PyCon JP 2017カンファレンスレポート

2日目 Masaaki Horikoshi氏基調講演「pandas開発でのOSS活動」,Pythonによるサーバレス開発,PythonでIoT,そしてLT~クロージングへ

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2日目注目セッション「SREエンジニアがJupyter+BigQueryでデータ分析基盤をDev&Opsする話」―yuzutas0

(山口祐子)

株式会社リクルートテクノロジーズでグループのIT施策全般を担当されているyuzutas0氏の講演を紹介します。プロダクト開発におけるデータ活用の一事例として,組織が抱えていた問題,そしてそれを解決するための取り組みをお話くださいました。

yuzutas0氏

yuzutas0氏

yuzutas0氏が担当されている「ゼクシィ縁結び」「ゼクシィ恋結び」では事業が拡大しており,各部署にステークホルダーが多く存在していました。yuzutas0氏のチームではステークホルダーへ多種多様なデータを提供しており,それらのデータを活用するためにはデータ自動化・可視化が不可欠と感じていました。というのは,各部署によって必要なデータ,データ形式,データ疎通環境が異なるという混沌とした状況になっており,それに伴い調査コストなどのエンジニアチームの負荷が増加していたからです。

そういった事情からデータ基盤システムを作ることになりましたが,設計にあたって2つのことを意識したそうです。

1つめは「ModelとViewを分ける」こと。部署や職種によって必要とされるViewは異なります。Excel, Tableau, Re:dash, Jupyterなど,多様なViewに対応できるようにしています。

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2つめは「なるべくラクしてつくる」こと。世の中には便利なツールが多くあり,全て自分たちで作る必要はありません。アプリ層においては「Python」を採用しました。汎用的なプログラム処理を書くことができたり,データ分析関連のライブラリやツールが充実していたことがその理由です。また,インフラ(データ保存)に関してはBigQueryを採用しました。安い,早い,安心の三拍子揃ったシステムということで,インフラはGoogleに任せる判断をしたそうです。

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そのほかにもデータフローを回す上での工夫や,開発プロセスをトライアンドエラーで整備していったお話など,参考になる知見がたくさんありました。

そして最後に,データ文化を組織に定着させることの重要性を主張しました。今までは,各ステークホルダーが協力することができず,データ活用が十分にできない状況にありました(たとえばビジネス側では各種データをExcelで扱っていたため,エンジニアからは手を出しづらかった,など⁠⁠。その状況を「テクノロジー」「文化・プロセス」で解決しようとしたのが,今回ご紹介してきた取り組みです。

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現状ではまだ理想状態にはないということで,今後も試行錯誤して「データ活用がされる組織」を目指したいということでした。

ちなみに詳細は後述しますが,このyuzutas0氏の講演は,PyCon JP 2017の「ベストトークアワード」の優秀賞に見事輝きました!組織におけるデータ活用やその運用方法について,やはりみなさん興味を持たれているのだなと実感する投票結果となりました。

2日目注目イベント ポスターセッション

(陶山嶺)

PyCon JPでは毎年ポスターセッションを行っています。ポスターセッションは,カンファレンス当日にポスターを掲示し,そこを訪れた参加者と発表者が直接コミュニケーションをとれる場です。通常のトークセッションと同様にプロポーザルの応募・レビュー・選考の流れで発表者が決まります。

今年のポスターセッションでは,全11のプロポーザルが採択され,当日の会場は非常に盛り上がっていました。ここでは,その中から2つのポスターセッションを紹介します。

賑わうポスターセッション会場

賑わうポスターセッション会場

1つめは,Natsuko氏, PyLadies Tokyo, Kanan氏による「PyLadiesTokyoによるPyCon APAC イベントレポート★」です。

このセッションは,Natsuko氏,Kanan氏の所属するPyLadies Tokyoメンバーによる8月にマレーシアで開催されたPyCon APACのイベントレポートでした。現地で撮影した写真をふんだんに使った手作り感のあるポスターは,カンファレンスの様子だけでなく,日本から参加したメンバーでの前夜祭やカンファレンスディナーの様子なども紹介しており,発表メンバーの方々の明るいトークもあいまって和やかな雰囲気で終始盛り上がっていました。

PyLadiesTokyoによるPyCon APAC イベントレポート★の様子

PyLadiesTokyoによるPyCon APAC イベントレポート★の様子

2つめは,Ryuji Tsutsui氏による「Python Boot Campで全国にPythonの環を広げよう!」です。

Python Boot Campとは一般社団法人PyCon JPによるPython初心者向けの地域開催型のイベントで,Ryuji Tsutsui氏はそのコアスタッフを務めています。こちらのセッションは,日本地図上にこれまでのPython Boot Camp開催地をマッピングしたポスターになっており,Python Boot Campがいろんな地域で開催されていることが一目でわかるものになっていました。

また,当日の参加者に「Python Boot Campを開催して欲しい地域」⁠自分が現地スタッフになって開催したい地域」に付箋を貼ってもらうという企画があり,このポスターセッションをきっかけに次のPython Boot Camp候補地がいくつか決まったようでした。

Python Boot Campで全国にPythonの環を広げよう!の様子

Python Boot Campで全国にPythonの環を広げよう!の様子

著者プロフィール

小林正彦(こばやしまさひこ)

メディアスポンサー対応、PyCon JP 2017メディア会議企画担当。

PyCon JPにはPyCon JP 2017にスタッフとして初参加。株式会社アークシステム所属。SEサービスに従事。企業システムの開発から運用までITのライフサイクル全般にわたるソリューションを提供している。開発、運用業務効率化のためにPythonを使用している。

Twitter: @donadeno


山口祐子(やまぐちゆうこ)

PyCon JP 2017広報・メディアスポンサー担当。PyCon JPは2016年から参加。

株式会社リヴァンプにて,コンサルタント兼エンジニアとして従事。現在は主にデータ分析を担当している。前職でエンジニアとして従事していた際にfabric(デプロイツール)を試してみたのをきっかけにPython好きに。趣味はヴァイオリン演奏とマラソン。

Twitter: @yukofeb


陶山嶺(すやまれい)

メディアスポンサー対応、PyCon JP 公式ガイドアプリのAndroid版の開発を担当。PyCon JPにはPyCon JP 2015で初めて一般参加。Python自体に貢献しようとPyCon JP 2016からはスタッフとして参加している。

渋谷のカラフル・ボード(株)に勤務し、8月から広島の尾道でリモートワークを実践中。前職ではiOS/Androidアプリ開発、現職ではPythonとGCPでのサーバーサイド開発をメインとしている。学生時代から一番好きな言語はずっとPython。

Twitter: @rhoboro

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