インターネット上や現役のエンジニアから、組み込みエンジニアはやめとけ、という声を聞いたことがある方は多いと思います。数あるエンジニア職種の中でも難易度が高い業務内容であることは確かに事実です。しかし、だからといって本当に避けるべきなのでしょうか。
本記事では、組み込みエンジニアの仕事内容、市場価値、年収にフォーカスし、なぜやめとけと言われるのかという理由とそれでもおすすめできる理由を解説していきます。
まず結論から言うと、組み込みエンジニアには将来性があり、エンジニア本人の適性が合えば、非常におすすめできる職種であると言えます。その理由について詳しくは後述しますが、市場価値が非常に高まってきていることが挙げられます。
IoT、DXが活況な現在のエンジニア市場では、エッジデバイスをはじめとした組み込みハードウェアの需要が急激に増えており、当然それを使いこなせるエンジニアの需要も増えています。
業務の難易度が高い組み込みエンジニアは成り手があまり多くないため、企業間の人材獲得競争は加速し、それは結果的にエンジニアの高待遇化につながるでしょう。こうした理由が将来性があり、おすすめできる主な理由です。引き続き記事では詳しい仕事内容や適性の判断などを説明していきます。
組み込みエンジニアの仕事内容はどのようなものでしょうか。一般的なソフトウェアエンジニアと同じくシステム開発やプログラミングを行っていきますが、その開発対象は家電製品やIoTデバイス、制御機器などハードウェアが主体となります。ハードウェアに組み込まれたソフトウェアであるので、開発対象は組み込みソフトと呼ばれています。
組み込みソフトの役割は例えばIoTデバイスであれば、センサからのデータを取得し、処理をするような機能を提供することであり、家電製品であればモータを制御するような機能を提供することもあります。このように組み込みエンジニアはハードウェアと密接に結びついたソフトウェアを設計することが主な仕事となっています。
なぜ組み込みエンジニアはやめとけ、という声が聞かれるのでしょうか。その理由を以下にまとめていきます。
組み込みエンジニアが敬遠される理由の1つに、高度なソフトウェア技術が求められ、一人前になるまでのハードルが高いことが挙げられます。主な業務内容となる組み込み設計には、たいていC言語やC++などの低級言語が使用されます。これらの言語は数あるプログラミング言語の中でもトップクラスに難しいものであり、習得するまでには比較的長い時間がかかるでしょう。
こうした低級言語が使用される背景として、組み込みエンジニアには高速動作とメモリの低容量化が求められているということが挙げられます。組み込みソフトは基本的にセンサやモータなどのハードウェアと通信したり、駆動したりする役割を担っているため、リアルタイムと連動した動作が求められます。そのため、機械語に近いC言語などを使用し、無駄のない処理を行わなければなりません。
また、組み込みソフトが書き込まれるエッジデバイスなどは小型かつ低コストが求められるため、必然的に使用できるメモリ容量も限られてきます。したがって、可能な限り処理を圧縮し、短いコードを設計したり、使用する一時メモリも最小限にしなければなりません。こうした背景からも単に低級言語をマスターする以上のスキルが求められていることがわかります。
組み込みエンジニアが設計する組み込みソフトは、電気回路やそこに接続する各種デバイスと直接やりとりを行うためハードウェアの知識も求められます。
具体的には、エッジデバイスに使われるセンサやCPUなどの電気部品のデータシートを読んだ上で、正しい手順でレジスタ操作を行ったり、通信データの生成を行わなければなりません。こうしたデータシートは英語でしか書かれていないこともあり、内容を理解すること自体も難しくなっています。
また、場合によってはソフトの動作確認を行うために電気波形を測定するオシロスコープを使用することもあります。このようにソフトだけでなく電気的なハード知識も求められることが、組み込みエンジニアへのハードルを上げています。
バグを解決するための難易度も組み込みエンジニアが避けられる理由の1つです。前述のように単純なソフトウェアのバグだけでなく、ハードウェアを正しく使いこなせていないためのバグや、使用するCPUの制約によるバグなど、組み込みソフトには様々なバグが潜んでいます。中には、数十回に一回しか発生しない再現度の低いバグに対処しなければならない時もあり、解決に非常に苦労することもあります。
上述のように高度な知識が求められ、解析の難しいバグにも対応しなければならないことから、組み込みエンジニアの労働時間は長くなりがちです。もちろん、全てが長時間労働になりがちというわけではありません。しかし、他のソフトウェアエンジニアと比べてハードウェアが大きく関わってくる点が異なりますから、学習時間や設計検討に要する時間もその分多くなると考えられます。
上記を読んだ方の中には、たしかに組み込みエンジニアになるのはやめるべき、と考えた方もいるかもしれません。しかし、この職種にはデメリットを上回る素晴らしいメリットがいくつもあります。ここではそのメリットを紹介していきます。
記事冒頭に書いたようにIoTやDXの需要が高まっている今、組み込みエンジニアの需要も高まっています。これは、組み込みエンジニアとしてのスキルがあれば、有利な条件で転職を行えることを意味しています。
マイナビエージェントの求人情報によれば、組み込み系エンジニアの求人は全体で1351件あります。他のエンジニア業種でシステムエンジニアが261件、WEB系のプログラマが658件であることを考えるとかなりの求人数です。
プログラミングなどのソフトウェア技術と電気回路やデバイスなどのハードウェア知識を兼ね備えたエンジニアは多くはいないと思われますので、この求人が豊富な状態はまだまだ続くと考えられます。むしろ、今後の時代変化を考えれば、求人はさらに増加するとも考えられます。
【参考】:マイナビIT エージェント
前述の通り、高い市場価値から、組み込みエンジニアはホワイトな大手企業に就職できる可能性が高いことも理由の1つです。前述したマイナビエージェント上の求人検索結果において、上場企業に絞って抽出すると半分近い581件が残ります。多数の求人のうちその半数近くが上場企業となっており、システムエンジニアが261件中38件のみであることを考えると、大手企業に就職できるチャンスはかなり高いと言えます。
市場価値が高く、大手企業に就職できる可能性が高いため、高年収も期待できることがおすすめできる理由にもなっています。組み込み設計のような難易度の高い業務を行える高スキル人材は求人が多い状況からして多くはなく、企業側からして非常に希少な存在と言えるでしょう。そうした人材には通常、高い給与が支払われることになります。
実際、マイナビエージェント上の求人では1351件のうち500万以上を保証している求人は446件もあります。上限の年収が1000万以上となっている求人も339件あり、高年収をねらえるチャンスは多々あると言えます。
【参考】:マイナビIT エージェント
高待遇が期待でき、おすすめできる組み込みエンジニアですが、未経験であってもチャレンジすることはできるのでしょうか。ここでは、組み込みエンジニアの向き不向きについて説明していきます。
組み込みエンジニアに向いている人は以下のような方です。
モノづくりに興味がある
組み込みエンジニアが担当する製品は家電やIoTなど身近なものが多く、誰もがイメージしやすくなっています。ですからモノづくりをしたい、と思っているエンジニアにとっては大きなモチベーションになるでしょう。
ソフトもハードも経験したい
組み込みソフトは前述のようにソフトウェア技術だけでなくハードウェアの知識もなければ設計することはできません。ソフトウェアエンジニアの中でもハードウェアも同時に扱う職種はあまりないため、組み込みエンジニアは両方のスキルを身に付けるチャンスであると言えます。
高年収を狙いたい
組み込みエンジニアとしてキャリアを続けるためには高いスキルが求められます。しかし一方で、前述したように非常に市場価値が高い存在になりますので、高い年収を狙うチャンスも得られると言えます。
逆に向いていない人は下記のような方です。
特定分野を極めたい
組み込みエンジニアに求められる分野はソフトからハードまで様々です。ソフトの特定分野を極めたいと思っている方にとってはあまり合わない職種と言えるでしょう。
残業しない働き方を目指したい
突発的な不具合対応や継続的な学習は組み込みエンジニアにとっては必須です。そのため、労働時間が長くなりがちであり、プライベートを重視し、あまり残業をしたくない方にとっては合わない職種と言えます。
ハードウェアに興味がない
組み込みソフトはハードの知識も求められるため、否が応でもハードウェアを扱ったり、その仕様を学習していく必要があります。したがって、プログラミングなどソフト分野の業務を好み、ハードウェアに興味がないエンジニアにとっては続けていくことが難しいと言えます。
このように組み込みエンジニアは将来性があり、未経験からでも目指すことで高年収を狙うことも可能です。特に向いている人にとってはエンジニアとしても大きく成長することができるでしょう。
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