよね♪ じゃあ、行動しなきゃ！」
「しかし。今更、何を……」
「まず言葉にする事が大事だよ！　あなたは、トレーナーさんとどうなりたいの？」
「……ずっと。叶うのであれば、ずっと。側に」
「うーん……ちょっと、曖昧かなぁ」
「……どうしろと？」
「ズバリ！　あなたは、トレーナーさんのことをどう想っているの？」

シンプルで、それ故に鋭いファインの問いかけ。
その答えも簡単。だけど、口にするのはあまりにも難しい。

「……」

デュランダルはまるで唇が張り付いてしまったかのような錯覚を覚えた。
口の中がカラカラだ。飲み込む唾も出ない。

「私は……彼が……き」
「もっと！」
「私は……私は……」

口が重い。唇が開かない。
何か、水分を。重たくなった口を開かせるものを──

「焼酎をご注文のお客様──」

「！」

──あ。
少し間の抜けた声を上げたのはギムレット。
自分が注文した酒がデュランダルの口の中に消えたのだから無理もない。

「……っ」

そんなギムレットの顔は目にも入らず、デュランダルは沈みかけていた心がふつふつと沸き立つのを感じていた。
胸が熱い。心が燃えている。今なら何でも出来る気がする。ふわふわとした胸に浮かされる万能感。

「私は、彼が好きだ」

おおー……！と、シンボリクリスエスを除くメンバーにどよめきが走った。

「もっと！」

ファインが焚き付ける。普段は挑発かと切り捨てる一声も、今は胸の火に注がれる燃料だ。

「彼が可愛らしい！」
「あとちょっと！」

ギムレットも乗っかって煽る。オレの酒を飲んだんだからちっとは楽しませろという魂胆である。

「彼と一緒になりたい！」
「あと一声！」

ゴールドアリュールも更に便乗。まだ足りないか。ならばあと一押しと、シンボリクリスエスのグラスに残っていたビールを一息に流し込み──

「わかりませんか！　私は、トレーナーが欲しいと言ったのだ──！」


「……え？」

再び、居酒屋の時が止まる。
ファインモーションとシンボリクリスエスを除いた誰もが、新たな来客──デュランダルのトレーナーに目線を向ける。

「……えっと、すぐ来てくれって、呼び出されたんだけど……」

入り口で立ち尽くすトレーナー。焼けるような熱から一転、冷え切った地獄の真っ只中にいるデュランダル。酔い潰れ眠るクリスエス。気まずそうに二人の顔を交互に見比べる残りの面々。
余裕の態度を保っているのはニコニコと笑みを浮かべているファインだけだ。

「……っ！！！！」
「あ！デュランダル！」

上がり3ハロン32秒7のスピードでトレーナーの横を通り抜けて離脱するデュランダル。
慌てて彼女を追いかけるトレーナー。
ファインはそんな二人の背中を見送ると、優雅に着席してカルーアミルクを注文した。

「偶然ってあるんだねー」

王族って怖いなぁ、と。
シンボリクリスエスを除いたメンバーは、同じ感想を抱いたのであった。

唐突にサブトレ聖剣先輩のコテコテなラブコメが書きたくなった

殿下。
ファインモーション。

全部狙ってやがったなあの王族…

CV川澄で聞き覚えのあること言ってる…

日本にいるということはファインモーションは外交官やってるのかな

途中からタジタジになってるの可愛い…

タテヤマさんとかミラクルさんも見たくなるな

アローキャリーとかはおらんのかなこの飲み会

気まずい！

>アローキャリーとかはおらんのかなこの飲み会
いたら聖杯戦争起こってるからいない

アイツ…滅茶苦茶だ

ノーリーズンは地元で甲冑系のお仕事

まあファインモーションはゲームの時点でほぼ無敵だし…

今日牛は同伴してないのかアリュール

アローキャリー以外は大体みんないるけど文字数と文章量とキャラ付けが今一思い付かなかった都合で『残りのメンバー』で纏めちゃった感じ

本当にいいものを見させてもらった

>卒業後、チームメイトのローズキングダムと共に担当トレーナーを掻っ攫──想いを告げ結ばれて
パイオツファームにドナドナされた…

なんだろうかトレーナーのcvが杉山紀彰で再生される

やったぞぎむれっとぉ…こんどはわたしのかちだぁ…むにゃむにゃ

エリンの姫君はさぁ…やりたい放題なの？

このあと二人で一晩中追いかけっこして最終的に辿り着いた寺で朝焼けを浴びながら「トレーナー──あなたを、愛している」って告白する

>このあと二人で一晩中追いかけっこして最終的に辿り着いた寺で朝焼けを浴びながら「トレーナー──あなたを、愛している」って告白する
すげえなトレーナーデュランダルに追いつけるのかよ

どうでもいいけどクリスエスのトレーナー今では禿げてそうだな

このファイン日本の大使館勤務なのか飲み会の為だけに来日してるのかどっちなんだろうな

>>卒業後、チームメイトのローズキングダムと共に担当トレーナーを掻っ攫──想いを告げ結ばれて
>パイオツファームにドナドナされた…
字面だけでおっぱい

殿下はきっとアロー先輩が全然関係ない人ととっくに籍入れてるのを知ってる

親父：ザル
ファイン：輪
聖剣：そこそこ
ミラクル：ザル
ノーリーズン：少量
テレグノシス：少量
ボリクリ：ド下戸
アリュール：ザル
ってイメージ

輪！？

クーちゃんもワクっぽいな

>すげえなトレーナーデュランダルに追いつけるのかよ
陛下の前でターフを走った男だからな

クーちゃんはちょっとライバル強すぎだけどどうなんだろうな

アイルランドって言うかグレートブリテン及び北アイルランド連合王国は地味にのん兵衛の国だからな…

パイオツファームのトレーナーはいつ食われたんだろう…

>パイオツファームのトレーナーはいつ食われたんだろう…
今更復帰なんて…って腐ってた親父を必死になって説き伏せて治療して有馬でボリクリと決戦終わったあたりで

薔薇親父ファームの面子思うと一概に羨ましいと言いきれんのがミソ

>薔薇親父ファームの面子思うと一概に羨ましいと言いきれんのがミソ
癒やしは応。くんかな…

>アイルランドって言うかグレートブリテン及び北アイルランド連合王国は地味にのん兵衛の国だからな…
ビールもワインもウイスキーもブランデーもなんでも名産がある
あっちこっちにパブがある
何なら駅の中にあって電車待ちながらビール飲める

ブリテン島ビールの国だからなぁ…

全くの偶然なんだろうけど
原作デュランダルの代表産駒がエリンコート(アイルランドの宮廷)やフラガラッハ(ケルトの魔剣)なの
なんか…いいよね…

そういや後より出でて先に断つもの居たな…

なんせEU公認で欧州一の酒飲みの国認定受けてるぜアイルランド

大ジョッキ1杯では飲酒運転にならないチェコより酒飲みの国扱いなんだ…

>大ジョッキ1杯では飲酒運転にならないチェコより酒飲みの国扱いなんだ…
１８歳からしか呑めないはずなのに１５歳からの飲酒が社会問題になってる国です…

>今更復帰なんて…って腐ってた親父を必死になって説き伏せて治療して有馬でボリクリと決戦終わったあたりで
どんな名酒も封を開けたまま放置すれば味は落ちる。
その時のオレは間違いなく腐っていた。
何もかも全てを喰らうと、皐月賞・NHKマイルカップ・ダービーへ挑んだ時の熱はとうに燻っていた。リハビリを続けながらも、あの頃のような飢えを抱くことはないのだろうと日々を過ごしていたオレに──相棒は、再び火を付けてくれた。

「ギムレットにはまだ早い……だろ？」

怪我の治療に関する資料を抱えて、目にクマを作って、ボサボサの髪でオレとローズ君の部屋を訪れたアンタの顔は見れたものじゃなかったな。
だが、あの時のアンタは間違いなく一番アツかった。握られた指が火傷するかと思ったぜ。
その直後に寮長に引っ張り出されてたのは笑えたが。
んで。まあ、そこまでやらせて再起しねえってのは女が廃るってもんだ──なぁ？

「ハ……ッ　待たせたな、相棒、ローズ君」

そして──間違いなく今も尚ターフでオレを待つアイツの顔を頭に浮かべ、オレはベッドから起き上がったんだ。

みたいなシーンがあったのかもしれない

>>大ジョッキ1杯では飲酒運転にならないチェコより酒飲みの国扱いなんだ…
>１８歳からしか呑めないはずなのに１５歳からの飲酒が社会問題になってる国です…
監督下なら16歳からビール飲めるドイツより問題になるんだ…

いい……

>すげえなトレーナーデュランダルに追いつけるのかよ
「調子のいい時はウサインボルト」

>>すげえなトレーナーデュランダルに追いつけるのかよ
>「調子のいい時はウサインボルト」
ボルト並でも全然足らねえ！

速い…手が上がり3ハロン32秒…

度数も価格も高いお酒ぱかぱか開けてケラケラ笑ってる殿下は簡単にイメージできる

👁と🌹の卒業式で嬉しいやら寂しいやらで号泣する二人のトレーナーなんだけど
「おいおいギムレットにはまだ早いだろ？」って👁に笑いかけられて「そうだな。今生の別れってわけじゃないもんな」って涙を拭って
「そうですよ。これからは一つ屋根の下ですからね」って🌹の言葉に「え？」って戸惑ってると両サイドからおっぱいに挟まれてそのままおっぱいファームまで拉致されるんだよね…

>👁と🌹の卒業式で嬉しいやら寂しいやらで号泣する二人のトレーナーなんだけど
>「おいおいギムレットにはまだ早いだろ？」って👁に笑いかけられて「そうだな。今生の別れってわけじゃないもんな」って涙を拭って
>「そうですよ。これからは一つ屋根の下ですからね」って🌹の言葉に「え？」って戸惑ってると両サイドからおっぱいに挟まれてそのままおっぱいファームまで拉致されるんだよね…
(異常にいい笑顔で見送る二人の同期一同)

ﾑﾆｭ ﾑﾆｭ

毎晩3P求められる薔薇親父のトレーナーの明日はどっちだ

>毎晩3P求められる薔薇親父のトレーナーの明日はどっちだ
精魂枯れ果てて眠りにつくトレーナーをおっぱいとyogiboの寝具が優しく包み込む…

>>毎晩3P求められる薔薇親父のトレーナーの明日はどっちだ
>精魂枯れ果てて眠りにつくトレーナーをおっぱいとyogiboの寝具が優しく包み込む…
どっちがyogiboなんだかわからないなガハハ

聖剣先輩のトレーナーは専属なのかチームトレーナーなのか

殿下はやるかやらないかで言ったらやるな
絶対にやる

「とれーにゃぁ……ぎむれっとにぃ……かったぁ……えへへぇ……」と酔い潰れながら旦那におんぶされて帰るクリスエス
デュランダルに当てられて火がついたのでその晩旦那を抱き潰すアリュール

クリスエスはどんな感じなのか気になる

>デュランダルに当てられて火がついたのでその晩旦那を抱き潰すアリュール
そして生まれたのがファルコン
君なんだ

>>デュランダルに当てられて火がついたのでその晩旦那を抱き潰そうとして返り討ちに合うクリスエス
>そして生まれたのがエピファネイア
>君なんだ

そんなの聞きたくなかったな☆
🦐…プイさんとこ行ってきていい？

（シンボリクリスエスの体験談から何かヒントを得たプイプイ）